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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第1章 王国編
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第21話 闇夜

誰もが寝静まった深夜。


コンコンコン──


「……ん?」


誰だ、こんな夜中に。


むくりと上半身を起こす。


なおもノックは続いている。


寝てんだから勘弁してくれよな……。


クロは目をこすりながら渋々扉へ向かう。


使用人の誰かだろう。


急ぎの用事でもあんのかね。


「はーい、今開けるんで待ってください」


特に警戒心もなく扉を開けるクロ。


「え、えっと…どちらさま?」


暗い廊下から猟奇的な顔をしたピエロがクロを見下ろしていた。


突如ピエロがクロに迫る。


「ひっ……!」


身の危険を感じ即座にバックステップで離れようとするが、それ以上のスピードでピエロが迫り、下顔面を鷲掴みにされて片手で宙に浮かされた。


「んーっ! んーっ!」


クロは暴れるが、ビクともしない。


「あまり暴れないで下さいますか?

覚えてませんか? 私ですよ。

裏競売で司会進行をしていたでしょう?」


そう言われれば、確かに見覚えがある。


今日は仮面をつけてないのか。


というか前回の服装は仮面による変装じゃなかったのかよ。


というか、いきなりこの仕打ちはないんじゃないか?


知っててもびびるわ!


「いや、すいませんねぇ。

大声を出されても困りますので、こんな形で口を塞ぐしかなかったんですよ。

お静かにできるのであれば手を離しますが?」


コクコクと掴まれた状態で頷く。


すると急に手が離され、地面に尻餅をついてしまった。


乱暴すぎだろ。


「それで、一体何の用なんだ?

というか、どうやって侵入した?」


この男からは危険な匂いしかしない。


「いやぁ、どうやって入ったかなどそんな些細なことはいいではありませんか。今日は以前お伝えしていたお仕事のお願いで来たのですよ」


仮面あげるから仕事してねってやつか。


「にしてもこんな時間に来ることはないだろ。

アンタじゃなくて使いが来るとか言ってなかったか?」


「たまたま私の手が空いていたもので、どうせならと思って直接私が来た次第でありますよ。

では、早速向かいましょうか」


ニヤリと笑うピエロ。


「え?」


「何をとぼけた顔をしているのですか?

仕事ですよ仕事。 ささ、着替えて着替えて」


「こんな時間からしないといけない仕事なのか?」


簡単な仕事とか言ってた気がするが、夜間に行う仕事ってなんなんだ?


「まぁいいじゃありませんか。

仕事さえこなせれば仮面はあなたのものなんですから」


俺の意見は基本的に聞く気がないらしい。


言われるがままに着替える。


「あ、仮面で変化もしておいてください」


「はいよ」


また怪しいところに連れて行かれるのかね。


「お手を拝借」


なんだ?


