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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第3章 帝国編
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第36話 入国

「きたあああああああああ!」


「クロ、静かにして」


「あっはい……すいません。

ようやく旅が終わると思うとテンションが上がっちゃって」


「確かに、あれが見えてきたらそうですね」


前方には、薄っすらとだが帝国を覆う外壁が見えてきている。


外壁の向こうには高くそびえる建物が立ち並び、それが帝国の巨大さを物語っている。


「王国ではあんな高い建物はなかったな」


すれ違う人や馬車も増えてきた。


「国土は王国の倍以上ありますが、人が増えれば建物も上へ上へ伸びていくのでしょう」


「思っていた以上に大きいわ」


軍人が列をなして行進する姿を見ることもあった。


「この国は軍人が治安維持をしているのか?」


「見た感じそのようですね。

この国は全国民に軍役がありますから。

成人したら数年は軍に所属しなければならないみたいですよ。

学園に入る場合はそちらが優先されるみたいですが。

と言っても、学園を卒業すれば戦いに身を置くのであまり違いはないですね」


「なるほどな。

軍事力随一の大国家は伊達じゃないな」


「軍隊に入るつもりはないんですか?」


「規則に縛られるのは勘弁だな。

自由が一番だ」


「あなたらしいですね。

好きに生きるといいと思いますよ」


「そうさせてもらうさ」


そうこうしているうちに、帝国へ入るための行列に混ざることとなった。






「長い行列ね」


「そうですね。

検問が厳しいんですかね。

王国くらい警備がザルだとありがたいんですが」


王国ってほんとダメダメ。


「俺とお嬢様は大丈夫だと思うが、あんたらの格好はどう考えても検問でアウトな気がするんだけど……。

検問が厳しいなら、なおさらその格好はまずいんじゃないか?」


「偽造パスも念入りに作ってますし大丈夫ですよ。

安心してください」


「正規のパスを入手した方が安全なんじゃ……」


このピエロ、ホント大丈夫なのか?


この自信がどこからくるか分からん。


「お二人を帝国に安全に入れるまでが今回の我々の仕事ですが、ヒースコート卿にお嬢様のことをお願いされているのでこちらを渡しておきます」


ピエロに1枚のスクロールを手渡された。


「これは?」


「何か困ったことがあれば使ってください。

基本的にお嬢様の身を守るのはあなたの仕事です。

ですが、お嬢様が傷つくのを放っておくのも本意ではありませんので」


「ああ、ありがたくもらっておく」


「あとは、闇魔法は教えた通りしっかり鍛錬を続けてください。

ですが、闇魔法はあまり人前では使われない方がいいかと。

我々のように裏の人間がよく使うものですので。

そして全属性を使えるあなたは知っていないと思いますが、闇魔法は先天的に持つ者にはおらず、悪しき心を持つ者に後天的に発現するため、使えば良い印象を抱かせません」


「おい、そんなの始めて聞いたぞ」


元から俺は悪人だったってことか?


でもそういえば、初等学校でも闇魔法は教えてなかったな。


俺の場合最初から使えたけど、何か理由でもあるのか?


図書館で調べたら普通に闇魔法に関する書籍があったから参考にして覚えたんだが。


「我々からすれば影は自在に操ることが可能ですが、我々以外のものはそうではありません。

これを覚えておいてください」


「……? とりあえず覚えておく」


「おっと、そろそろ我々の番のようですよ」


時間が掛かったが、ようやく俺たちが検問を通る番だ。


はあ、不安だ。


警備兵が近づく。


「入国目的と人数、それと荷物を確認する。

全員馬車から降りろ!」


言われた通りに俺たちは馬車から降りた。


「貴様、その格好は何だ! 説明しろ!」


ほらね?


始まったよ。


「ああ、これですか。 それは──」


ピエロの異様な雰囲気に、警備兵達が腰にぶらさげた剣に手を添える。


「──趣味です」


は?


「なんだと……?」


そんな細い命綱でここ通り抜けるつもりだったのか?


ふざけんじゃないよ。


「ただの趣味ですよ。

この国は人の趣味にまで言及するのですか?

あ、そうだ。 これを」


ピエロが偽装パスを見せる。


「おお……そ、そうか……。

後ろの者たちもそうなのか?」


「はい。驚かせてすいませんね」


俺たちもロドリゲスから貰った学園入学に関する書類を手渡す。


「はい、確認しました」


警備の人は俺たちを確認すると、すごいホッとした顔をしている。


「い、一応荷物を確認させてもらうぞ!」


「どうぞ」


そう言うと警備兵たちはピエロを監視している者を残して馬車の荷物を確認し始めた。


警備兵が監視に耳打ちする。


「……そうか。よし、通ってよし!

