第94話 財布を拾う。
またしても、ウンコの努力は報われなかった。
もう、やる気がなくなってきちゃった。
薬草を少しだけかじって、
HPを1だけ回復させるとさ。
ふて寝を決め込むことにした。
路地裏は、日光が当たらないので、涼しい。
ウンコが気持ちよく、
寝返りを繰り返しているとさ。
背中に、なにか固い物が当たった。
その固い物は、がま口の財布だった。
早速、ウンコは中身をネコババするために、
がま口を開いた。
すると、がま口は手の平サイズから、
関取サイズに巨大化した。
「おおおおおおっ!」と興奮するウンコ。
がま口の中は、
なんと金貨のお風呂のようになっていたからだ。
おそらく、総額は300万Gくらいはあるだろう。
「ウッハー! ンッハー! コッハー!」
ウンコはガッツポーズ。
だが、ふむ。
もし、
ウンコが大金を持っていることがバレたらさ。
薄汚い人間どもに、即刻没収されてしまう。
ウンコはすぐさま、がま口を閉じた。
予想通り、がま口は手の平サイズに戻った。
「まさか、
ネコババするつもりじゃないでしょうね?
置き引きは犯罪ですよ。
絶対にダメですよ。ルルナさんにチクりますよ」
なんか、職証君がうるさいので、
がま口を開いて、職証君を中に放り込んだ。
職証君の声は聞こえなくなった。
どうやら、がま口の中は、
防音になっているようだ。
それに、手の平サイズにすると、
野球ボールくらいの重さになる。
金貨が30000枚くらい、入っているのにだ。
これは間違いなく、マジックアイテムだ。
がま口だけでも、相当の値打ちがあるはず。
よし、がま口ごと、ネコババ決定だ。
ウンコが最高の収納スペース(パンツの中)に、
がま口をしまうと、同時。
血相を変えたアゼレアがやって来た。
なぜ、姫魔女アゼレアが血相を変えているか?
その問いの答えを、ウンコは知っていた。
だって、がま口の表面にさ。
『あぜれあ』
と大きく名前が刺繍されていたんだもん。
「ウンコ、これくらいのがま口を見なかったか」
アゼレアが掌を見せながら、そう言った。
「知らない」
当然、ウンコはそう答えた。
アゼレアは路地裏に設置された、
ゴミ捨て場を探し始めた。
「ないないないない、ないないないない」
ないない病の末期患者のように、
涙目で、そう繰り返しながら、
アゼレアはゴミを漁る。
「あれは事業資金なんだ。
あれがないと不渡りを出してしまうんだ。
うえーん!」
ケチ魔女は泣き出した。
でも、ウンコは同情しない。
ウンコの境遇の方が悲惨だしさ。
会社とは、
2回目の不渡りにて、倒産するものだからさ。
今回は勉強代だと思って、諦めな。
ゴミを一通り漁り終えると、
アゼレアはブツブツ言い始めた。
「ここで、1Gを拾った時、
たしかに身をかがめた。
だから、身体が斜めになったはず。
落としたとしたら、その時以外考えられない」
どうやら、銅貨1枚を拾うためにさ。
がま口の中に広がる、
金貨風呂を紛失してしまったらしい。
大したケチ魔女っぷりだ。
「ウンコ、まさかとは思うが、
ネコババしていないだろうな?」
アゼレアはウンコを疑いだした。
さすが、ドケチだけあって、鋭い嗅覚だ。
「今なら、半殺しで許してやるぞ」
アゼレアは殺気をこめて、そう言った。
この嘘つきめ、全殺しの間違いだろう。
まあ、ウンコは『なかなか死ねない』からさ。
きっと首の皮が1枚だけ、
つながっちゃうだろうけどね。
とりあえず、疑いをごまかすために、
ウンコは言った。
「ウンコ、天に恥じること、一片もなし。
気が済むまで、調べてくれ」
「ああ、そうか。ならそうする」
アゼレアは、ウンコをパンツ1枚にするとさ。
ウンコのボロ服を徹底的に調べまくった。
腹時計で15分後。
アゼレアは絶望の表情で言った。
「なんで、見つからないんだ……?
口の中も耳の中も髪の毛の間も探したのに」
ぷぷぷ、見つからないのは、当然だ。
がま口は、
ウンコのパンツ(無敵)の内ポケットの中にある。
ウンコのパンツに内ポケットがあることは、
誰にも話していない。
まあ仮に、話したとしてもさ。
ウンコのパンツに手を突っ込む勇者は、
この世界に一人もいないだろう。
ケチ魔女の顔が、絶望に染まった。
「なあ、ウンコ。どうしよう?
せっかく、
『軽くて丈夫で安い、新型魔法生地の開発』
に成功したのに。
私、首を吊って、
死ななくちゃいけないのかな?」
そこまで言われると、
さすがに、かわいそうになってきたな。
仕方がないので、
ウンコは希望を与えることにした。
「あ、今、思い出したんだけどさ。
俺を半殺しにした後、勇者の奴がさ。
がま口っぽいものを拾って、
ネコババしたような気がする」
「本当か?」
アゼレアの瞳に輝きが戻った。
「ああ、本当のような気がする」
「おのれぇ! 勇者の奴めぇ!
ぶっ殺してやるぅううう!」
憤怒の表情を浮かべ、
アゼレアは走り去っていった。
憎しみだって、生きるエネルギーになる。
強く生きろよ、アゼレア。
そして、勇者を殺して、ウンコの仇を取るんだ。
こうして、金持ちになったウンコ。
これから、なにをしようかな?