男と手を繋ぐ趣味はないんだが。


この世界は、すぐ俺をホモルートに持っていこうとする。


「ではいきますよ。

ロード、シャドウ パスウェイ」


突如足元に黒い影が現れたかと思うと、ピエロとともにクロは影に引き込まれた。


「!?」


気づけば靄がかった薄暗い通路だ。


「この魔法はなんだ?」


「うーん、裏の世界と表現すればいいでしょうか。

特定の2点を影で繋いでそこを移動する魔法ですよ。なので誰からも見られる心配はありません」


「へー、そんなのどこでも侵入し放題じゃないか」


「いえいえ、この魔法は許可を得たところにしか繋げられませんよ。

それに物理的な距離は変わりません。

ヒースコート伯爵とは古くから縁があるので、特別に繋ぐことが許されているのです」


なんだ、伯爵は関係者か。


だが、夜間にピエロが勝手にうろついているのも考えものだけどな。


話しながらもかなりの距離を歩かされた。


「着きましたよ」


ピエロが上に手をかざすと、地上に出ることができた。


そこは大きな船が数隻停泊し、男たちが必死に荷物の運び出しをしている。


上を見ると洞窟の中に作られた港のようだ。


「ここは?」


「裏競売などで扱う商品が運び込まれる港ですよ。

王家にも見つかっておらず、違法な商品はここを通して王国に運び込まれることになります。

また裏稼業の人間もここから入ってきますよ。

ちょうど今頃仕事に使う商品が届くことになっているので、あなたをお連れしたのですよ」


優雅な王国の影で、こんなことが日夜行われてるのか。


そんなことを考えていると、木箱を抱えたひとりの薄汚れた男が近づいてきた。


「お、いいタイミングですね」


やり取りを終え、ピエロが数枚の金貨を握らせると、男はニヤつきながら去っていった。


「これです」


ピエロが木箱を開き、中のものを俺に見せる。


黒い杭のようなものがギッシリと詰まっている。


「これは?」


「情報収集に用いる魔道具の一種です。

受信体とセットで使います。

これを地面に打ち込むと、これを介して周囲の情報を入手してくれます。

我々の仕事は足がついてはいけませんので、こういったものを使って絶えず情報を得なければいけません。

ただ経年劣化するもののため、定期的に打ち込み直さなければならないのですよ。

今回あなたにお願いするのはこれの打ち込みです。

打ち込むといっても、軽く地面に刺せば、そのまま地面に吸い込まれていきますので大した手間はかかりません。

これを指定された箇所にお願いしますね」


そう言うと、俺に場所がマーカーされた地図と杭の入った袋を渡してきた。


「今回はその場所にお願いします。

場所が多く、一度では難しいので何回かに分けて行ってもらいます。

終われば、またあなたが寝てる間にでも枕元に新しい地図と道具を補充しておきますので」


「こえーよ!

起きてる時にしといてくれ!」


「あと地図は持ち歩かず、記憶したらすぐ燃やすようにしてください」


「はいよ」


足がついたらいけないもんな。


「あとこれも持っておいてください」


数枚のスクロールを渡された。


「スクロール?」


「おや、ご存知ありませんか?

マナさえ込めれば習得していない魔法でも使えるという──」


「いや、それは知ってる。

何の魔法なんだ?」


「リターンの魔法が込められています。

一度魔力を込めるとその場所が記憶され、もう一度込めると記憶された場所に戻ることができます。

これがあれば夜間の出入りも問題なくなるでしょう。

それに監視の目もありますからね」


「監視? 別に監視された生活は送ってないぞ」


「おや、お気づきでは無いのですか?

裏競売の時もそうだったようですが、あなたにはずっと監視が付けられていますよ」


「……なんだって?」


まじかよ。


だが、監視されてるとなると十中八九王国だろう。


俺の様々な痴態も筒抜け?


まじ死にたい。


「必要ならこちらで消しておきましょうか?」


「いや、それはダメだろ」


承諾してしまうと、この男は嬉々として殺しに行きそうだから怖い。


「どうして監視がつけられているか分かりませんが、普通に出歩いていては捕捉されますので、スクロールを使って監視の目が弱い夜間に仮面で変装して行動されるのが良いでしょう。

1つのスクロールは予め王都のどこかに、もう1つは部屋に設定すれば見つかることもないでしょうが、

くれぐれも気をつけてください」


「分かった」


にしても、監視されてると行動に制限がかかってしまうな。


常に誰かの目に怯えて生活するとか、QOL下がりまくるわ!


「早ければ早いほどいいので、数日以内には仕上げるようにしておいてください。

なに、3回か4回程度ですので急げばすぐですよ」


その後俺は部屋に戻され眠りについた。


その日から部屋のカーテンは日中でも閉める癖がついた。






早速次の日の夜、俺は昼間に設定した場所から指定された場所に杭を埋め込みにいった。


杭は地面に触れると驚くほどすんなりと地面に吸い込まれていった。


なんだこんなもんかと逆に心配するような仕事内容だったが、常に誰かに見られているんじゃないかとそっちのほうが気が気でなかった。


今回だけで王都の1/4ほどの範囲を走り回った。


王都の全域をカバーしようと思うと、計4回ほど仕事だろうか。


夜間は驚くほど人が少なく、裏路地をメインに使っていたこともあり他人と遭遇することはなかった。


数時間かけて仕事を終えて部屋に戻ると、次の仕事セットがベッドの上に置かれていた。


一瞬ビビって部屋を見渡したが、誰かがいる様子もない。


外から監視、中からは勝手に出入りする輩。


おれのプライバシーはないのか?


まあそれもあと何回かで終わり。


ちょっと我慢すれば済む話だ。






そうして俺は計4日かけて仕事を終えると、お疲れ様と書かれたメモが置かれていたのを最後に、それ以降ベッドの上に荷物が置かれることはなかった。

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