しかし貴様ら、今後は格好には気を配るのだ!」


おいおい、問題なく通れるのかよ。


ホントすいません、うちの問題児たちが。


俺は心の中で警備兵に謝罪を述べる。


「では、行きましょうか」


俺たちはここまで幾多のイベントを重ねたものの、ようやく帝国への入国を果たした。


ピエロたちは侵入だがな。






「すげええええええええええええ!」


とりあえず叫ぶのは止められない。


「クロ」


はいはい、わかってますよ。


王国や連邦と比べると、はるかに近代化した街並みだ。


道路の広さも人の多さも段違いだ。


その全てに圧倒される。


戦場に近いため人々はもっと切迫した雰囲気だと思いきや、人々の顔にはそれが見られない。


王国に人々が流れてきているって話だったはずだが、そんなこともないのか?


これだけ人がいれば、あれだ。


恋のチャンスはいくらでも転がっていると言ってもいい。


そろそろ『クロの大冒険〜学園ラブコメ編〜』が開始してもおかしくないな。


「ところで、今日はどこに宿を取るとか決まっているのか?」


「ええ、ヒースコート卿が予め手配しておいでですよ。

今その宿へ向かっているところです。

本来3日ほど宿泊予定でしたが明日が入学試験なので、今日の一泊だけになってしまいましたが」


「それは仕方ないだろ。

連邦も見に行けたし、それにモモコたちにも会えたから悪いことばかりではなかったよ」


そのせいで色々あったわけだが。


「そろそろ着きますよ。

残念ですがそろそろお別れです。

なかなかに楽しい旅でしたよ」


「ああ、無事に送り届けてくれて感謝する。

あと魔法や戦闘に関しても助かったよ。

俺だけだったら簡単に死んでたからな」


「まあ過ぎたことです。

終わり良ければってやつですよ」


「私からもありがとう。

私を、クロを守ってくれて」


「いえいえ、仕事を全うしただけですから」


馬車が停まる。


「着きました。

これで本当にお別れです。

我々は地下へ潜りますので、またご縁があれば……」


ピエロたちは去っていった。


ホント色々あったな。


あいつらがいなけりゃ俺はここにはいない。


あいつらの正体がどうであれ、感謝だ。


「ではお嬢様、行きましょうか」


「うん」


宿を見上げる。


でかいなぁ。


見上げる空は、王国で見ていたよりも遥かに狭く感じる。


都会に出てきた田舎者感がすげえや。


高級宿に来るなら、もっと服装に気を配るべきだったな。


戦闘服はどう考えても似合わない。


まあいいか。


高級宿の扉をくぐる。


赤い絨毯を歩きながら受付へ向かう。


周りはスーツやドレスに身を包んだ貴族の者ばかりだ。


当然、好奇の目で見られる。


ピエロのことをとやかく言っていたが、これもこれで恥ずかしいな。


「いらっしゃいませ。

ご予約はされていますか?」


「はい。

ほんとは2日前に到着予定だったんですが遅れてしまって。

ロドリゲス=デラ=ヒースコートという名前で予約してると思うのですが」


「確認いたします。 少しお待ちください」


周りの目もあるし、待ち時間が長く感じる。


「確認できました。

何か身分を証明できるものをご提示ください」


「えっと……」


あれ、身分証明なんて聞いてないぞ。


そういえば、この世界に来て俺を証明するものってないんだよな。


運転免許証とか保険証なんて持ってないぞ。


一応ステータス魔法で名前だけは表示できるが。


「はい、これ」


俺があれこれ迷っていると、ソフィアラが胸元からネックレスを外して受付に提示した。


「確認いたします。

……確かに、ヒースコート伯爵家の紋章で間違いありません。

ヒースコート様、ようこそお越しくださいました。

お部屋の準備は整っておりますので、こちらの鍵をお持ちになってあちらの転移台へお向かいください。

では、ごゆるりとお過ごしください」


ソフィアラそんなの持ってたのかよ。


お姉さんに案内され、転移台と呼ばれるところにやってきた。


扉を開けるとその向こうは個室になっており、鍵穴のある台座だけが存在している。


エレベーターみたいなもんか?


「扉が閉まりましたら、鍵穴に鍵を差し込んで回していただければお部屋に送られます。

では、いってらっしゃいませ」


扉が閉じられる。


送るって何だ。


言われるままに鍵穴に鍵を差し込んで回す。


一瞬、この部屋全体に魔法の発動を感じた。


ん?


これで終わりか?


