第28話 襲撃
戦闘シーンをもっとうまく書けるようになりたい。
「ひ、ひぃ!
ロード、ファイアボール」
走り回りながら、敵に火球をぶつける。
「ギャンッ」
俺たちは今、雪狼の群れの襲撃を受けている。
道なりに北に進み続け、現在は周囲の景色は全て雪に覆われている状況だ。
ピエロは俺たちの実力を見ているために、よほど危険にならない限りは手出ししてこない。
「すいませんお嬢様!
そっちに2匹抜けました!」
俺の言葉を受けて、ソフィアラが詠唱を開始する。
「ロード、アイシクル」
1匹の雪狼が氷柱の串刺しにされる。
しかし攻撃を受けなかったもう1匹がソフィアラに飛びかかる。
ソフィアラは周囲の雪にマナを浸透させて地面から氷柱を生み出したが、どう考えても2発目は間に合わない。
「くっ」
咄嗟に腰の短剣を握りバックステップで回避を試みるが、雪に足を取られて十分な回避が行えない。
「お嬢様!」
ソフィアラの方に気を取られ、俺の意識が群れから離れる。
「ぐっ!」
その隙を突いて1匹の狼が俺の太ももに噛み付いている。
くそっ、防陣を展開できていなかった。
「──ロード、シャドウ ウィップ」
ソフィアラに襲いかかろうとしていた狼と俺の周囲の狼たちが、影に絡み取られる。
ピエロが手を出したってことは、そういうことだ。
しかし俺に噛み付いている狼はそのままだ。
こいつくらいは1人でなんとかしろってか!
「こいつ、放しやがれ!」
剣を首筋に突き立てるも一撃ではやれず、狼は俺から距離をとる。
痛えなホント。
狼は首から血を流しているが、俺も脚をやられたために満足に動けない。
睨み合いが続く。
先に動いたのは俺だった。
「ロード、ファイアボール」
あえて胴体ではなく足元を狙う。
予想通り、上に飛んで俺の魔法を回避しつつ飛びかかってくる。
狼の飛んでくる軌道に合わせて両手で剣を振るうと、見事に狼の上顔面が離断され、血を撒き散らしながら狼の死体が雪の上に転がる。
「はぁ……くそ!」
「お疲れ様です。
結果だけ言うと、ひどいものでしたね」
ピエロが近づいてくる。
ホントだよ。
まるでダメじゃねーか。
連携も何もなかった。
戦闘が終わって安心していると、思い出したかのように噛まれた太ももが痛み始める。
ああもう、痛すぎる。
現実世界で大怪我を負ったのはこれが初めてか。
「回復魔法を使える者がいないので、これでしばらくは我慢しておいてください」
ポーションを渡されたので迷わず飲み干す。
残った少しを傷口にぶっかけた。
痛みが緩和されて出血もほとんど収まった。
傷を見ると少しずつ治ってはいるが、完全に咬み傷がなくなるまでは時間がかかるだろう。
ポーションって即座に治癒するものじゃなかったんだな。
地球にいた時には考えられないくらいのスピードで傷は治り始めている。
ポーションを持って帰るだけで財産が築けるな。
「大丈夫?」
ソフィアラも無表情だが心配そうに聞いてくる。
「しばらく休めば大丈夫です。
すいません、色々ミスりました」
「反省は後にして、とりあえず馬車に戻りましょう」
ピエロの肩を借りて馬車へ向かう。
ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ──
なんの音だ?
「ロード、シャドウ ウィップ!
お二人を安全なところへ!」
ピエロが叫ぶと俺とソフィアラに影が巻きつき、馬車に向けて放り投げられる。
「おわっ!?」
「──ぅぅううう、どっかーん!」
何かが飛来し、地面が爆発して雪や土が飛び散る。
ピエロは俺たちを投げ飛ばしたために回避が遅れ、爆発の余波を受けて吹き飛ばされる。
俺たちはフード連中にキャッチされて無事だ。
「あれ、全員は無理だったかー。残念残念。
やっほー、盗賊の人たち!あたしが来たよ!」
ガントレットを両手に装備した少女が、拳をこちらに向けて構える。
クロたちが戦闘をしている頃──
「このあたりのダンジョンも壊し尽くしちゃったねー。
また出現してくれないかなぁ。
早く戦いたいんだけどー」
桃色の髪の少女が、ほっぺたを膨らませながら歩く。
「そんなこと言って……。
また魔人が出てきたらどうするんですか。
さっきのは結構苦戦しましたよ」
緑色の髪の少年が少女を窘める。
「いいじゃーん。
歯ごたえがないとつまんないよー。
早く戦場に行かせてくれないかなぁ」
「戦えるといってもまだ学ぶことが多いんですから。
そんなに急いでると命を落としますよ」
「うちら以外にも勇者はいるんだし、仲良く戦えば余裕だよ!
……ん? 何の音だろ?」
「ちょっと見てみましょうか」
少年の右目に魔法陣が浮かび上がる。
「ずっと行ったこの先で戦闘が起こっているようですね。
フードを被った人たちと……ピエロ?」
「怪しさたっぷりだ。
盗賊で間違いない!ちょっと行ってくるよ!」
「ちょっとモモ、最後まで話を聞いてください!」
少女は少年の話も聞かず、全身に身体強化を纏わせながら物凄い勢いで走り出す。
「一般人っぽい人も2人ほど混じってるんですけど……。
ああもう、なんで最後まで聞かないんですかあの人は!」
少年は遅れながらも少女を追いかける。
「おじさんたち、悪さしちゃダメだよ!
