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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第3章 帝国編
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第44話 降神

「着きましたわ」


ジュリアーナに促されて馬車を降りる。


ここまで結構距離があったな。


帝国は、王国みたいに自分の足だけで歩き回るのはなかなか難しそうだ。


そういえば、学園を出てしまったら俺とガルド以外は全員身分が上なんだよなぁ。


ジュリアーナもオリビアも普通に接してくれてるけど、逆に他のメンツがタメで話してるのを周りが聞いたらどう思うのかね。


彼女らと外に出るとまた面倒ごとを呼び込みそうだな。


「ここだよ」


オリビアが指差した先には、巨大な構造物が見える。


教会って言うから日本にもあるようなこじんまりしたものをイメージしていたが、大きく違った。


これはあれだな、海外にある大聖堂ってやつだな。


こればかりは知識がないが、サグラダ・ファミリアみたいな感じか。


規模が大きすぎるから的確に表現できているか分からないけど。


デカすぎて見上げてるから首がいてーよ。


逆光だから大聖堂の上の方はあまり見えない。


ジュリアーナとオリビアは見慣れていると思うが、俺を含めた他4人はその大きさに驚きを隠せない。


「オリビアの家ってすごいデカいんだなー」


アルがなんか的外れなこと言ってる。


「じゃあいくよ!

みんな付いて来るんだよ」


そう言ってオリビアは動かない。


なんだ?


「みんなついて来るんだよ!」


あ、そういうこと。


「お、おー……」


おい、みんな相手してやれよ。


「クロ以外元気ないよ!

……まあいいや、付いてきて」


ジュリアーナは慣れているのか何も言わないので、そのまま付いていく。


「オリビア様……」


「オリビア様ー!」


さっきから、ちょくちょくオリビアに向けられた通行人の声が聞こえる。


オリビアもその声に向けて手を振って応えている。


アイドルみたいな扱いだな。


「人気者じゃないか」


「そんなことないよ。

みんな珍しがってるだけだよ。

神を降ろせるってだけで、私はみんなに何もしてあげられてないしね」


それだけでも人々に希望を与えられてると思うけどな。


「そんなもんか」


「入るよ」


正面から大きな扉をくぐる。


上を見上げると、天井がめちゃくちゃ高い。


ステンドグラスから差し込む光によって聖堂内が暖かく照らされている。


あとはパイプオルガンとかあったらテンション上がるんだけど。


前室に足を踏み入れると、シスターが近づいて来るのが見えた。


そしてオリビアに向けて言葉を発した。


「オリビア様、いつも申しておりますがお戻りになるのであれば一度ご連絡頂かないと……。

それに正面より入られては信徒も混乱いたします」


早速窘められてる。


いつもこんなことしてるのか。


「急ぎの用事だから仕方ないんだよ。

お父さんを呼んでちょうだい」


「教皇猊下は現在会議の最中でして……」


「そんなことより重要なことだよ」


「そう仰られましても……」


「じゃあこう伝えて。

神に属する者を見つけた、って」


「それは……!」


シスターが目を見開いて驚いている。


「早く行って。

私たちは内陣で待ってるから」


「か、かしこまりました。

急ぎお伝えして参ります!」


早足でシスターが去っていった。


「じゃあ向かうよ」


内陣ってのは場所を指しているんだろうか。


歩き出したオリビアに付いて進む。


「公務を邪魔してまですることなのか?

人違いでした、じゃ済まないぞ」


「大丈夫だよ」


「神に属する者って、なんかかっこいいよな」


「他人事だと思って……。

どっちに転んでも色々大変なんだからな」






「失礼します!

教皇猊下に急ぎお伝えしたいことが!」


シスターが教皇の居る会議室の扉を勢いよく開いた。


教皇の他にも高価そうな法衣を纏った面々が多数存在しており、重要な話し合いが行われていたことが容易に想像される。


「何事です? 騒がしいですよ。

何人たりとも通すなと伝えたはずですが」


尋常ではないシスターの様子に、教皇以下多くの出席者は戸惑いを隠せない。


「大変申し訳ありません。

オリビア様がお戻りになり、教皇猊下への伝言を言付かっておりまして……」


シスターは次の言葉をなかなか発しない。


「どうしたのです?

