第58話 想起
「アルベルタ、お前はなぜそんなに覚えが悪いんだ?
何度言えば分かる!」
男が怒声を響かせ、バンッと机を叩いた。
「ごめんなさい……」
大きな音に怯えながら、アルは下を向くしかない。
「あなた、まだアルベルタは6歳なんですから……」
「お前は黙っていろ!」
側に立つ女の言葉に、男の怒りはさらにヒートアップする。
そして続ける。
「上の兄はこの歳には十全に魔法を使える準備ができていたぞ!
それがなんだ、このザマは!
家庭教師にも高い金を払って雇っているんだ。
払った金の分くらいはしっかり成果を出せないのか!?」
アルは何も言うことはできない。
なぜなら、実際に魔法技能に関して遅々として成長が見られていないからだ。
女も、これ以上は無駄だと言葉を発しなくなった。
「今日はもういい!
家庭教師が帰った後も、寝てる暇があったらその間も鍛錬をしていろ!」
もうこれ以上何も言われないと判断した侍女に連れられて、アルは当主の部屋を後にした。
「お嬢様、私はずっと頑張っている姿を見ていますから──」
「もういい!」
「お嬢様!」
アルは侍女を振り切っては走り出した。
散々言われすぎて鬱憤が溜まっていたアルには、優しげな言葉も何の意味も無さなかった。
それも無理からぬことだったかもしれない。
6歳の少女に、親たちの期待──もとい責務を背負わせるのは荷が勝ちすぎていた。
特段、こういったことはアルの家庭に限った話ではない。
貴族と言えど、ふんぞりかえっているだけで何の成果も出さずにいれば容易に爵位の降格、最悪剥奪もありうる。
しかし、兵役の免除から始まり様々な面から、貴族位でいられることの恩恵はとてつもなく大きい。
だからこそ、貴族は優秀な人材を輩出して爵位の維持に励む。
特に男爵家は平民と紙一重の立場。
躍起になって子供を育てることは下級貴族にはよくあることだった。
「う、うぐ……」
アルは今日もいつもの場所にやってきて涙を流す。
こんな行為が日々のルーチンになっている。
ここはちょうど庭木の陰になっており、誰の目にもつくことはない。
しばらくしたら侍女たちが探しに出てくるだろうから、それまではここで時間を潰そう。
そう考えていると、何者かが近づく気配がした。
「だれだろ……?
にわしのおじさんかな?」
ガサガサと音を立てながらこちらに近づいてくる。
「おや?」
顔を覗かせたのは、見たこともない壮年の男性。
「だ、だれ……?」
知らない顔に、アルは警戒を露わにする。
「おっと失礼、お嬢さん。
ワタシはドクトル=マギアという者でね。
当主様に会いにきたんですが、あいにく取り込み中ということで、庭を歩かせてもらっていたんですよ。
そんな折貴方の姿が見えたので、気になって近づいた次第でありますよ」
男性は柔和な笑顔を浮かべている。
その笑顔に、アルは警戒心が少しだけ薄れた。
「目が腫れていますよ。
泣いていたのですか?」
男性は心配そうな顔でアルを覗き込む。
そしてそっと白いハンカチを差し出した。
「貴方のような女性にはあまり泣き顔など似合いませんよ。
さ、こちらを使ってください」
自然とアルはそれを手に取り、目元を拭った。
「あ、ありがとう……。
でも、汚しちゃったから洗って返します」
「いえいえ、良いのですよ。
そのまま貰っておいて下さい。
ところで、なぜこんなところで泣いていたのかを聞いても?」
蹲み込んで同じ目線で語りかけてくる。
「え、えっと──」
完全に男性に心を許したアルは、自分の置かれている状況を話し始めた。
男性はアルの言葉を邪魔しないように適度なタイミングで相槌を打ちつつ話を聞いている。
「──だから、もういやになっちゃって……」
「な、るほど。なるほど」
そしてアルが身の上を話し終えると、男性は口を開いた。
男性は顎に手を当てながら、何かを考えるように斜め上に視線を向けている。
それを見て、アルは男性の言葉を待つ。
「では、貴方はどうなりたいのですか?
