第33話 再進
前回は5500文字、今回は3500文字。
どれくらいが読みやすい量なのだろうか。
俺たちはイヴラコームの街の外にやってきている。
「これで一旦お別れだな」
「そうですね。
この数日間はとても楽しかったです。
自分の役目を忘れられるくらいには楽しませてもらいました!
ありがとうございました!」
ミドリくんはとてもいい子だ。
「うう、ソフィアラちゃん……。
うわああああああああああああああああん」
モモコはいつにも増して大声をあげて号泣している。
ソフィアラに抱きついているから、ソフィアラの服をかなり汚している。
涙と鼻水とヨダレで、モモコの顔は見れたもんじゃない。
周りの目もあるからそろそろ泣き止んで欲しい。
「おい、そろそろ泣き止めよな」
「うう……うっ……うっ……おえっ!
う、う、うわああああああああああああん」
えずくんじゃないよ、汚いなぁ全く。
10分ほどかけてモモコは落ち着きを見せてきた。
「うっ……悲しい……。
飼い犬のオルトロスが死んだ時よりも悲しい……」
オルトロスってただの名前だよな?
頭が2つあるやつじゃないよな?
満足したのか、ようやくソフィアラから離れた。
「おにいちゃんも、ありがとう……。
ソフィアラちゃんを守ってあげてください。
というか守れ。死んでも」
「おい、俺の時だけ態度が違うぞ。
いいのかぁ?
今泣いておかないと、ピンチに俺が颯爽と現れた時に号泣しちまうぞ?」
「大丈夫。
多分ピンチにおにいちゃんが駆けつけたら爆笑しちゃうと思うから。
でもほんと、おにいちゃんに会えて楽しかった。
とっても感謝してる!」
サッ──
「おい、何をする!」
攻撃に反応して思わず回避する。
「お礼にチューしてあげようと思っただけじゃん!
ありがたく受け取れ!」
サッ──
「避けんじゃねえ!
童貞のまま一生を終えるおにいちゃんの唇はあたしがもらってやる!」
「なんてこと言いやがる!
俺にはハーレムを築く未来しか見えておらんわ!」
「ロード!」
「おいバカ、身体強化はやめろ!」
「はぁ……はぁ……。
くそぉ、おにいちゃんのバカ!」
「はぁ……。
守りきったぞ! ざまあ見やがれ!」
ありがとう、見てたかヴィクター。
俺、やったよ。
勇者に勝てたよ。
あんたの修行はこの時のためにあったといっても過言ではない。
頑張って修行しててよかった。
「おい、依頼があるんだろ。
いつまでもここに居ちゃダメだろ?」
「そうですね、そろそろ行かないと」
「もう!
おにいちゃんが自分の唇に触れるたびに、あたしを思い出してしまうようにしたかったのに!」
恐ろしいこと考えてやがる。
なんて女だ。
「お前みたいなキャラ濃いやつはそうそう忘れねーよ!
いい意味でも悪い意味でもな!」
「もう知らない!
あたしにはソフィアラちゃんだけ居ればいいんだから!」
そう言ってソフィアラに抱きつくモモコ。
「ホントに連れていったらダメなの?」
「ダメに決まってんだろ!
お嬢様からも言ってあげてください」
「ダメよ。私にもやることがあるわ」
「そんなぁ……。
あたしはこんなにソフィアラちゃんのことが大好きなのにぃ!
でも次あったら絶対に離さないんだから!
あたしたちはもう姉妹なんだからね!
忘れちゃダメよ!」
「うん、分かってるわ。私もモモのことは好きよ」
「はうっ!」
あ、モモコが倒れた。
ソフィアラもやるなぁ。
「じゃあ僕たちはそろそろ失礼しますね。
また会える日を楽しみにしています。
応援してるのでクロさんも頑張ってください」
「ああ、怪我には気をつけてな。
俺も絶対そこまで追いつくからな!待っててくれ!」
「はい!」
「せいぜい期待せずに待っててあげる!
おにいちゃん、ソフィアラちゃん!またね!」
モモコとミドリくんは依頼の場所に向けて歩いていった。
姿が見えなくなるまで、モモコは手を振り続けていた。
途中まで一緒にと思ったが、残念ながら方向が違ったからな。
「騒がしいやつでしたね。
お嬢様、楽しかったですか?」
「うん、とても」
「お二人とも、もうここでやり残したことはないですね?」
「ああ、大丈夫だ。そっちもいいのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。
しっかりと種蒔きはしておきましたので」
怪しい笑顔で宣うピエロ。
おお、こわいこわい。
「じゃあ向かうか、帝国へ!」
「うん」
本来の目的に向けて、馬車は走り始めた。
馬車に揺られる。
実際は魔道具の効果で揺れは感じない。
じゃあなんて表現したらいいんだ?
