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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第3章 帝国編
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第45話 責務

「神へと至る? 一体何を言って……」


本当に意味がわからない。


俺以外は俺を見て驚いた表情だ。


あまりの事態に声も出せないとみえる。


「悪いが質問を受けている時間はない。

そこに至った経緯と事実、この世界の現状、そしてやるべきことを伝える」


どうにも急ぎのようだ。


「分かりました。教えてください」


俺に向けられた内容だから、俺が進めることとする。


「まずお主にティールの力が宿った経緯だ。


ティールはあらゆる知識や技術に長けた存在であり、世界の均衡を維持することに関しても役割を担っていた。


先日エーデルグライト王国にて勇者召喚が行われた際、お主がそこに巻き込まれた。


そこまではまだ良かった。


それだけであれば単なるイレギュラーとして、元の世界に戻されるだけで済んだのだ。


しかしそうはならなかった。


世界間移動の際にお主が獲得したギフトがそれを阻んだ。


お主が得たのは《悪食(ビザー・イート)》と呼ばれる規格外の力。


それは捕食した対象の能力を奪い取るというもの。


その対象は、お主らが神と呼ぶ我らも例外ではなかった。


それが今回の悲劇を生んだ。


お主の魔法技能も、ティールの力の一端に過ぎない。


結果的に、世界の狭間に侵入したお主に干渉しようとしてティールは捕食され、その存在を消滅させた。


こればかりはお主の責任ではない。


アースからアルスへの渡航者にギフトを授けるという機構を生み出したのもティールだ。


上位世界のアルスに入り込んだ下位世界アースの人間が、アルスで生き延びるために与えられるのがギフト。


ティールはバランスを保つ上でその機構を生み出したに過ぎない。


次にあまり時間がないという理由。


それはお主のギフトが自動発動的に力を振るうため、会話と言えど長期の接触は我の存在を消滅させることにつながるからだ。


そもそも我らは直接的にお主ら人間に干渉することはできない。


本来我らにできるのは、人の営みを見守り、そして正しい方向へ導くことだけなのだ。


今回はかなりの無茶をして、お主らに話しかけている。


もはや神託の範疇を大幅に超えてしまっているのだ。


そしてここからが最も重要な話だ。


ティールの消滅によって世界を安定させていた歯車が狂ってしまった。


もともと首の皮一枚で繋がっていた状態であったが、遂に世界崩壊を免れない状況となった。


この世界そのものを、もはや維持できなくなくなっているのだ。


その原因を作り出したのは、お主らの祖先──太古の人間たちだ。


ここまでの話、理解はできまい。


だが事実だ。


これ以上は過干渉となるため、我と言えど話すことはできない。


我らも見守り導く存在として、この世界ひいてはお主らが滅ぶことを望むものではない。


最後にお主の役目だ。


お主は世界崩壊を止めるべく行動するのだ。


それとともに神としての力を覚醒させるのだ。


しかし世界崩壊を完全に回避するまでは神として覚醒してはならない。


そうなっては人の世界に干渉できなくなってしまう。


そしてこれを成し遂げるまで決して死んではならない。


お主の死は、そのまま世界崩壊につながる。


ここまで必要な条件を述べたが、容易ではないことは確かだ。


しかしやり遂げるのだ。


それを支援するための人員として、お主以外の面々に我の加護を授ける。


これが我にできる限界だ。


お主が自らを鍛え上げれば悪食(ビザー・イート)のコントロールも可能となろう。


そして試練を乗り越えれば、自ずと我らの元へと辿り着けるだろう。


そして──


……そろそろ時間だ。


我がお主らの前に姿を見せることも当分は困難であろう。


しかし今後も我らはお主らの行動の行く末を見守っている。


人間の内に秘めたる輝きでもって、お主らがその手で未来を掴み取るのだ。


ハジメ=クロカワ、お主が我らの末席に加わるその日を待っ……いる。


お主が…………を救……。


……ル…………探……だ……。


…………」


徐々に存在が希薄になっていく。


そして声が聞こえなくなり、アラマズドを形成していた金色の粒子が弾けた。


その粒子が俺たちに降り注ぐ。


アラマズドの消失と同時に、オリビアは糸の切れた人形のように支えを失い、後ろに倒れこんだ。


「オリビア!」


コルネオが駆け出す。


皆色々と言いたいこともあるだろうが、今はオリビアが先決だ。


俺たちもオリビアの元へ向かう。


それにしても、急な話で頭がまとまらない。


えーっと……?