魔法がうまく使えるようになりたいのですか?」
思わぬ質問に、アルは言葉に詰まる。
嫌なことばかりでそこから逃れる方法ばかり探していたが、自分がどうなりたいのかなど考えたこともなかった。
「え、えっと──」
「こちらにいらしたのですか!?」
アルが答えを口に出そうとした時、侍女が焦った様子でこちらに向けて駆けているのが見えた。
「おっと、迎えが来たようですね」
息を切らせて侍女が立ち止まる。
「マギア様、お待たせいたしました。
当主の準備が整いましたので、これよりご案内いたします。
……お嬢様も、またこちらにおられたのですか」
「うん……」
発言のタイミングを失い、アルは下を向いて黙り込む。
「お嬢様、お早く自室へお戻りください。
みな心配しておりますゆえ。
ではマギア様、参りましょうか」
陰鬱とした生活の中で久々に気の許せそうな人物が現れたのに、まともな返答もできぬまま別れてしまうのはアルには少し寂しく感じた。
アルは歩いて離れていく二人の背中を見つめる。
すると男性は背を向けたまま徐に立ち止まった。
「用件が済みましたら、答えを聞かせてくださいね」
それだけ言うと男性は再び歩き始めた。
「……うん!」
その背に向けて、アルは元気の回復した声で返事を投げるのだった。
「──では、そのように」
「ああ、よろしく頼んだ」
グランドノット家応接室で、当主とマギアのやりとりがなされている。
「そういえば……先ほどご息女を拝見しましたが、魔法の扱いにお困りのご様子」
ふと思い出したようにマギアが言葉を吐いた。
「なるほど、娘を見たのか。
そういえば貴殿は元々魔導学園で魔法研究に従事していたのであったな。
……恥ずかしい限りだが、実はそうなのだ。
上の兄は魔法の天才と言われるまでになり、魔導学園でも将来を嘱望されていてな。
息子がこのままいけば、グランドノット家は再興できる。
しかし娘の方は如何ともし難くてな。
グランドノット家が男爵位までも危ぶまれるまでになっている現状、落ちこぼれがいてもらっては困るのだ。
貴殿にも分かるだろう?」
「ええ、そのお気持ちは理解できます。
貴族位の方々は、少なからずそう言った感情をお持ちになって子供を魔導学園に送り出していると聞き及んでおります。
盤石な構えを取っておきたい、そういうことですね」
「その通り。
そこで、だ。
貴殿の仕入れてくる情報には大変助かっている。
それに加えて娘の魔法を見てやってはくれないか?
現状の家庭教師では不十分なようだ。
実績もあり信頼できる貴殿にそこを任せたいのだが、どうだろうか」
魔法技能が伸びないのは、まずは子供が成長しやすい環境を整えられていないからだろうに。
結局この男は子供を家名維持のための道具としか思っていない。
どこまでも愚かな人間だ。
マギアはそんなことを考えるが、それを表情に出すことはない。
「しかしワタシも様々な場所を渡り歩く身」
「そこをなんとか頼む。
結果を出してさえくれれば、金に糸目はつけん」
さらに愚かさを上塗りする目の前の男に、マギアは感心さえ覚える。
「そうですね……。
長期的にこちらに滞在することは難しいのですが、短期で行えるものであればいくつかあります。
また訪問させていただいた時に準備して参りましょう」
「そうか!