あたしが成敗してあげるんだから!」
「いえいえ、私たちは帝国向かっている途中のただの旅人でして……」
吹き飛ばされたピエロが体を起き上がらせながら言うが、口からは血が流れている。
「盗賊はみんなそう言うんだよね。
疑わしきは殺せって言うし、とりあえず死んでよ!」
言うや否や、少女はピエロに殴りかかる。
「ロード、シャドウ ウィップ」
ピエロは影を周囲の木に巻きつけ、影を縮めてその場を離れる。
少女の拳で先程までピエロのいた範囲が爆発する。
「もう、なんで避けるの!?
大人しくやられてよ!」
地団駄を踏んで、怒り続ける少女。
「盗賊じゃないって言っているでしょう。
話を聞かない人ですねぇ。獣ですかあなたは……。
大人しくやられるわけにもいけませんので、こちらも本気でいきますよ?」
なんだこの野蛮な女の子は。
しかし誰からも盗賊にしか見えてないんだから、ピエロたちもその見た目をなんとかした方がいいぞ。
というか、あれ……?
「ロード、シャドウ スワンプ」
ピエロの周囲に影が広がっていく。
「これは危なそうだ!」
少女は飛び退いてピエロから離れる。
「あなたは近接タイプでしょう。
攻撃したいなら近づいてきたらどうですか?
どんどんいきますよ?
ロード、シャドウ バレット」
黒い魔弾を次々に撃ち出すピエロ。
「もう、めんどくさいなぁ!」
少女もその全てを拳で打ち砕く。
「でもそんな弱い攻撃なら、あたしには効かないよ?
そっちこそ、これが限界?」
したり顔で少女も挑発する。
「まさか。でもこれであなたも終わりです。
ロード、シャドウ ダイブ」
ピエロが足元の影に包丁を握った腕を突っ込む。
先ほどの攻撃で少女のガントレットには影が付着していた。
その影からピエロの腕が出現し、包丁が少女の首筋を狙う。
「!?」
「さようなら」
「ッ──金剛体!」
少女の体が金色の光に包まれる。
ガキィィィン──
金属音が響き、ピエロの包丁は少女の首に刺さることなく停止している。
「まさか、これを使わせられるとは思ってなかったよ。
おじさんやるね!
あたしも本気でいかないといけないみたいだ」
少女の顔に先程までの笑みはない。
影の付着したガントレットを放り投げる。
「じゃあ、今度はこっちの番だね!」
少女はピエロの影などお構いなしといった様子で突撃してくる。
ピエロは影に潜り、少女の拳が空を切る。
ピエロは瞬時に少女の背後に現れると、再度包丁を振るう。
しかし先程と同様に刺さることはない。
逆に少女のほうは攻撃を読んでいたのか、ピエロの腕を掴んでいる。
「効かないって分かんないの?
でも、これで終わりだよ」
「くっ」
少女は拳に炎を纏い、ピエロの腹部に全力の一撃が突き刺さる。
しかしピエロの体は吹き飛ぶことなく、身体が黒く変化したかと思うとバシャリと影が飛び散った。
「ロード、シャドウ バインド」
どこからともなくピエロの声が聞こえ、少女の身体に影が纏わり付き自由を奪う。
「いやあ、危ない危ない。
シャドウデコイを出していて正解でしたね」
ピエロが影の中から浮き上がる。
「卑怯だよ!正々堂々その身体で戦いなよ!」
少女は動けなくなった状態で吠え続ける。
「いきなり襲いかかってきたあなたには言われたくないですねぇ。
しかし、珍しいものを見ました。
肉体刻印魔法を使う方は久しぶりですよ」
少女の両方の手の甲には魔法陣が彫られている。
先程少女が拳に炎を纏ったのは、この魔法陣の効果だ。
「そして、今度こそ終わりですかね。
攻撃が効かないのなら、影に沈めて窒息死させるだけですよ」
少女の足元から影が少女を締めつけ、デコイの影も浴びて身体の大部分が雁字搦めにされた少女は動くことができない。
「……ああそう。もう絶対に許さない」
少女の雰囲気が変わった。
突如少女の全身が激しい炎に覆われたかと思うと、炎が大爆発を引き起こした。
付着していた影ともども足元の影が全て消滅する。
ピエロも咄嗟に回避する。
「ロード、ヘイスト!
ロード、ナックル ストレングス!
ロード、ペネトレイト!」
少女はありったけの身体強化をかける。
「モモ、何してるんですか!?」
緑髪の少年がやってきた。
「うるさい!邪魔しないで!
こいつは絶対にぶち殺す!」
やっぱりそうだ。
今やってきた少年の言葉を聞いて、やっと気がついた。
「おい、聞いてくれ!
俺たちは盗賊じゃない!
その子が話も聞かずに襲いかかってきただけで、俺たちは被害者だ!」
「モモ、あの人もああ言ってますよ?」
「あの人は一般人のふりしてるだけに決まってる!
こいつらは盗賊で間違いない!
特にあいつは殺さないと気が済まない!」
そうか、言語理解で俺の言葉がそうだって気が付いていないのか。
この2人はアレに違いない。
「おい、こう言わねぇと分かんねーのか!日本人!」
「「──えっ?」」
少年と少女の驚くほど拍子抜けした声が響いた。
ー今日のソフィアラー
「くっ」「ロード、アイシクル」「大丈夫?」
もっと目立たせてあげたい。