俺が神にならないといけなくて。


そのためには自分を鍛え上げなくてはならなくて。


神になる前に世界を崩壊から救わなければならない。


そして死んでもならない?


なんだこれ。


無理ゲーじゃん。


夏休み最終日に宿題が一切進んでいない以上の絶望感が重くのしかかる。


なんで俺なんだよ。


なんで俺1人にそんな重責を課すんだ。


神になるって話もパッとしないし、世界崩壊の話も情報が足りなさすぎる。


どういうアプローチで世界を救うんだ?


もともとティールって神様が担っていた役割を、ただの人間の俺に全うできるわけないだろ。


だが、やらなければ勇者連中もろとも世界が終わってしまう。


俺が守りたい彼らを、失うことにも繋がってしまう。


うーん、どうする……。


すぐに出来ることといえば、自分を鍛えることと情報を集めることだろうか。


鍛えることは、学園に通いながらでもどうにかなるだろう。


問題は情報収集。


そういえば、過去の人間の所為で崩壊の引き金が引かれたとか言っていたな。


過去って言われてもいつの話か分からない。


太古の人間という話だし、生きている人はいないだろう。


仙人みたいな人がいれば別だが。


文献もそう古くまでは残っていない。


人伝いに過去の話を集めるとかか?


そんな都合よく集まるもんかねぇ。


「ん……」


コルネオの介抱を受けていたオリビアは、すぐに意識を取り戻した。


「オリビア、身体の調子はどうだい?」


オリビアはかなり気怠げな様子だ。


「いつもより凄くしんどいね。

主神が降りてくるとも思ってなかったから驚いたんだよ。

多分私の負担のことも考えて早く切り上げてくれたんじゃないかな」


ん?


「オリビア、あの状態で話を拾えてたのか?」


「うん。

変な状態に見えたと思うけど、神を降ろす媒体としての役割だから身体を動かして台無しにするわけにもいかないんだよ。

まぁ実際は、動かそうにも動けないんだけどね。

とりあえず、私の目は間違いなかったね。

色々やることがあるけど、少し休ませて。

ここにいる私たちだけで解決できそうな問題でもなさそうだしね。

じゃあ、一旦おやすみ……」


そう言うと、オリビアは目を閉じた。


相当な負担だったっぽいな。


「それでは皆さんオリビアを休ませている間、部屋を用意するのでお待ちいただいてよろしいですか?

急な話で私も混乱しておりますので、少し考える時間が必要かと。

年老いた私たちよりも、若い皆さんの方が柔軟な思考で意見を出してくれるはずですので。

その間に私は会議の出席者へ説明に赴かないといけませんので、終わり次第今後のことを話しましょう」


コルネオが呼び出したシスターたちによってオリビアが運ばれていく。


コルネオが会議に出ている間、オリビアを除いた俺たち5人は個室で待機させられることとなった。






「今日は驚きの連続ですわね。

加護まで授かるなんて思いもよらなかったですわ。

アース云々の話は理解が及びませんでしたが」


ステータスを確認したんだけど、俺には加護は無かったな。


俺に干渉すると主神でさえも危ないのだろう。


そういえば、トラキア連邦を出てからの戦闘でレベルが上がっていた。


そして気になる称号も一つ追加されていた。


ーーーーーーーーーー


《名前》黒川ハジメ

《Lv》15 → 18

《種族》人間

《性別》男

《年齢》20

HP 950/950

MP 3260/3260 → 3270/3270

STR 15

AGI 19 → 20

VIT 15

DEX 26 → 28

INT 36 → 38

LUC 30

《称号》異世界からの侵入者 神力の簒奪者

《魔法》生活魔法 攻撃魔法・全(中級) 防陣

《ギフト》悪食


ーーーーーーーーーー


《名前》ソフィアラ=デラ=ヒースコート。

《Lv》15 → 18

《種族》人間族

《性別》女性

《年齢》15

HP 550/550

MP 440/440 → 450/450

STR 9

AGI 32 → 34

VIT 8

DEX 41 → 43

INT 14 → 15

LUC 5

《称号》主神の加護

《魔法》生活魔法 攻撃魔法・水(中級)


