↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:connect  作者: ひとやま あてる
第2章 旅路編
37/170

第32話 責任

「次はここか。

ここはここで入りづらい雰囲気があるな」


やってきたのは、気難しそうな爺さんがやってる骨董屋のような魔道具店だ。


古代兵装とか置いてないかなぁ。


「僕とモモは外で待ってますね。

こういうお店にモモが入ると、騒いだり物を壊したり面倒ごとが起きるので。

お二人でじっくり見てきてください」


ミドリくん、ナイス判断だ。


「えー、あたしも入りたいー!

あたしそんなにうるさいキャラじゃないじゃーん」


こいつ、まさか本気で言っているのか?


「ダメです。お店に迷惑なので絶対に入れません」


「えー、ヤダヤダ!

ソフィアラちゃんと一緒がいいー!」


早速うるせーんだけど。


「ほら、お金渡すから好きなもの買って食べて待ってろ」


「え、ほんと!?

じゃあ大人しく待ってる!」


このバカはコントロールしやすいなぁ。


「じゃあちょっくら見てくるわ」


「いってらしー」


「じゃあお嬢様、入りましょうか」


「うん」


俺たちは店の扉をくぐる。


「いらっしゃい」


低い声が渋い爺さんだな。


「こんにちは。

戦闘用の魔道具って置いてますか?」


「戦闘用?

武器ってことか? それとも補助魔道具とかか?」


「補助魔道具ってなんですか?」


「一時的に能力を高めるものだ。

アクセサリーみたいなものが一般的だな。

例えばこのアイアンリストだったら、マナを込めることで攻撃力をあげることが可能だ。

反復使用ができる反面、効果は長時間保たないし、再使用までの待機時間もあるから使い所に注意だな」


「ありがとうございます。色々見させてもらいます」


「あいよ。奥に行けば武器とか防具もあるから興味あるなら見ていきな」


俺たちはじっくりと商品を選ぶことにした。


「良さそうなのが見つかりましたか?」


「これ」


ソフィアラがガントレットを持ってきた。


「お嬢様、殴り主体で行くんですか?」


なんだ?


モモコの影響か?


それに片腕だけだし。


「これでいいことを思いついたわ」


いいことって何だろう。


「クロは?」


「残念ながら、俺は特になかったですね」


ひとまず商品を店主の元へ持っていく。


「嬢ちゃん、なかなか良いものに目をつけたな」


「なんなんですか、このガントレット」


「そいつは特定の属性に親和性を持つガントレットだ。

最初に通したマナで、その属性の物質なんかを纏わせることができる。

嬢ちゃんの得意な属性はなんだ?」


「水」


「ほう、水か。

ならガントレットに魔力を込めておけば、触れた水を自分の支配下に置くことができる。

うまくいけば相手の水魔法の支配権だって奪えることもあるぞ。

放出された魔法よりも、直接触れて操った魔法の方が支配力が強いからな。

どうする、これにするのか?」


「うん」


「坊主は何も無かったのか?」


「ええ、残念ながら見当たらなかったですね」


「そいつはすまねえな」


「少し気になるものはありました。

魔剣って何ですか?

商品自体は置いてなかったみたいですが」


「ああ、あれか。

魔剣ってのは文字通り魔法の剣だ。

魔に通ずる──悪魔の剣なんて呼ばれ方もするな。

強力な効果と引き換えに何かを代償にする副次効果があるから使ってるやつはまず居ない。

一応俺も持ってるから並べちゃいるが、坊主みたいな若いモンには売れないな。

あれの効果は、あらゆる魔法を引き裂く代わりに寿命を削るってモンだからな」


なにそれこっわ。


「まだ命を削るほど切迫した状況ではないですね」


「だろ?