それはありがたい。
では今回はこの辺りだと思うが、どうだろうか」
「そうですね。
また次回ということで」
「ああ、今回も有意義な話し合いあった。
またよろしく頼む。
ではご客人を外まで案内しなさい」
「畏まりました」
男の言葉を受け、侍女がマギアのそばに立ち止まる。
「それではグランドノット卿、失礼します」
マギアは侍女に連れられて、応接室を後にした。
「あの娘も大成すれば、我がグランドノット家は安泰だ。
マギア殿には悪いが、再興のための足がかりとなってもらおう」
男はいやらしい笑みを浮かべ、そう呟いた。
マギアが応接室を出て退館のため歩みを進めると、角を曲がったところでアルが待機していた。
「あの……」
「おや、待っていてくれたのですか」
「うん……」
気恥ずかしさでアルは下を向く。
「先ほどの問いに関して答えを用意できましたか?」
またも蹲み込んで同じ目線で話してくれる男性に、アルは用意していた言葉を投げる。
「え、えっと、あたしはバカにされないようになりたいです。
せめておとうさんをみかえせるくらいには」
「ほう。
それはなかなか」
マギアは内心ほくそ笑む。
「では、また次回来た来た時にワタシが魔法を教えて差し上げましょう。
卿の願いでもありますし、次の機会まで出来る限り魔法を学んでおいてください」
「わ、わかりました!」
今日1番の声量でアルは返す。
「それではお嬢さん、またの機会に。
それと、ワタシのことはドクとお呼びください」
「はい、ドクさん。
いやドクせんせい!」
「はは、ではでは」
笑みを浮かべ、侍女と共にマギアは去っていった。
その背中を、先ほどとは違う感情を浮かべながら見送る。
「よし、がんばろう」
グッと握り拳を作り、アルは努力を誓う。
見送られ、マギアはグランドノット家を後にする。
しばらく歩き、人目のなくなったところで路地裏に入る。
「まぁ、親に愛を注がれてない子供はああ言った言葉をかけるだけで成長するものですが、せっかくの機会ですし少し実験させてもらいましょう。
息子の方も才に溢れているようですし、いい素材となるでしょう。
魔導学園だと実験材料には困らなかったのですがねぇ。
生憎あそこには居られなくなってしまったので、今度はあの娘に被験者となってもらいましょうか」
先ほどまで見せていた優しい壮年男性の顔はすでになくなり、クククと残虐な顔で声を漏らす。
そんなマギアの後ろへ、近づく影が一つ。
「ずいぶん待っちまったぜ、ドクさんよぉ。
今はマギアで良いんだっけか?」
柄の悪いチンピラのような出立の男がマギアに声をかける。
マギアはそちらに目を向けず、声だけを後方に投げながらそのまま歩き続ける。
一定の距離を保ちながら、チンピラはドクに追随する。
「いやいや、ドクで良いですよ。
ちょうど良い実験材料が見つかったので、次はこちらで。
アナタにもしっかり働いてもらいますからね」
そう言って振り返る。
「はっ、ようやくかよ。
俺は暴れられれば何でも良いんだけどよ。
魔導学園だっけ?
あそこくらい楽しめる場所だと俺はありがてぇな」
「今回も色々と新しいことをやってみますので」
「おう、楽しみにしとくぜ。
ところで、よくもまぁ人間みてぇな名前をポンポンと思いつくモンだ。
俺なんて自分の名前決めるのに結構掛かっちまったモンだぜ。
ディスクリート。
慎重な俺に合ってて良い名だろ?
俺はこの名前が気に入ってるから、なるべくバレるようなことにはなりたくねぇな。
アンタのドクってところは変えねぇみたいだがな。
気に入ってンのか?
全部変えねぇと、またバレちまうンじゃねぇの?」
「まぁバレたらバレたで、その時考えれば良いんですよ。
指名手配されたところで、顔なんていくらでも変えられるわけですから。
魔導学園では魔人とまでは知られてないので大丈夫でしょう」
「アンタがそれでいいンなら何でも良いさ。
おっと、そうだ。
俺はアンタに指示を貰いに来たンだったぜ。
何をすりゃあいい?」
「ワタシはしばらくこの国を離れますので、そうですね……マナ容量の大きそうな子供をいつもの場所に拉致監禁しておいて貰えますか?」
「そンだけか?