ーーーーーーーーーー


「私にも加護が与えられているわ。

どういう効果があるかは分からないけれど」


「じゃあ皆加護をもらってるっぽいですね。

俺にはなかったので、加護を与えることすら神にとって危ない行為だったのかと。

俺は予想以上に危ない存在なのかも……」


「危ない存在じゃないわ、必要な存在よ。

今度は私がクロを守る立場になったわね」


なんかいいな、こういうの。


「そうですね」


お互いに認め合ってる感じ。


それにしても簒奪者って。


誰が評価して称号つけてるんだよ。


アラマズドか?


侵入者とか簒奪者とか良いイメージ湧かねーよ。


もうちょっといい感じにしてくれよな!


「オレにはわからないことが多すぎたんだが、教えてくれるか?」


「うちも全然分からなかったぜ」


ガルドもアルも知らないのか。


異世界云々の話は、この世界の共通認識ではないっぽいな。


主に勇者召喚に関わっているのは王族とかか。


階級で言えば王族の次の序列のジュリアーナが知らないんだしな。


いや、家督を継いでいないからまだ知らないだけか?


まぁこれは意味のない考察だな。


コルネオ以下教会関係者は知ってるんだろうか。


ひとまず説明するか。


「少し認識を共有しようか。

まず俺はこの世界の出身じゃない。

嘘を言っていて済まないな。

アラマズド神の話にもあった通り、俺はエーデルグライト王国の勇者召喚に巻き込まれただけの一般人だ。

いや、だった、という方が正しいか。

当然、巻き込まれただけだから勇者のような強さは持ち合わせてはいない。

俺の知らない間にティールって神様と接触して、その存在を消してしまったようだな。

アラマズド神は俺に責任はないと言っていたが、俺は責任を感じてしまっている。

偶然とは言え、世界崩壊の後押しをしてしまったわけだからな。

その詳しい内容までは彼らも伝えられなかったみたいだけど。

魔法技能に関しても俺自身疑問だったんだが、これもティール神の力って聞いて、さっき初めて納得がいった感じだ。

あと、これも伝えてなかった。

俺が5属性を使えるって認識があると思うが、実は闇属性も含めた全属性が使えるんだ。

これを伝えると面倒なことになりそうだったから、伝えてなかった。

これからは一蓮托生だから隠し事はない方がいいしな。

俺から言えるのはこんなところだ」


コルネオと俺たち若者の計7人が世界崩壊を止めるメンバーで、勇者7人が魔王を討伐するメンバーか。


情報収集には教会という一大勢力は役に立つかもな。


勇者は国の支援もあるが、個人の力頼りなところもあるし、キツイのはやっぱりあっちか。


結局は俺たちの陣営も魔王討伐が条件に入ってきそうな気もするけど。


「了解した。

村を守ることがいきなり世界まで規模が大きくなってしまったが、オレはクロについて行くぞ」


「あれ、俺が指揮をとる感じ?

コルネオさんに任せるのがいいんじゃない?」


「確かにそうかもしれませんが、わたくしもガルドさん同様、クロさんについて行きますわ。

これからは常に行動を共にするでしょうし。

世界崩壊の原因を調べるなど難しいことは、教会の方々がなんとかしてくれるでしょう。

わたくしたちがすべきは自身の鍛錬ですわね。

神に至るためにクロさんが鍛えるのは当然として、その過程で魔族と戦わないとも限りませんし、わたくしたちも学生という立場をフルに利用して鍛錬に励みませんと。

わたくしたちにできることは、そう多くはありませんわ」


「ジュリアーナの意見で概ね良さそうだな。

あとはコルネオさんたち会議メンバーの意見を聞いてって感じだな」


「うちも賛成だぞ。

学園に入って大した目標もなかったけど、うちも世界崩壊を止めるために頑張るから、これが終わったら結婚してもらうからな!」


おい、フラグ立てんな。


「アルベルタさん、何を言ってますの?

世界の危機ですのよ」


そうだジュリアーナ、言ってやれ!


俺はジュリアーナの味方だぞ。


「別にいいだろー。

それくらい大変なことをするんだ。

少しくらいワガママを言っても大丈夫なはずだぞ!」


「そう言われれば確かに……。

それではわたくしも、クロさんに夫婦の契りを結んでいただきたいと思いますわ」


おい、もっと頑張れよ!