どうしてもって輩にしか売るつもりはない。

あれは斬るたびに寿命が削れる一時的代償魔剣で、一応誰でも使える。

俺は見たことはねえが、永続代償魔剣ってのもこの世界には存在する。

そいつは永続的に何かを失う代わりに所有者固定の代物だ。

間違っても手を出すんじゃねえぞ」


最悪の状況になった時には持っていたら助かる武器かもしれないが、持っていたら思わず使ってしまうかもしれないな。


命は大事に、だ。


「それよりも坊主。

そのアクセサリーはどうした?」


この王国で買ったやつか。


「これですか。

王国にいる時に買ったんですよ。

取り出し効率は悪いですが、一応マナを貯蔵しておけるので持ってます。

なんか若い子の間で人気があったみたいですよ」


「王国ではそんな風に伝わってんのか。

悪いことは言わねえ。

あんまり人から見えるところに着けるんじゃねえぞ」


「なんか良くないものなんですか?」


「そうだな。

ちょっと店の外を見てみろ。

あの路地裏のところに何人か集まってるのは見えるだろ?」


言われた通りにそこを見ると、確かに人がいるのが見える。


「ここ数年で急に増えてきたんだが、魔王を崇拝する集団みたいで、やつらは挙ってその宝石を持ってやがる。

特に悪いことをしてるようではないんだが、勧誘されると厄介でな。

知らなかったってんなら仕方ねえが、あんまり持ち歩いてて良いもんではないと思うぞ」


なんだか急にきな臭い話になってきたぞ。


「分かりました。気をつけておきます」


「そうした方が賢明だ。

じゃあ、買うのは嬢ちゃんのガントレットだけで良いんだな?」


「はい、それでお願いします」


「150ゴールドになるが、嬢ちゃん払えるのか?」


「たっか! そんな値段するんですか?」


「そうだ。だが値段に見合った効果は保証できる」


俺の装備を全身合わせても50ゴールドもしないぞ?


そういや、ロドリゲスがお金はピエロに任せてるって言ってたな。


肝心のピエロはどこかにふらっと消えて今はこの場にいない。


こんな高い買い物する予定はなかったしな。


「じゃあ、ここは俺が払っておきます」


そう言って俺はプラチナ硬貨2枚を店主に渡す。


「おう、まいどあり。

すまねえが、釣りは50ゴールドだからちょいと嵩張るぞ。

坊主は見た目に似合わず金持ちなんだな」


そんな貧乏な見た目なのか?


モモコがケチケチ言ってるのも、案外合ってるのかもしれない。


急に悲しくなってきた。


「そうですね……。

貧乏そうな見た目の方が襲われる心配もないでしょ?」


精一杯の強がりだな。


「まあ確かにな。

んじゃとりあえず嬢ちゃん、そいつを使ってみるか」


「うん」


ソフィアラはガントレットを左手に装着した。


なんか厨二病チックでちょっとカッコいい。


モモコの装備してたガントレットほど大型のものではないし、そこまでゴツい見た目でもないな。


「魔法の装備だからサイズは自動でいい感じになってくれる。

まずは嬢ちゃんのマナで小さくていいから水を生み出して、手甲の部分にある魔法陣に触れさせてみな」


ソフィアラが魔法を唱えて右手に水球を形成しガントレットの魔法陣に触れさせると、水球は吸い込まれて消えてしまった。


「これでそいつは嬢ちゃんの水魔法に順応したはずだ」


急にガラッと扉が開かれる。


「なになに、ソフィアラちゃんあたしとお揃いじゃーん!

やったー、うれしー!」


うるさいのがきたよ。


「すいません、モモが外からソフィアラさんの装備を見た途端に走り出して……」


「いや、ミドリくんは悪くない。

モモコ、今調整中だから静かにしてろ」


「はあーい」


「もう次に行ってもいいか?

ここにはあいにく水がねえから、嬢ちゃん今度は大きめの水を生み出してガントレットに触れさせてみろ」


ソフィアラが水球を形成する。


それにガントレットが触れると、ヒュイッという感じでガントレットが水を纏った状態となった。


「この状態なら魔法を唱えなくても自由に操ることができる。

なんかやってみな」


そう言われ、ソフィアラ水を氷に変えたり、氷の刃を生み出したりしている。


「武器にも盾にもなるわ」


おー、すごいな。


ソフィアラがやりたかったのってこういうことか。


「嬢ちゃん、なかなかやるな。

じゃあ次は他人の魔法に干渉するのをやってみるか。

坊主、水魔法は使えるか?」


「はい、使えます」


「じゃあ、水を浮かべて操作しておくんだ。

嬢ちゃんはそれに触れてみるんだ」


俺は水球を生み出して、空中をふわふわと浮かして操作する。


それにソフィアラが触れる。


「あれ?」


水球が俺の支配を離れた。


イメージとしては、立ってる時に急に支えを失った感じ。


ソフィアラのガントレットが水を纏っている。


「これが支配権の強奪だ。

基本的に大きな能力差がない限りは、直接触れた方が支配力が高い。

このガントレットの本質は、支配権を奪うことにある。

坊主も分かっただろ?」


「はい、急にぽっかりと何かを失ったような感覚ですね」


「よし次は坊主、触れて操る水魔法を使え」


水の剣でいいか。


「ロード、アクア エッジ」


「嬢ちゃん、触れてみな」


ソフィアラが俺の水刃を握る。


「ぐぬぬ……」


めっちゃ引っ張られる。


「あっ」


スポンッという感じで俺に手から魔法が奪い取られた。


子供がおもちゃを取り上げられた時のような悲しさがあるな。


「嬢ちゃんの方が水魔法は能力が高いみたいだな。

これが大体の使い方だ。

良いもんだから大事にしなよ」


爺さんが親指を立てる。


俺も老後はこんなカッコいい爺さんになりたい。


俺たちは爺さんに感謝を述べて店を出た。


「ソフィアラちゃんとお揃いだ!

