第93話 なり振り構わず。
こうなったら、なり振り構っていられない。
強盗になってやる。
強盗は1回だけでも、死刑もありうる重罪だ。
ふふ、ウンコをなめるなよ。
ウンコは知ってるんだ。
万引きでも強盗でも、
裁判になれば、
問答無用でウンコには死刑判決が出ることを。
だから、非道の限りを尽くしてやる。
「人の道に外れた外道になりますよ」
職証君がそう警告してくるが、上等だ。
ウンコはどこまでも堕ちてやる。
というわけで、ウンコはさ。
できるだけ、か弱そうな女の子を選んでさ。
路地に連れ込むと、ウンコを持って、脅した。
「金を出せ。持ってるなら食い物もよこせ」
女の子(人間)はガチで震えている。
もう一息だ。
「早く出さないと、
クソまみれのビチャビチャ便器にしてやんぞ」
ウンコはそう汚い言葉を吐くと、
女の子は涙目になった。
本当にもう一息だ。
トドメとして、
ウンコは必殺奥義『壁ビチャ』を放った。
忘れている人のために、一応説明するね。
壁ビチャは壁ドンの究極進化形。
ウンコを持つ手で壁ドンをして、
ウンコを壁にビチャっと叩きつけるのだ。
顔すれすれの場所で、ウンコが爆ぜる恐怖。
か弱い女の子には耐えられまい。
案の状、女の子は泣き出し、
ポケットから財布を取り出した。
「こ、これで許して下さい」
「ああ、許してやるよ」
ウンコは傲慢に、そう言ったが、
心中は申し訳なさで一杯だった。
ごめんね。
職業が強盗になったら、
ちゃんと利子をつけて返すからね。
ウンコは財布に手を伸ばした。
この財布をつかんだ瞬間。
ウンコは人の道を外れる。
そう思ったら、少しだけ、ためらってしまった。
背後から突然、声が聞こえた。
「魔物ウンコ、やめなさい!」
声の主は勇者セインだった。
勇者は、
ウンコと女の子の間に身体を入れると、言った。
「か弱き女性を傷つけるなど、
この勇者セインが絶対に許しません」
女の子は必死の声で、勇者に救いを求めた。
「助けて! 勇者様!
このウンコが強盗してきたんです!」
「本当ですか?」と勇者。
「ああ、本当だ」とウンコ。
もう、後には退けない。
クソを食らわば、便器まで。
俺は真剣に強盗を目指しているのだ。
勇者は剣を抜いた。
殺気を感じる。
こいつ、本気でウンコを殺す気だ。
勇者は言った。
「ミランダから聞きましたが、
貴方は魔物だそうですね。
かわいそうですが、
人間を害をなす魔物は
殺処分しなくてはなりません。
最後に何か言いたいことはありますか?」
「クソ食らえ!」
俺は至近距離から、ウンコを放った。
だが、超速反応で、勇者に回避されてしまう。
優雅とも呼べる、回避運動から流れるように、
勇者は必殺技を放った。
「勇覇雷牙斬!」
「ぎゃあああああああああああああ!」
雷を帯びた剣撃を食らって、ウンコは討伐された。
もう、ぴくりとも動けない。
「助けてくれてありがとう!
勇者様! カッコイイぃいいい!」
女の子は歓喜の声をあげ、勇者に抱きついた。
勇者が魔物を討伐して、女の子を救う。
これって、物語的に言うと、
典型的なハッピーエンドだよね。
でも、ウンコにとってはバッドエンド。
だって、ウンコが死んだと思って、
勇者と女の子が去った後。
物陰から監視していた職証君に、
今回の結果を聞いたらさ。
現在の職業はこんな感じ。
『汚い言葉を吐く、ド腐れ外道ウンコ』
ドチクソ野郎!