そんなことを考えるくらいに暇だ。
「暇だ」
口に出るほどにそうだ。
「確かに、あの騒がしい方がいなくなるとそう感じますねえ」
「失ってはじめて分かるありがたさ。
魔獣とかが出たら積極的に戦ってみるか。
ここ数日はモモコが出しゃばって何もさせてくれなかったしな」
「そうですね。
あの方は戦い方を見せる意図があったんじゃないですか?
見て学べと、そう言っているように見えましたよ」
「そうかぁ?
俺には自分がやりたいだけの子供にしか見えなかったがなぁ」
ピエロの言う通り本当にそうなのか、俺が単にバカなのか分からんな。
バカな俺でもあのバカの考えは見抜けん。
「まぁ、そう感じるのならそうなのでしょう。
ですが、学べるものもあったと思いますよ」
学べるもの……。
火力ぶっぱの脳筋スタイルしか浮かんでこない。
でもミドリくんはかっこよかったな。
右目に魔法陣が浮かんだかと思うと、遥か先の魔獣が矢で射抜かれてんだもんな。
アーチャークラスもいいよな。
俺の戦闘スタイルは結局どこへ向かおうとしているのだろうか。
お嬢様は近接スタイルを確立しつつあるし。
俺は後衛に徹したほうがいいのか?
いや、お嬢様に危害が及ばないようにもしないといけないしな。
うーん。
「どうしたんですか、難しい顔をして」
「俺の戦闘スタイルが定まらんな、と思ってな」
「剣を持ってるなら前衛じゃないんですか?」
「お嬢様も前衛志向だから、邪魔しないかなと」
「別に常に2人で戦うわけじゃないんですから、前衛にこだわらなくてもいいかと。
ですが、少なくとも自分ひとりの時でも対応できる戦闘スタイルは欲しいですね。
でも、防陣でしたっけ?
あれを展開して攻撃が効かない後衛も厄介極まりないですよ。
複数戦闘においては後衛に徹したほうが無難じゃないですか」
「これひとつってスタイルで行くわけでもないし、それもそうか。
複数の場合は後衛メインで、状況に応じて前衛に加われたらいい感じだな。
あと問題はソロの時だな。
闇魔法って複数戦闘をイメージして使ってるのか?」
「私ですか?
私の場合は1対多でも対応できるようにしていますが、不利な状況で戦うことは望ましくないので、基本的には1対1に持ち込めることが理想ですね。
複数を1人でなんとかするとか、そんなこと考えるだけ無駄ですよ。
10人相手なら、1対10をするのではなく、1対1を10回行えるようにすればいいんですから」
簡単に言うなぁ。
「具体的に思いつかないな」
「そうですか?
私だと、影に引き込みさえすれば基本的に負けません。
モモコさんのような例外は居ますが、この状況なら負けないという得意なものを1つでも持っておいて、そこに持ち込めば楽勝です」
「得意なもの……」
「全属性が使える、魔法も複数同時展開可能、防御能力も一級品、これ以上望むものがあるんですか?」
「そう言われるとそうだが……」
「お嬢様は水属性だけですよ?
あなたの場合は無限に可能性があるでしょう」
「ありすぎて逆に思い浮かばないんだよ。
そうだ、可能性を模索していきたいから闇魔法を教えてもらっていいか?
1つ極めたら、また何かと組み合わせて新しいものが思いつくはずだ」
「そういうことですか、構いませんよ。
闇魔法は精神に作用するものと、影や闇を操るものがあります。
ただ精神系は一朝一夕では身につかないので、帝国に着くまでとなると後者のほうが良いですね。
まずは自分の影の扱いについてやっていきましょうか」
ソフィアラも聴きに来た。
「影は常に自分とともにあるものです。
無くなることはまず無いでしょう。
ということは体の一部といっても過言ではない。
これをまず意識してください。
そしてここからが重要です。
影は体の動きに応じて変化します。
このイメージを取り払ってください。
このイメージが強すぎると、影は変化できません。
ですが、影が変化することで体が変化することはない。
このイメージは維持しておいてください。
影の変化で体も変化すると思ってしまうと、ややこしいことになってしまいますから。
お嬢様の場合も同じで、自分が生み出した魔法はもはや自分の手足と考えてください。
神経を通すようなイメージで。
例えば私のシャドウスワンプですが、あの影の広がり全てが私です。
どこを触れても自分だと認識できます。
全てはイメージです。
イメージができていなければ、魔法の上達はありません」
ピエロの講義は続く──