拍子抜けする仕事だな」
「実験の素体は多ければ多いほど良いので。
しかし何度も言いますが貴族の領地には近づかぬよう。
ワタシは問題ありませんが、アナタだと結界を通過できないことが多いので」
ドクはディスクリートを見据える。
「わ、わかってるよ。
もうあんなヘマはしねぇ。
今の俺は自分の力量を見誤ったりはしねぇよ。
とりあえず、その辺の子供を規則性なく拉致っていたらいいンだな?」
ドクの視線に射抜かれディスクリートは恐怖を感じつつも、ドクに質問を投げる。
「そうですね。
できれば魔法技能に優れた貴族の子供が良いのですが、人間というものは信頼だのしきたりだの気にしすぎているせいで、近づくだけでも面倒なのですよ。
グランドノット家のような落ちこぼれ貴族は如何様にもできるのですが、何事も慎重にいかねばなりません。
はぁ、魔導学園は大変楽しい実験場だったのですがねぇ……。
非常に悔やまれます」
「悪かったよ。
俺が引き金を引いてないとはいえ、ヤツを止められなかったのは確かだからな。
だから今はちゃんとアンタにお伺いを立ててるだろ?」
「いえいえ、過ぎたこと。
もう怒っては居ませんよ」
「それならいいンだ。
俺はヤツみたいに未来永劫苦しめられ続けるのは勘弁だからな」
「失敗から学んでいればそれで良いのです。
あとはそうですね、南の辺境に面白い風習のある村があったのでそちらを調べておいてください。
都市の外であれば、偏りの出ないように人間を殺しても構いませんよ。
ただ子供は成長という可能性があるので、大人に限定してください」
「お、それはテンション上がるなぁ。
ひとまず今回の指示は了解だ。
じゃあ俺は行ってくるぜ」
「ええ、よろしくお願いします」
ディスクリートは闇の中に消えていった。
「名前ね。
案外鋭いところに目がいく男です。
人間っぽいとはよく言ったもの。
どれだけ時間が経とうと、忘れてはいけないこと。
そのためにこの名前を使い続けているのだから。
さて、しばらくはあの家に取り入って行きましょうか」
そう呟くと、ディスクリート同様、ドクも闇に溶け込んでいくのであった。
数週間して、ドクは再びグランドノット家を訪れた。
そして当主との定期的な会合を終える。
いつもならこのまま帰るところではあるが、今日からはアルの魔法技能を見ることになっている。
その足でドクはアルの自室へ向かう。
案内された部屋は、離れといっても差し支えのない程度の距離を歩かされた先にあった。
なるほど、こんなところから虐待のような兆候があるのか。
そう思うが、もちろんそんな感情はおくびにも出さない。
ドクを案内する侍女も、申し訳なさそうな様子でドクの前方を歩いていた。
使用人の方はこの状況を理解しているといった様子かと、人間の機微を確認しながらドクは事細かに観察していく。
扉の前にたどり着くと、自動的に扉が開く。
そこから顔を出したのは6歳の少女だ。
「せんせい、こんにちは!」
アルの顔は歓喜に彩られている。
「こんにちは。
今日は貴方の魔法を見に来させていただきましたよ」
「おねがいします!
あ、はいってください」
アルはドクを室内に案内する。
室内はかなり質素なものだ。
ここまできたらそこまで驚くこともない。
上着や手荷物を侍女に預け、ドクはアルに向き合う。
「早速ですが、確認させてもらいましょうか。
今はどのような感じで魔法を勉強しているのですか?」
「あ、ちょっとまってください。
えっと、これです」
そう言って差し出されたのは、一冊の初期魔法を扱った教科書。
イラストを使ってイメージしやすさを重視した内容となっており、各属性ごとに様々なものが出版されていて、その中でも魔法を学ぶ導入としては一般的なものといえる。
「これですか」
ドクは本をパラパラとめくりながら話す。
「これを読んで、実際に魔法を試してはいるのですか?」
「はい。
でもマナがうまくだせないです」
はて、今までの家庭教師はその辺りを改善できなかったのだろうか。
「うまく出せない?
