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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第1章 王国編
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第20話 継承

「オラァ!」


手の甲に魔法を展開して、裏拳の要領で背後を殴りつける。


クロの延髄を狙った魔弾が拳によって霧散した。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


「おー、今のは分からないかなと思ったんだけどギリギリ耐えたね」


「おい、魔弾を不可視にするのは反則だろ!」


「でも反応できたし良かったじゃないか。

マナ感知もしっかりできてるってことだよ」


「でもこれできっかり1時間耐えたぞ!

さあこのくそったれの空間から俺を解放しろ!」


俺に課せられたのは、ヴィクターの攻撃を1時間ノーダメージで耐え抜くこと。


魔法だけかと思いきや、こいつ普通に近接戦闘まで仕掛けてくるし。


戦闘訓練なんてやったことないっていうのに全く聞いちゃくれなかった。


倒れてもリセット、逃げ出そうとしてもリセット。


無理やり続けさせられて、果たしてどれくらいこの空間に滞在してるかもはや分からなくなってしまっている。


「随分口が悪くなっちゃって。

最初はもっと謙虚だったじゃないか」


「仕方ねーだろ、何が修行だ!

ただのイジメじゃねーか!

だがそれもこれで終わりだ。ざまーみやがれ!」


「そうだね、これで終わりにしよう」


やったぜ、やっと終わりだー!


ようやくその言葉を聞くことができたぜ…。


安心して一気に脱力する。


ボグッ!