もしかして、もしかしてあたしを意識しちゃった?」


「それもあるわ」


「ぎゃー、なんだこの可愛さ爆発娘は!

お父さん、娘さんをあたしにください!」


キラキラした笑顔を俺に向けてくる。


「うるせー!

ミドリくん、こいつを黙らせる魔法ってないの?」


「たしかミュートって魔法が……」


その後も騒ぐモモコをなんとかしながら俺たちは観光を続けた。






陽も落ちたので俺たちはミドリくんたちに案内されて、有名と言われる店で夕飯を済ませた。


外に出るとさらに寒くなっているが、街灯が多く、人通りも活発だ。


「冬の街をイメージしてたけど、かなり活気があるんだな」


「そうですね、通りに誰もいない時間はほとんどないんじゃないですかね」


「おにいちゃん、娼館でも探してる?

そんなにお金持ってたら行きたくもなるよねぇ?」


今日の夕飯代も俺が全部出した。


「んなわけねーだろ。

若い娘が娼館と言ってんじゃないよ」


「勇者様、こんなところで何をなさっているのですか!」


ん?


性格きつそうなおばさんが、数人の男を伴ってやってきた。


「誰?」


「この国の実権を握っている人たちのうちの1人です。

依頼などは大体あの人たちからもたらされます」


ミドリくんが説明してくれた。


「何をしているのかと聞いているのです!」


「たまには遊ぶくらい良いじゃーん。

別に今すぐ出て行かなきゃならない依頼ってわけでもなかったでしょ?」


「それでもあなた方を待っている人がいるんですよ!?

もう少し自覚をもって振舞ってください!」


通りにいる連中もこの騒動を見守っている。


俺も一言ばちんと言ってやるか。


こういう輩は気に入らん。


「いつも働いてくれてるんだから、たまの休みくらいいいだろ?

別にあんたらの道具でもねーんだからよ」


「なんですか、あなたは。

あなたが勇者様を連れ回しているのですか?

あなたがそうして笑って生活していられるのも勇者様のおかげなんですよ?

あなたがそうやって勇者様の時間を浪費している間に助けを待っている人が命を落としているかもしれないんですよ?

こんな少し考えれば分かることも分からないんですか?

自分がどれだけ迷惑な行為をしているか理解してください。

それに勇者は道具です。

世界平和のためには道具に甘んじてもらうしかありません」


こいつ、道具って言い切りやがった。


そっちの都合で勝手に呼び出しておいて、許せねえな。


「おい──」


「おにいちゃん、ありがとう。

もういいよ。あたしたちは気にしてないから」


叫び出す前にモモコが俺の発言を妨げた。


「分かりました、明日には依頼に向かいます。

これでいいでしょ?」


「分かったのなら、すぐに取り掛かってください。

出発前に一度こちらに顔を出してから向かってください」


そう言うと、おばさんたちは去っていった。


「おい、あんなやつらの言いなりになることないんだぞ?

ちょっとくらいわがまま言ってもいいだろ。

なんであんなのに従ってるんだよ!」


「おにいちゃん、怒ってくれてありがとう。

でもいいの。

誰かがやらないといけないんだから、あたしたちがやるわ」


「僕からもありがとうございます。

クロさんが怒ってくれてとても嬉しかったです。

でも僕もモモと考えは一緒です。

道具と言われようと、僕たちが頑張ってみんなが幸せになるならやりますよ」


なんでそこまで考えられるんだよ。


普通の16歳が背負う覚悟じゃねーだろ。


シロたちの時もそうだった。


俺が無力なばかりに、責任が俺じゃないところに回ってしまう。


こんな時、なんで俺じゃないんだと悔しくなる。


こんな若い子たちに責任を押し付けなくてもいいだろ。


「クロの言う通り、嫌ならやめていいと思うわ」


「……!」


初めてだ。


初めて、ソフィアラがここまでしっかりと意見を述べた。


泣きそうになる。


「ソフィアラちゃん……」


モモコがソフィアラを抱きしめる。


「ありがとう、嫌だけど他の人に任せていいものじゃないの。

おにいちゃんもソフィアラちゃんもあたしたちを応援してて。

応援してくれてるってだけで頑張れるから」


「うん、分かったわ」


「よし、決めた」


「なに、おにいちゃん」


「俺がお前たちを支えられるくらい強くなる。

なんなら勇者より強くなってやるぜ」


旅したいとか思ってたけど、そんな考えはもうやめだ。


「おにいちゃん、それはさすがに無理でしょ……」


「おい、俺の覚悟を速攻で否定すんな!

いいんだよ、俺がやりたいって決めたんだから」


「そう、分かった!

あたしたちも応援してるから頑張って!」


「おう、任せとけ」


「私も頑張るわ」


「ソフィアラちゃん、好き!」


どうせならってことで、俺たちの最後の一夜は馬車で過ごすこととなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。