第23話 特訓
「えっ?」
「なんだ、聞こえなかったのか?
ソフィアラは帝国の高等学園に入学させると言ったのだ」
「いえ、それは分かります。
ですが、どうしてその話を俺にされるんですか?」
俺はまたロドリゲスからの招集を受けてやってきている。
「ソフィアラから聞いたぞ。
君も高等学園に入学したいそうじゃないか。
ならいっそ同じところに行ってはどうかと思ってな。
ソフィアラの護衛も兼ねて同行すればいいのではないかという提案だ」
堅物の親父かと思っていたが、親子の会話はしてたんだな。
「それは願ってもない話です。
ところで、王国の学園ではなく帝国なのはどうしてでしょうか」
「王国の学園では多くを学ぶには些か物足りないところがある。
帝国は王国よりも遥かに戦場に近い場所にあり危険も伴うが、魔法も戦闘もハイレベルなものを学ぶことができる。
各国から学生が集まるため、人間関係に慣れないソフィアラには人と触れ合うのにうってつけだ。
それにこんな西の端の王国で燻っていては良い大人にはなれない。
ということで、ソフィアラには色々なものに触れて世界を見て欲しいのだ。
他にも理由はあるが、だいたいそんなところだな」
このおっさん、娘のことをちゃんと考えてるんだな。
「分かりました。是非同行させていただきます。
ちなみに護衛とはどのようなことをすればいいのでしょうか」
やった、思わぬところから学園に入るルートが舞い込んできたぞ。
「まずはソフィアラに危害が及ばぬように常に気を配れ。
あとは悪い虫がつかぬように追い払え。
あの子は変に人を信用してしまうことがあるから、おかしなことに巻き込まれないようにな。
最低限それらをクリアできていれば、あとは自分のやりたい事をやれば良い。
君の防御能力については評価している。
ペーターとの訓練でも腕を上げているみたいだしな。
王国から帝国まで約2週間かかる。
出発のギリギリまでペーターから学べ」
なんか知らない間に高い評価を頂いてるな。
「あと、君がソフィアラに手を出すのも許されないぞ」
おっと、最後にしっかり釘を刺してきた。
「はい、心得ております。では、失礼します」
俺はロドリゲスの部屋を後にした。
さっきロドリゲスが言っていた通り、近接戦闘に不安を覚えた俺はペーターに師事し、戦闘訓練を行わせてもらっている。
多分このこともあって、ロドリゲスは俺を護衛に当てがおうと決めたんじゃないかな。
前回のレベル上げ以降、何度か北の森以外にも狩りに出た。
魔獣に対して剣を振るっても大したダメージを与えることができなかったため、どうにかして剣を学ばなければならなかった。
そもそもダメージを与える云々の前に、剣で魔獣に切りつけただけで関節など俺の腕がダメージを負った。
非力さを痛感した…。
魔法剣士なんて粋がっていたが、俺は剣士のコスプレをした一般人に他ならなかった。
というわけで、ペーターの空き時間に訓練をつけてもらっている。
実は戦闘訓練は俺だけではなく、ソフィアラも行なっている。
ソフィアラはAGIのステータスを生かして、短剣をメインにした戦闘スタイルで行くつもりのようだ。
俺もその方向で考えていたが、ソフィアラが自分から言い出した時にはとても驚いた。
結局レベル上げ自体は魔榴石でどかーんとやるくらいしかなかったので、ソフィアラも物足りなさを感じたのか訓練に混じってきたのだった。
帝国への出発まであと1ヶ月ほど。
それまでの間に護衛として働ける程度には鍛えなくてはならない。
少しレベルが上がって今のステータスはこんな感じだ。
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《名前》黒川ハジメ
《Lv》5 → 11
《種族》人間
《性別》男
《年齢》20
HP 700/700 → 750/750
MP 3220/3220 → 3260/3260
STR 11 → 12
AGI 16 → 17
VIT 10 → 11
DEX 22 → 24
INT 32 → 36
LUC 30
《称号》異世界からの侵入者
《魔法》生活魔法 攻撃魔法・全(中級) 防陣
《ギフト》悪食
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《名前》ソフィアラ=デラ=ヒースコート。
《Lv》5 → 11
《種族》人間族
《性別》女性
《年齢》15
HP 450/450 → 500/500
MP 410/410 → 420/420
STR 5 → 6
AGI 27 → 29
VIT 6 → 7
DEX 37 → 41
INT 11 → 12
LUC 5
《称号》