言いにくいことなのですか?」


「皆様にお伝えして良いものかどうか……」


「構いません。

会議を妨げるほどの重要な内容なのでしょう。

それほどのことなのであれば、私1人ではなく我々全てが関わるべきことだと思いますよ」


誰も異論を唱えないのでシスターが口を開く。


「畏まりました。 ではお伝え致します。

オリビア様より、神に属する者を見つけた、とのことです」


「……」


暫しの沈黙が流れる。


「もしそれが事実であれば大変な事態ですぞ!」


「まさか地上に神の代行者が現れるなど……!」


途端に騒がしくなる室内。


皆思い思いの発言をぶつける。


「皆さま動揺されるのは分かりますが、どうかお鎮まり下さい。

私が今から娘のオリビアと共に確認して参ります。

場合によっては神降ろしの儀式を執り行うこととなるかと思われますので、お時間がかかるかと思いますがお待ちください」


教皇の発言に全員が頷く。


「申し訳ありませんが、私が居ない間にも会議を続けていただければ幸いです。では行って参ります」


シスターを伴に教皇が部屋を後にした。


しかし会議を続けろと言われても、それどころではないのが現状だ。


急なイレギュラーの出現に、会議は蛇行していくこととなった。






「お待たせしました。

大変なのは分かりますが、あまり迷惑をかけるものではありませんよオリビア。

おっと紹介が遅れました。

私はコルネオ=ライトロードと申します

ジュリアーナ嬢はお久しぶりですね。

連れてきてくれたのはご友人かな」


コルネオが俺たちをざっと見渡す。


そして俺に視線が固定される。


この人もオリビアの言う何かが見えてるのか?


「お久しぶりですわ、おじさま。いえ、教皇猊下」


ジュリアーナの今の言い方をみると、結構親密な関係なのかもな。


「ジュリアーナ嬢、またオリビアのこと等も含めて近況を教えてください。

ではオリビア、皆さんを紹介してくれるかな」


コルネオに促されてオリビアによる紹介が始まる。


「左からアルベルタにガルド、そしてソフィアラ」


各自、名前を呼ばれると軽く会釈で返す。


緊張しているのか、アルとガルドは必要以上に恭しい感じになってる。


貴族とか身分とか、俺にはさっぱり分からないんだが。


ソフィアラはいつも通りだ。


お偉いさんとのつきあい方なんて教えてもらってないから分からないぞ。


もし粗相をしてたら、あとでオリビアにも迷惑がかかりそうだな。


誰がどこで見ているかしれないし、注意しないとな。


「最後に、クロだよ」


俺も失礼のない程度に軽く頭を下げる。


コルネオが分かっているのを知ってか、オリビアも俺を最後に持ってきたのかな。


「ありがとうオリビア。

4人ともよろしくお願いします。

早速本題に入るとしましょうか。

オリビア、彼で間違いないね?」


俺を見つめたまま告げる。


「そうだよ。

薄っすらとだけど、神気が漏れてるのが見える。

お父さんはどう?」


「ええ、まず間違いないね。

クロさんと言いましたか、急な話で申し訳ありませんが、すぐに儀式を行いたいと思います。

他の皆さんも構いませんね?」


やっぱりコルネオにも見えてるのね。


「大丈夫」


「オレたちには構わず、行ってくださって問題ないです」


「うちも同意見です」


ジュリアーナは何も言わずに流れを見ている。


「ところで、儀式って何ですか?」


俺も着替えとかさせられるのかな?


