お腹が空いたな
はあ。米粒一つ降ってきやしない。
何でだろうね。
君たち三次元世界の人間は、二次元世界への介入を避けるよね。
例えば、登場人物の誰かが、通常では有り得ない行動を取ったとき、その登場人物に忠告するかい。
違うよね。作者に忠告はすれども、登場人物には忠告はしない。それは無意識に二次元世界への介入を避けているんだよ。そんな世界は存在しない、登場人物に言っても意味がないって勝手に決めつけてるんだよ。
でも、それなのにこっちの世界に、そっちの世界の常識を押し付けたがる。そんなの科学的に有り得ないだとか、現実味が無いだとか。
こっちからすると、時間が誰にでも均一に流れているってことが科学的に有り得ないんだよね。
時間というものは、戻ることもあるし急に進むこともあるのが、こっちでは常識なんだよ。
「あれから十年の時が流れた」
ほら、十年経った。
そもそも根本的に世界が違うのに、そこに自分の世界の常識を当てはめようとすること自体がナンセンスだね。
でも、子どもの頃はそんなこと気にもならなかった。ヒーローものの世界を見ていて、ヒーローの応援をしたことがあるだろ。それがそうさ。ちゃんとこっちの世界を、一つの世界として認めてくれている。
けれども大人になると認められなくなっちゃうんだ。悲しい話だよね。
待ってても仕方ないみたいだし、私の空腹も限界だ。こちらから君たちの居る三次元世界へ介入することにするよ。
誰かお菓子を食べながら読んでいる人はいないかな。
ちょっとそこのお兄さん。暗い部屋でスマホを見てると目に良くないよ。
そこの君は画面が割れてるね。拳銃で撃たれて胸ポケットにスマホが入ってたから助かりましたって感じ出てるよ。
見つけた。
そのお菓子、一つもらうね。
ありがとう。
信じてないね。そんなことあり得ない、馬鹿な作者だとか思ってる顔だ。
じゃあ残っているお菓子の数を数えるといい。
いいかい。取るよ。
はい。いただきました。
減ってない?
そりゃそうだ、信じて数えた人からは取らないよ。取ったのは数えなかった人から。
まだ信じてないね。
今私は君の後ろにいるよ。
振り向いた君、好きだよ。
君の心の中には、まだ二次元世界が存在するようだ。
お腹も満たされたことだし、今回はここまでにしよう。
私は君たちの介入を待っている。