ジュリアーナ株、大暴落なう。


「俺に拒否権はないのかよ!」


「ない!」


アルが声高に言い切った。


はあ……。


「クロさんは身分差を気にしてましたが、王族すら凌ぐ身分になってましてよ。

これで何も問題はありませんわね。

フランシスさんには、ほとほとウンザリしてましたの。

あのいけ好かない顔を見るたびに、わたくしがどれだけ不愉快な思いをしているかクロさんはご存知ないでしょう?

ああ、言いたい!

貴方なんかより高貴な身分の方と婚約していますのって、あの男に言いたいですわ!」


ジュリアーナの黒い部分が全開に漏れ出してる。


貴族にも色々あるんだな。


かわいそうに。


というか、ジュリアーナの中では婚約確定かよ。


この娘たちのやる気を出させるためにも、ここは肯定しておくべきか?


もはや普通の人生じゃないしな。


俺たちはいつ死ぬか分からない道へ踏み込むんだ。


そう考えると、彼女らの願いなんて小さいものかもしれない。


本来なら、俺はもっと大きいものを返してあげなければならないんだよな。


彼女らは別におかしなことを言ってるわけでなく、自らの幸せを望んでいるだけだ。


彼女らだけじゃない、ガルドもオリビアも、そしてソフィアラも俺に命を預けてくれるって言ってるんだ。


「よし分かった、2人の提案を受けるよ」


「「えっ!?」」


アルとジュリアーナがすごい勢いでこちらに振り向いて、驚きを顔に貼り付けている。


「え、って何だよ。

俺が受けると思ってなかったのか?」


「クロ、どうしたんだ?

オレはクロたちのやりとりを楽しんでいたんだが」


「俺を見世物に楽しむんじゃねえ!

ガルドはそんな風に見てたのかよ……。

みんな俺に命を預けてくれるんだ。

アルとジュリアーナの提案は別に嫌じゃない、というより歓迎だ。

俺にできることなら、みんなに返していくよ」


「急に大人になったわね。

神様になったからかしら」


「ちょっとした考えの変化ですよ」


今日はソフィアラが結構からかってくれるな。


「クロ、ソフィとイチャイチャしすぎだぞ!

でも確約してくれたから、嬉しい……」


アルは顔を赤くして俯いている。


「お前が恥ずかしがると、こっちまで恥ずかしくなるだろ」


「えへへ……」


アルがチラッとこっちを見る。


やばいな、なんかめっちゃ可愛く見えてきた。


吊り橋効果ってやつか?


「みんな今日俺について来たせいで巻き込まれたわけだろ。

それなのに協力してくれるなんて、みんな怖くないのか?

今までの普通の生活が一変するんだぞ」


「クロさんはご存知か分かりませんが、戦いに身を置くことなんてこの世界では当たり前のことをでしてよ。

それにわたくしは自分の意思で貴方について行こうと決めたんですわ。

なので気に病むことはありませんわ。

それではクロさん」


なんだ?


「約束、忘れないでくださいね?」


ジュリアーナが自らの耳に髪をかけながら、俺の耳元に顔を近づけて囁いた。


少し熱を帯びた吐息が俺の耳にかかる。


言うとすぐにジュリアーナの顔が離れ、可愛らしく小さく舌を出している。


これは……なかなか破壊力があるな。


めちゃくちゃドキッとしてしまった。


俺の顔が一気に赤くなる。


顔が熱い。


やめろよな、童貞には刺激が強すぎる。


相手は15歳の少女なんだぜ。


しっかりしろ、俺!


恥ずかしさでジュリアーナから目を背けると、ソフィアラと目が合う。


いつもの無表情で俺を見つめ続けている。


「……」


おい、なんか言ってくれよ!


恥ずかしさでいたたまれない。


バン、という音と共に突如扉が開け放たれる。


「起きたら元気100倍なんだよ!」


オリビアの出現により、俺の恥ずかしさは霧散した。


助かったぜオリビア。


「皆さん、お待たせしました」


同時にコルネオもやって来たので、ここからが話し合いの本番だな。


本格的に、俺たちの陣営の方針を固めていこうか。

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