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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第2章 旅路編
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第35話 改考

少し空きました。

「おいおい、串刺しにして顔面まで破壊するこたぁねえだろ?」


ひょろ長の男が、離断された頭から話しかけてくる。


「我は傷一つつけてはおらんのに、小僧は我の全身を無残に破壊しおって」


全身を無残に変形させた男がボロボロの身体で歩み寄る。


「ねぇ? 殺さないって言ったわよね!?

なんで自分の言ったことも守れないの?」


後頭部から内容物を溢れさせた女が脚にしがみつく。


「俺がな、にした、ってんだ?」


「我は家、族がいた、のだぞ」


「私は言わ、れたことをし、て、いただ、けなのに……」


3人が俺の体に纏わり付いてくる。


やめろ。


「痛、い……」


「助け、て……」


「俺の、頭はど、こだ……」


「私のア、タマが、溢れる……」


「やめ、てくれ……」


「もうた、くさ、んだ……」


やめてくれ。


「ねぇ?」


耳元からソフィアラの声がする。


「ワタシモコロスノ?」


そこには眼球を失った黒い眼窩から血を流したソフィアラが。






「うあぁぁぁああああ!」


物凄い勢いで飛び起きた。


「はっ……はっ……はっ……!」


夢、か……。


なんて嫌な夢だ。


「大丈夫?」


今度はちゃんとキレイなソフィアラだ。


両眼はきちんと付いている。


「大丈……いや、あんまり大丈夫じゃないですね。

騒がしくしてすいません……」


「大丈夫ですか? うなされていましたよ」


「すまない。 今どの辺りだ?」


「今はトラキア連邦を出て帝国領に入る少し前です。

丸1日以上眠られていましたね」


「その間、何もなかったのか?」


「ええ、巨大な雪熊が出た程度で。

大半はお嬢様の手柄で倒せましたよ」


「そうか。 流石ですねお嬢様」


「あれから、ちょっとだけ戦い方を学んだわ」


「あれ、から……」


そうだ、俺は人を殺したんだ。


無抵抗の人間の後頭部を。


背後から木っ端微塵に。


「うっ……すまない、停めてくれ」


俺は道の脇の草むらに盛大に吐いた。


胃の内容物なんて入っていないのに、空嘔吐を繰り返した。


「はぁ……はぁ……っ……!」


こんな状態がずっと続くのか?


これはマジでキツイな。


頭がおかしくなりそうだ。


再び馬車は走り出す。






結局食事も一切取らないまま、周りの声にも大して反応もしない廃人のような状態で次の日を迎えた。


朝陽が眩しい。


ほんと、何やってんだろ。


「クロ、無理しないで」


ソフィアラは時折俺に声をかけてくれている。


ほっといてくれてもいいのに。


「果たして俺はどうしたかったんでしょうか。

結局は自分のわがままを押し通しただけなんじゃないでしょうか。

それって相手を殺してまで通すべきものだったんでしょうか。

殺すことに無理やり理由をつけて、これからも自分勝手に人を殺していくんですかね。

でもあの場ではああすることが最善に思えたんですよね。

あのまま逃せば、後々お嬢様にも迷惑が掛かるって考えて。

あ、いや、今のは後付けですね。

あいつらの勇者の扱いに元々憤りを覚えてて、その憤りをどうするかじゃなくて、憤りを生んだ原因を消せば解決するって思っちゃったんですよね。

結局それを繰り返しても解決にはならないのに。

俺が手を下す人間が増えていくだけ。

根本は何も変わらないまま。

でもあのまま逃すって選択肢もなかったんですよね。

あいつ1人をやれば、少なくともあいつのせいで命を落とす人間が減るんじゃないかって考えて。

1を犠牲にして1を助ける。

これってなんだか矛盾してますね。

どうせなら2人とも助けられれば良かったのに。

結局は今後も俺は自分のやりたいことをやるしかないんですよね。

それが人道に反していると分かっていても」


いきなり俺は何を言ってんだろ。


自分でも支離滅裂なことを言っているのが分かる。


俺が一人で永遠と訳のわからないことを言っている間も、ソフィアラはじっと俺を見て俺の話を聞いていてくれている。


今の俺にはかなり沁みる。


「停めて」


「どうしたんですか?」


ピエロは不思議そうな顔だ。


「いいから停めて」


いきなりソフィアラはどうしたんだ。


「クロ、来て」


俺はソフィアラに腕を引かれて馬車を降りた。


久しぶりに立ち上がるから、うまく立てない。


それでもソフィアラは俺を無理やり立たせる。


「すぐ済むから待ってて」


ソフィアラはピエロにそう告げると、俺は馬車から少し離れたところまで連れてこられた。


「クロ、1人で抱え込まないで」


なんだ、心配してくれてるのか。


こんな惨めな姿を見せ続けてるわけだしな。


「いや、でも結局は俺の問題ですし。

多分時間が経てば元に戻りますよ?」


精一杯大丈夫そうな顔を作ってはみるが、引き攣った顔なんだろうな。


でもまぁ、しばらくすれば慣れるだろう。


いや、慣れる?


慣れるって、なんだ?


人殺しに慣れるっていうのか……?