脱力したクロの鳩尾に突然魔弾が打ち込まれ、1メートルほど打ち上がって地面に叩きつけられた。


「ぐふっ……何しやがる……。

終わりっていっただろ……」


「うん、言ったよ。

()()()終わりって。

何勝手に安心しちゃってんだい。

家に帰るまでが修行だよ?」


「くそが……。 やっぱりアンタ性格悪いぜ……」


「まあまあ、そう怒らないでよ。

最後まで気を抜いちゃいけないっていう先生からの最後の教訓さ。

でもまさかこんな短期間で終えられるとは思ってもみなかったよ。

見る目あるよ、クロ。 はい、リセットね」


視界が戻る。


「そういうことにしておいてやるよ。

短期間って言うが、どれくらい俺はここにいたんだ?」


「だいたい半年くらいだと思うよ」


「は…?」


リセットされすぎて休むことなんて一切なかったが、そんなに経ってたのか…。


「安心してよ。

現実の時間は1秒たりとも進んでないから。

ここは精神世界だからなんでもござれさ」


「そういうことか、一瞬まじでビビったわ」


1時間耐え抜くだけなのに半年って、まじで笑えないわ。


「そのおかげで生き残るための力は身についたはずだよ。クロの戦闘力は皆無に等しいけど」


「はいはい、ありがとうごぜーやしたー。

色々とお世話になりましたー。

もう帰っていいっすかー?」


「そんなに急がなくてもいいじゃないか。

ちょっと最後に話くらいいいだろ」


「仕方ねーなぁ。ちゃっちゃと済ませてくれよ」


「おっけー。

魔導書の作り方を教えておかないといけなかったからね」


「そういやそうだったな。どうすればいいんだ?」


「簡単さ。 願うんだ」


「願う…?」


「そう。 この魔法よ、後世に残ってくれってね」


「そんだけ?」


「うん、それだけだよ。 簡単でしょ?」


「それなら誰でも魔導書を作れるんじゃないのか?」


「いいや、作れるのは魔導書を引き継いだ者だけさ。

魔導書に残すとその魔法はもう使えなくなってしまうから、死ぬ前ならいつでもいいよ。

魔導書を持たない場合は、命と引き換えにすれば作れるらしいよ」


「命よりも魔法って大切なもんかねぇ。

俺には分かんない感覚だわ」


「例えば自分で成し得なかったものを後世に引き継ぐってこともあるしね。感覚は人それぞれだよ。

ただ、魔導書ってのは良いものばかりじゃない。

恨みを持って凶悪な魔法を封じたものもあるから、なんでもかんでも開いていいわけじゃないんだ。

クロは悪い人間じゃなさそうだから悪いものに適正はないはずだけど、そういうものを見かけたら真っ先に封印してね」


「破壊はできないのか?」


「できないよ。これが厄介なところでね。

ただ、悪意のある魔導書が存在しているってことを知ってる人間はほとんどいない。

そういう風に僕らが認識を変えていったからね。

魔導書はただ単にすごいものってイメージしかないはず。

魔導書は毒にも薬にもなるから、危険な思想を持った魔導師の手に渡らないように処理するのも君の役目さ。

言いたかったことはそんなところだね」


「分かった、全部受け取ったぜ」


「ならよかった。

名残惜しいけどそろそろ解放するよ。

君の人生が幸あるものだということを願うばかりだよ。

死んだらまた会おう」


徐々にクロの視界がボヤけていく。


「じゃあね、地球人くん──」


そう言い残すと、魔導書の世界は失われていった。






「おい、どうした? ぼーっとしていたが大丈夫か?」


ロドリゲスの声でハッとする。


現実に戻ってきたようだ。


本当に現実では一瞬の出来事だったんだな。


手元を見ると、魔導書は消えてしまっていた。


その代わり、胸元に魔法陣が刻印されている。


これが引き継いだ証ってわけか。


「いえ、なんでもありません。

無事魔法を習得できました」


最後のヴィクターの発言が気になるな。


俺は地球から来たことを明かしてはいなかったが、なぜかヴィクターはそれを知っていた。


「それは何よりだ。

ちなみにどういった魔法かね?」


「マナを消費して攻撃から身を守る魔法です。

試しにペーターさん、俺を殴ってみてください」


「大丈夫なのか? なかなか強いぞこの男は」


「ええ、本気でやっちゃってください」


「だ、そうだ。 やってやれ」


ペーターが俺に歩み寄り、目の前で停止する。


至近距離だと圧力がすげえわ。


だが、ヴィクターに比べたらそんなに恐ろしさはないな。


あいつやること無茶苦茶だもん。


「いくぞ」


「はい、お願いします」


「フンッ!」


ペーターが大きく右腕を振りかぶり、俺の顔面をめがけて殴ってくるのが分かる。


物理攻撃に対しても攻撃予測が働いているな。


修行の成果を早速感じられる。


胸元の魔法陣にマナを込める。


肉体に刻印すると詠唱の必要がない。


これはヴィクターから聞いていたことだ。


一瞬、俺の胸元の魔法陣が金色に光る。


そして掌をペーターの放つ拳の軌道に向けて掲げる。


音もなくペーターの拳が静止する。


ドンピシャだぜ!


「!?」


おお、驚いてる驚いてる。


ペーターの驚いてる顔なんてめったに見れないかもな。


しかし強いなこのおっさん。


1割もMPが持っていかれた。


ヴィクターが嘘つきで実は魔法を教えてくれてなかったらとも思ったが、しっかり魔法は効果を発揮したようだ。


発動しなかったら右手ごと俺の頭が胴体からサヨナラだったが、そんなことはなかった。


ペーターが持ち場に戻る。


「驚いた。すばらしい魔法じゃないか」


ロドリゲスも感心している。


「万能なわけではありませんが、守ることに関しては大きな効果を発揮します」


「いや、今日はいいものが見れた。

北の森に行く日取りは追って伝える。

それまでに装備などを揃えておくがいい」


「分かりました。それでは失礼します」


俺はロドリゲスの部屋を後にした。






仕事を終えベッドに潜り込んだが、寝る前に色々考えることが多い。


今回新しい魔法を習得したことで戦い方の幅が広がった。


近距離でも戦える可能性が出てきた。


あとは武器や装備をどうするべきかだな。


武器の扱いなんて分かんないし、学園に行ったら教えてくれるのかね?


いや、そこまで過保護にしてくれることを期待しちゃダメだな。


自分で戦闘スタイルを見つけないと。


ソフィアラの戦闘イメージは固まっているんだが、新しい要素のせいで俺のイメージが全然固まらない。


ヴィクターの修行で近距離戦闘で少しばかり体を動かすことを覚えたが、それも大したものではない。


そういえば精神世界の修行でもステータスって変化してるのかな?


「ロード、オープン ステータス」


ーーーーーーーーーー


《名前》黒川ハジメ

《Lv》1

《種族》人間

《性別》男

《年齢》20

HP 500/500 → 700/700

MP 2800/2800 → 90/3200

STR 10

AGI 10 → 15

VIT 10

DEX 20

INT 30

LUC 30

《称号》異世界からの侵入者

《魔法》生活魔法 攻撃魔法・全(中級) 防陣

《ギフト》悪食


ーーーーーーーーーー


お、やったぜ増えてる。


MPはさっき使い切ったからほとんど残ってないが、仕事や修行も含めて増加に影響してるのかな。


散々無茶苦茶されたお陰かHPも増えてるな。


精神世界の修行も結構馬鹿にできないな。


でも半年の修行の成果だと思うと、そうでもないかもしれないな。


まあ増えてるだけヴィクターに感謝だ。


今度図書館でもいってヴィクターのことも調べておこう。


結局戦闘スタイルについては考えがまとまらないまま、クロは眠りに落ちていった。

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