後ろを見ると、先程入ってきた扉とは様相が変化している。


おー、転移魔法か!


テレポートの魔法があれば習いたいなぁ。


扉にはドアノブ付いており、回して押すことで部屋への扉が開いた。


「おー!」


内装は豪華で、かなり広い。


スイートルームってやつかな。


すぐにでもベッドに飛び込みたい気分だ。


でも、あれ?


「一部屋……?」


俺が呆然としていると、ソフィアラは何もないような様子で俺の横を歩いて通り越す。


「何してるの。早く来たら?」


「え、あ、はい……」


なんでソフィアラは普通にしてられるんだ?


部屋としては、3LDKほどの間取り。


寝室に2つあるベッドは、その間隔が大きく開いてはいるものの、寝るところが同じ部屋であるということは変わらない。


「お嬢様、2部屋確保してるわけじゃないんですね……」


「そうね。

でも護衛って立場なんだから同じ部屋の方が都合がいいでしょ」


あれ、そんな感じなの?


「でも男女が同じ部屋っていうのは……」


まずい。


これはまずい。


理性崩壊の危機が訪れるかもしれん。


ロドリゲスと約束はしてるんだが。


「クロ、手を出すつもりがあるの?」


「いえ、そういうわけでは……」


「ならいいじゃない。

着替えたら学校の場所を見に行きましょ」


「わ、分かりました。

時間もあることですしね。

で、でも、着替えは俺のいないところでお願いしますよ」


「当然じゃない」


ですよね。


俺たちは着替えを終え、2人揃って街へ繰り出した。


まだ夕方ということもあり、人はかなり多い。


出てくるときに受付でこの国の地図をもらったが、広すぎて何が何だかあまり分からない。


ひとまず学園の場所は教えてもらったので、場所を確認するついでに色々見て回ろうという感じだ。


人混みではぐれないように手を繋いで歩く。


言っとくが、これを言い出したのは俺じゃないぞ。


ソフィアラだ。


手をつなぐなんてマナ回路拡張訓練でいつもやってたことだろうが。


無心になるんだ。


ちょっと、いや、かなりかわいい女の子と手を繋いでるだけじゃないか。


落ち着け、俺。


俺の将来のハーレム計画ではこんなこと序の口だ。


こんなことで動揺してどうするよ。


そして、ひたすら煩悩を巡らしているうちに目的の場所へたどり着いた。


でけえ……。


本当に学校か?


通用門を見ただけでも、王国よりも厳重だぞ。


日本の高校をイメージしていたが、規模としては総合大学みたいなもんか。


ここで明日から俺の学園生活が始まるんだ。


「大きいですね」


「そうね。楽しみだわ」


ソフィアラも嬉しそうだ。


「じゃあ、適当にブラブラしながら帰りましょうか」


「うん」


俺たちは屋台で軽いデザートを買い食いしながら宿に戻った。


うん。


ソフィアラがこっちに全く気がないだけで、これって完全にデートだよな?


俺はいつの間にやらリア充の仲間入りだ。


お前ら、俺は先に行くわ。


すまんな。


その後、夕食はバイキング形式だった。


王国とは違う海の幸や、食べたことのない動物の肉などが並ぶ。


食事に大満足した俺たちは、部屋に戻って休むこととなった。


クリアという生活魔法があるので体の汚れはお風呂に入らなくても正直気にならないのだが、お風呂にゆっくりと浸かることこそ疲れを癒す最高の贅沢なので、しっかり時間をかけて温めさせてもらった。


ちなみにソフィアラがお風呂の間は、俺は部屋を閉め切って煩悩を抑えていた。


約束を守るんだ。


頑張れ、俺。


間違っても手なんて出したら、氷漬けにされること間違いなしだからな。


そしてようやくベッドに入ることができた。


ソフィアラには背を向けて布団に潜り込んでいる。


明日が楽しみで、また寝られそうにないな。


聞き耳をたてるが、ソフィアラからも寝息は聞こえない。


ソフィアラも楽しみなのかな?


「クロ」


しばらく眠れない時間を過ごしていると、ソフィアラが声をかけてきた。


「はい、何でしょう」


ソフィアラに背を向けながら答える。


「ここまで一緒にいてくれてありがとう。

明日からもよろしくね」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。

お嬢様も、辛かったらいつでも言ってくださいね」


「どうしたの、クロ。

もう立ち直ったの?」


「いや、そういうわけではないんですが……。

ともかく、お嬢様も無理はしないでください。

微力ですが、可能な限りお手伝いしますので」


「そう。じゃあおやすみ」


「はい、おやすみなさい」


帝国留学編、スタートだぜ。

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