「男の人2人を私も手にかけた。

私がクロほど苦しまないでいられるのは、あの時クロが最後に全部引き受けてくれたから。

勝手に引き受けて、勝手に自分だけで処理しようとしないで」


ソフィアラは俺を見つめたまま、そう言い放った。


「 ……。

俺は別に引き受けたとかそういうつもりはなかったんですが、お嬢様がそこまで考えてくれてるとは思いませんでした。

ありがとうございます……」


俺はこの罪と付き合っていかないといけないんだ。


やるべきだと思ってやったことのはずなのに、全く心が晴れない。


残ったのは後悔と後味の悪い罪悪感だけ。


「私は殺人を肯定するつもりはないし、クロの行為を肯定するつもりもない。

でも肯定しなくとも理解はしたし、あの時は同じ気持ちだった。

だから私もクロと同じ」


そういうことか。


「俺はなるべくお嬢様には殺しなんてして欲しくないんですよ。

あの時だって俺がやりたくてやっただけのことなんですから。

だから、だから同じだなんて、言わないでください……」


こんな気持ちをずっと引きずったまま生きていくのかと思うと耐えられるか分からないが、ソフィアラにまで同じ気持ちを味わわせなくてもいいだろう。


「じゃあずっと1人で、そうやって後悔を抱えながら生きていくつもり?」


「……たしかに、後悔はしています。

でも、俺1人でなんとかできるなら、お嬢様にまで手を汚させるわけにはいきません」


「手を汚す?

これからも人を殺して、その度に後悔するの?」


「そういう意味で言ったわけではないんですが……」


いつになくソフィアラは饒舌だ。


そして攻撃的だ。


「後悔して、弱って、そんな姿をずっと私に見せるっていうの?

クロ、あなた、お父様と約束したんじゃないの?

私を守るって」


「……はい」


「私はいつまでも守ってもらおうなんて思ってないわ。

でも守るっていうなら、そんな腑抜けた態度でどうするの?

抱えきれないなら言いなさいよ。

自分1人じゃどうしようもないから一緒に考えてくれないかって。

あなたは、何のためにわざわざ殺人まで犯したの?

そうまでしてでも貫きたい何かがあったんじゃないの?

それとも、殺したいから殺しただけ?」


「……」


「教えて」


「俺は……。

俺は、あんな連中に任せておいたら、モモコたちが使い潰されるんじゃないかって怖かったんですよ。

使い潰して、また召喚すればいいみたいな考えをされるのが怖かった。

たしかに殺す必要はなかったかもしれない。

でもあいつは確実に他人を犠牲にし続ける人間だった。

だからあの時、人が犠牲になる可能性を減らせるのならと思って、俺は正しいことだと思って殺しました。

多分ああいう連中を見ると、今後も殺すことを選択してしまうと思います。

俺はモモコたちだけじゃない、他の勇者も生きて元の世界に戻って欲しいんですよ。

勇者をやりたくてやってる人なんていないと思います。

みんな無理やり連れてこられてるんです。

俺の友達3人も、モモコとミドリくんも仕方なしに始めるしかなかった。

そこにやりがいを感じていても、この世界で死ぬことなんて誰も望んじゃいない。

できることなら彼らをすぐにでも役目から解放して元の世界に返してあげたい。

でも彼らは、自分たちがやるしかないとか言って最後まで戦うと思います。

それなら俺は、彼らが死なずに役目をやり遂げられるように障害を取り払いたい。

これが俺の願いです。

俺はただ殺したくて殺したんじゃない。

あの時はここまで考えていたではないですが、それでも俺はこの信念で今後も生きていくと思います」


「それでいいのね?」


「はい。

それでも人を殺したという事実は変わりません。

いくら言葉で正当化しようとも、俺は人殺しです。

でも自分の大切な人を守るためなら、それだって仕方ないと思いました。

俺はどこまでもワガママです。

だけど、失うくらいなら俺はこのワガママを貫き通します」


「そう、クロの考えが聞けてよかったわ」


「いえ、俺も話を聞いてもらえて助かりました」


「じゃあ戻りましょ」


「はい」


ソフィアラが聞いてくれたおかげで、心につっかえていたものが取れた気がする。


だが、人殺しは人殺し。


このままいけば、今後も安易に殺人という手段を取りかねない。


そうであれば、自分の法をきちんと定めなければならない。


地球にいる時は、自分がこんな考えに至るなど思いもしなかった。


だけど、ここは人の死が溢れている世界。


元の世界の価値観で生き続けることは困難だ。


だからと言って、人殺しなんて認められたものではない。


しかし、そう言葉では否定しながらも、その行為をすでに許容してしまっている。


許容はするが、それ以上はダメだ。


これが当たり前になってはいけない。


ルールは厳密に定めなければ。


早急にルールを定め、そこからブレることなく生きること。


少なくとも人として生きていくための絶対条件。


これが出来なければ、俺は人ではなくなる。


俺がすべきは……。






「そろそろ帝国領に入りますよ」


「お、ようやくか。

そういえば、王国も連邦も国境みたいなものは無かったと思うんだけど」


「そうですね。

明確なのは、村や町がどの国に属しているかくらいですよ。

ところで、体調はもういいんですか?」


「ああ、おかげ様でな。心配かけた」


「それは何よりです。

お嬢様とお話で何か得るものがあったんですね」


「ああ、少しだけ考え方が変わったよ。

根本は何も変わっちゃいないがな」


「そうですか。

あまり無理はなさらぬよう。

護衛対象が心神耗弱で廃人になったなんて笑えないですからね」


「わかったよ」


このピエロの顔も、あと4日程で見納めか。


これだけ一緒にいても、結局この顔に慣れることはなかったな。


もうイベントは勘弁だぞ。


ところでソフィアラは……。


眠ってるな。


彼女も見た目には分からないが、かなりストレスがかかってるよな。


それなのに俺の心配なんて、無理してるのはどっちだよって話だ。


この子だけは、絶対に守ってやらないとな。






この日から俺は考えを改め、この世界に少しずつ染まっていくのだった。

ソフィアラめっちゃ喋る。

若者の葛藤を書こうと思いましたが、これまた難しい。

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