《魔法》生活魔法 攻撃魔法・水(初級)
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俺はDEXとINTに、ソフィアラはAGIとDEXに成長補正がかかっているようだ。
こんだけ上げても勇者の初期ステータスには到底追いつかない。
勇者ってすげーな。
「フンッ!」
ペーターが両手に握った大剣サイズの模造刀を上段から振り下ろす。
ブンッという音を立てながら凄まじいスピードでクロの頭部に迫る。
「うお、あぶね!」
サイドに避けると、土を撒き散らしながらペーターの模造刀が地面を砕いて突き刺さる。
読めていてもギリギリだ。
しかしこれはチャンスだ。
ペーターの武器は即座に振れる状況ではない。
クロはすぐさま横薙ぎで武器を振りかぶる。
クロが用いているのはショートソードの模造刀だ。
しかし、空を切る。
「なに!?」
武器を振り下ろして前かがみの体勢になっていたペーターだが、両手を武器から離し、飛び上がって前宙し踵を振り下ろしている。
気付いた時にはもう遅く、頭部に触れる直前でクロは魔法を発動した。
踵が頭頂部に振れるがダメージはない。
MPは3割ほど持っていかれた。
必殺の一撃かと思ったが、手加減されてるな。
クロはペーターの足に対して武器を振り上げる。
ペーターは片足がクロの頭部に触れた状態から今度はバック宙して攻撃を回避して地面に降り立った。
ペーターに疲れたような様子はない。
対称的にクロは汗だくになりながら息を上げている。
「使ったな」
「はぁ……はぁ……。
はい、使わざるを得ませんでした……」
クロは防陣の魔法でペーターの攻撃を防いだが、防がなければ確実に頭部を砕かれていた。
「大きな攻撃を回避できて安心してしまっただろう。
その安心感から安直な攻撃を繰り出してしまった。
そこが敗因だ」
「そうですね、相手の攻撃が一撃で終わるものだと勝手に思い込んでいました」
今回の戦闘訓練では魔法を用いてはいけないため、クロの敗北だ。
以前ペーターから魔法に頼りすぎているという指摘があり、魔法に頼らなくても戦えるようにしようとしている。
確かにいつでも魔法が使える状況とは限らないため、魔法を使う癖がついてしまわないように特訓を繰り返しているのだ。
あくまで保険として考えないといけない。
「それに一撃目の回避がギリギリだ。
毎回同じ速度で相手が攻撃してくるとは限らない。
お前の攻撃予測は大したものだが、そこを逆に突かれるということがあってもおかしくないからな。
あくまで予測だ。
そうあって欲しいという希望ではない」
ぐぬぬ……。
「お前は自分が得たものが絶対だと過信しすぎている。
それは手段に過ぎない。
その手段が必ずしも結果に結びつくわけではない。
いつでも相手がそれを凌駕してくる可能性を懸念しなければならない」
俺がソフィアラの護衛をする話になってからペーターの厳しさが増している気がする。
「はい、心得ておきます……」
今日もペーターに一撃も入れることができなかった。
というか、一生無理な気がするんだけど……。
俺の訓練が終わると、今度はソフィアラの番だ。
ソフィアラの訓練目標はペーターに両手を使わせるか、一撃を叩き込むこと。
ソフィアラのスピードは大したものだが、短剣の振りは甘く、片手というより数本の指だけで弾かれている。
蹴りなどの攻撃も同様だ。
ペーター、あんたはどこでこんなに強くなったんだよ。
ロドリゲスもこんな強靭な護衛がいて安心だな。
結局ソフィアラもペーターには攻撃を入れられなかった。
最後の短剣の一振りなんて人差し指と親指で摘まれて止まってたしな。
ああ、強くなりたい。
ペーターに挨拶をして今日の戦闘訓練は終わった。
次はソフィアラの授業だ。
魔法に加えて、俺たち2人で戦闘訓練も行っている。
ペーターから学んだことを復習する意味でも効果がある。
本気でやると危ないので、やっても寸止めまでだ。
でも侍女が回復魔法使えるので多少の怪我なら大丈夫だ。
ソフィアラに怪我をさせるわけにはいかないと思って最初はやっていたが、ソフィアラが素早過ぎて俺の攻撃がヒットすることはほとんどない。
逆にソフィアラはペシペシ当ててくる。
寸止めのはずなんだけどなぁ。
魔法を用いた戦闘訓練も少しずつ開始し、ソフィアラの攻撃魔法は中級まで上がっていた。
ソフィアラの魔法訓練メニューを考えたり剣の素振りを行なったりと、さらにやることが増してきた毎日だ。
当然大切なのは仕事もだが、護衛としての力量をつけるのも大事だ。
こんなことを続けていると、あっという間に帝国への出発日になっていた。
文字数3500くらい書いても、最近では少なく感じてしまいますね。