「神降ろしの儀式です。

オリビアの身に神を降臨させて対話を行うというもので、これにより信託などがもたらされます。

なかなか成功するものではなく、オリビアの身にかなりの負担がかかるので普段は成功する条件が揃った場合にのみ行うのですが、今回はあなたが居ます。

間違いなく神は我々の前にお姿をお見せしてくれることでしょう。

オリビア、構わないね?」


「問題ないんだよ。

そのために来たんだから」


「では祭壇へ向かいましょう。

皆さんついてきて下さい」


コルネオが歩き出したのでそれに続く。


「あの、うちらも付いて行って大丈夫なんですか?」


アルが珍しく真面目だ。


まともなアルなんて一生のうちに何回見れるかわからないから、しっかり目に焼き付けておこう。


「オリビアの友人ということですし、何よりクロさんの友人なので問題はありません。

ところで、皆さんは神を目にしたことはありますか?」


「うちは教会とは無縁だったのでないです」


「私もないわ」


「オレもないです」


「そうですか。

一度神を目にすれば少し考え方も変わると思いますよ。

ああ、ご心配なく。

これは入信して欲しいがための勧誘ではありません。

神が実際におられるということを認識して欲しいだけですので」


朗らかな表情から、本心で言っているのがわかる。


これで嘘をついてたら、もはやこの世界で誰も信用できなくなる。


話しながら様々な場所を抜け、階段を下って目的の場所にたどり着いた。


そこは祭壇。


祭壇を祭壇たらしめるための祭具などが多数置かれた地下空間だ。


大型の魔法陣も描かれており、この世界にきたときの場所を彷彿とさせる。


異なるのは、ここは神聖な気が溢れているということ。


2人はこの感覚を俺に見出すのか。


ここと比べると、あそこはかなり無理矢理に作った感じが否めないな。


ここは全ての配置などが完璧に整っており、少しでもズラせば一気に壊れてしまいそうな脆さも窺える。


「今オリビアは巫女装束に着替えているので、少し待ちましょう。

クロさんは今まで神に触れる機会があったのですか?」


「無神論者でしたし、話では聞いても見たことはなかったので信じてはいなかったですね。

俺の身体に何が見えるんですか?」


「クロさんの身体からは神気が漏れ出ています。

神に近い場所に居る者や、何かしらの加護を受けた者に見られる残滓のようなものではありません。

神の力が内在していなければ、その溢れ方はしないと思います。

私も先程始めて見たときは目を疑いましたが、常に一定に溢れているところを見るとまず間違いありませんね。

どうしてそのようになっているのかは私も理解できませんが、神に仕える身としては大変羨ましいほどですね。

こういった感情を抱いてしまうとは、私もまだまだ罪深いということですね。

さらなる神への忠誠を捧げなくてはなりません」


「普通の人間だと思ってるんですけどね。

ねえ、お嬢様?」


「そうね。

何があっても、クロは私の知ってるクロのままよ。

だから安心しなさい」


おぉ……。


今までソフィアラに言われた言葉で1番嬉しいかも。


「素晴らしい信頼関係に嫉妬してしまうほどですわ」


「……そりゃどうも」


話を続けていると、ついにオリビアが姿を見せた。


白い装束を身に纏い、神職ということがはっきりとわかる。


神々しささえ感じられる。


これを見てしまうと、オリビアの見る目も変わるな。


「お父さん、いつでも大丈夫」


「ではいつも通りオリビア任せる。

しっかりやるのだよ、いいね?」


「お任せ! じゃあ行ってくるんだよ」


オリビアは俺たちを一瞥し、魔法陣の中心へ歩みを進める。


中心にたどり着くと、ゆっくりと腰を下ろした。


そのまま静かに目を閉じて瞑想を行うオリビア。


静寂が空間を支配し、俺たちはオリビアの行く末を固唾を飲んで眺める。


そしてオリビアがポツリと一言を述べた。


降神(インヴォケイション)


オリビアの身体が金色の光に包まれる。


魔法の起動句がないところをみると、ギフトに似た何かかもしれない。


続いて足元の大型の魔法陣も金色の光を帯び始める。


しばらくすると、魔法陣からオリビアに向けて金色の光が吸収され始めた。


それにより魔法陣の発する光が徐々に薄くなる。


逆に、オリビアの身体を覆う光は強くなっていく。


魔法陣の光が消えると、今度はオリビアの両腕がダランと力を失い、頭を後ろに傾けた。


これは大丈夫な状態なのか?


そしてオリビアが口を開いたかと思うと金色の粒子が口から溢れ、オリビアの頭上に人に似た何かを形成し始めた。


うん、普通にグロ映像だ。


オリビアに神が憑依して話すんじゃないのかよ。


そして全ての粒子が集まり、まさしく俺のイメージするような神が形づくられた。


隣を見るとコルネオが深々と頭を下げているのが見えたので、俺たちもそれに倣う。


「──我は主神アラマズド」


神の声が響き渡り、俺たちに威風を叩きつける。


「おお……!」


コルネオが地面にめり込む勢いでひれ伏している。


こえーよ。


主神ってことは、神様が何柱もいるってことか。


本当に神様かどうかわかんないけどな。


形成した肉体に魔法で喋らせているだけかもしれないし。


中身はどうであれ、アルスではこの存在が神様なのだろう。


昔ラノベで、神様が実は悪魔でした、みたいなのを読んだことあるんだよな。


考えすぎか。


神気とかいうものが溢れているのが見えるっぽいし、もしそうなら教会全体が悪魔に牛耳られてるってことにもなる。


当然俺も。


この考えはまずないと見ていいだろう。


「コルネオよ、そなたらの信仰は我らに十分届いておる。

これからもその心、忘れるでないぞ。

さすれば平穏と安寧は約束される」


「ありがたき幸せでございます。

まさか主神のお姿をこの目に焼き付けられる機会があろうとは……! 感謝いたします……」


「本来であればそう言いたいところであった。

だがそうも言ってられなくなったのが現状である。

我らが一柱の智神ティールが失われてしまい、世界の均衡が崩れ始めたのだ」


「なんと……!」


おいおい、魔王どころか世界の危機ときたか。


この流れはヤバイぞ。


「しかし案ずることはない。

コルネオの娘オリビアが無事に役目を果たした。

こればかりは運に頼るしかなかったが、僥倖である」


「それはつまり……」


「そうだ。彼をこの場に連れてきたことだ。

ハジメ=クロカワ」


「は、はい」


いきなり名前を呼ばれて動揺する。


「ティールは失われてしまったが、その力は今お主の中に眠っておる」


は……?


「様々な不運が重なり合ったが、幸いティールの力は失われないまま、お主に宿ることとなった」


どういうことだ?


「俺が神の力を受け継いでる?

なぜそんなことに……」


「時間が限られている。

時間制限がある理由も含めて、今からお主らに説明する。

結論だけ先に言う」


主神アラマズドの言葉が続く。




「お主は人としての生を終える前に──神へと至れ」




神の名前は神話から引っ張ってきてます。

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