ここではアレなので、一度外に出て魔法を使ってみましょうか。
どんな状況か確認してみましょう」
「はい」
今度は3人で庭先へ向かう。
ドクがこの家を訪れた時に絶えずついてくるのは、大抵は侍女か執事1名程度だ。
今回も、いつでも御せそうな侍女1人のみ。
これは信頼によるものなのか、はたまた警戒が薄いだけなのか。
どちらにしてもドクにはやりやすい状況だ。
折を見て使用人の意識を奪い、侵入手段を確立する。
その後ゆっくりと結界石の場所を確認すれば良いだろう。
結界石さえ機能停止させられれば、ディスクリートの出入りさえも容易になる。
いかな低級貴族といえど、魔人や魔物に対する策は備えてある。
その際たるものが結界だ。
ドクのように自らを偽ることのできる魔人であれば、結界を通過することは容易だ。
しかしそのためには能力を極限まで落とさなければならず、今何者かに襲われれればひとたまりもない。
たとえ魔人としての能力を解放したとしても、結界によりあらゆる能力が封じられることは分かっている。
なので魔人として侵入することは得策ではない。
結界を無力化するまでは、人間に身を窶してまで行動する必要があるのだ。
以前ランドヴァルド帝国で行動するにあたり、ドクは2重の結界に縛られていた。
1つは帝国を取り囲む大結界。
これは国民、ひいては国全体を守るために設置されたもの。
そして2つ目は魔導学園を取り囲む小結界。
この小結界は魔導学園でさらにアレンジの加えられた結界であり、範囲こそ狭いものの、大結界に比べてより強固なものとなっている。
大結界はメッシュの大きな、小結界はそれよりもさらに小さな網といったところか。
しかし貴族色の強いベリア公国では自分の領地の民が優先であり、他領地の民の優先度は劣る。
そのため国全体を覆う大結界は存在せず、各貴族領を覆う小結界だけが存在していた。
それがドクの公国での行動をより安全にさせる。
今いるグランドノット家は爵位としては最下位であるが、領地も狭いものの、魔導学園と同様に狭い分強固な結界を設置できていた。
それが現在ドクを悩ませているが、一度入り込んでしまえばあとは入念な準備を行い、結界を解除するだけだ。
「では、ワタシに貴方の魔法を見せてください。
ロード、マナ・インスペクター」
雑草がちらほらと生茂ってはいるが魔法を使うには十分な広さが確保された場所にやってきたので、アルの魔法を観察することにする。
「はい。
ロード、ストーンバレット」
アルの掌の上に、石礫が形成される。
が、形成があまりにも遅い。
ドクがアルの中に見たマナ容量は貴族の子供にしてはボチボチといったところ。
そうであれば、もっとマナを込める速度が出るのが普通だ。
魔法の詠唱、つまり魔法陣にマナを込める速度は訓練によるものも大きいが、一般的にはMP量に比例することが知られている。
よりマナ容量の大きい方が、押し出す力も大きいという話だ。
しかしアルにはそれが見られない。
想定していた倍以上の時間をかけて、ようやくアルの魔法が完成した。
「では魔法を解除してください」
アルが魔法を解除すると、石礫は砂粒となって消えていく。
「では、もう一度」
「わかりました。
ロード、ストーンバレット」
言われるがままにアルは魔法を唱える。
しかし起こる事象はさっきの通り。
「なるほど」
ドクは呟く。
マナの動きを看破する魔法で、アルがどういう状態にあるのかをドクは見抜いた。
「せんせいには、なにかわかったんで──って、あ……ごめんなさい……」
驚きのあまり、アルは途中で魔法を解除してしまう。
「いえいえ良いのですよ。
今の2回の試行で貴方の置かれている状況が分かりました」
「ほ、ほんと!?」
アルは驚きに目を見開く。
そばに立つ侍女も動揺を表している。
今まで雇っていた家庭教師は、この程度のことも見抜けなかったのか。
呆れるが、そんなことを言っても仕方がない。
「貴方、特殊な目をもっていますね?」
「え?」




