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第92話 職業が変わった。

「ウン公! ウン公! ビッグニュースですよ!」


大声の方向に振り向くと、

職証君が走ってくるのが見えた。


「うるせえな、

 ウンコは今、考えことをしてんだよ」


ウンコがそう言うと、

職証君は巻物状の身体を広げた。


「これを見て下さい! 職業のところです!」


ウンコは目を疑った。


なんとさ。

俺の職業が『ウンコ』から、

『用心棒ウンコ』に変わっていた。


「一体、どんな偉業を成し遂げたんですか?」

興奮気味に、そう言う職証君。


「俺はただ、

 ハナ爺の店を守るために戦っていただけだよ」


結局、守れなかったけどな。


でも……


神はともかくとしてさ。


世界は公平に俺の行いを

評価してくれていたようだ。


もうちょっと、ガンバれば、

普通の用心棒になれたのかな。


少しだけ後悔するウンコ。


でも、そんな後悔、何の意味もなさない。


過去は過去、今は今、未来は未来。

過去には手が届かない。

今は常に消え去り続る。


この手が届くのは未来だけなのだ。


ウンコは未来を幸福色に染めるために、

ガンバることにした。


ハナ爺。

たぶん今のままではさ。

ウンコにとっての安住の地は、

どこにもないと思う。


だから俺は、自分の努力で作ってみせるよ。

ウンコですら幸せになれる、理想郷をね。


そのためには、

まず職業を変えなければならない。


この世界ではさ。

剣をたくさん作れば、鍛冶屋だと。

農作物をたくさん作れば、農民だと。


そう世界が職業を認めてくれる。


完璧な用心棒になるために、

ウンコは用心棒の仕事を探した。


だが、結果は散々だった。


書類審査の段階で落とされ、

面接にすら、たどり着けなかった。


その理由を説明するために、

ここでウンコのステータスをおさらいする。

 


名前 ウン公

LV 70 職業 用心棒ウンコ

性別 男  年齢 17

HP 8/8 

力1 身の守り1 素早さ5 魔力1

かっこよさ  マイナス445

ウンコの臭さ     545

所持金          0

装備 ボロ服(靴はなし)

   呪いのパンツ

  (防御力はゼロ。絶対に壊れない)

スキル   なかなか死ねない

 


まあ、これを見ればさ。

用心棒の仕事を探すのが、

不可能であることは明らかだろう。


用心棒には、

最低限の戦闘能力が求められるからね。


でも、ウンコはさ。

希望を見つけたから諦めない。


前向きに別のアプローチを考えてみる。


まずは、自己分析だ。


ウンコ、弱い。

ウンコ、臭い。

ウンコ、カッコ悪い。


なんか、泣きたくなってきた。


たぶん、どんな職業であってもさ。

正式な手順で就職を果たすのは、

ウンコには無理だ。


ウンコのステータスで、

書類審査をクリアするのは不可能なのだ。


書類審査を通さずになれる職業。


それをウンコはさ。

都市公園の菩提樹っぽい木の下で、

座禅を組みながら、必死に瞑想した。


ウンコの心の中は、

人間に対する憎しみで、醜かった。


でもさ。

心の奥底に1つだけ、キレイなものが見えた。


それは、女の子に対する愛だった。


愛のシルエットは、

どこぞの姫騎士と似ていたが、たぶん気のせい。


魔物であるウンコにも、まだ愛は残されていた。


よし、この愛で生きていこう。


そうウンコは悟りを開いた。



若者が多くあつまる、バラ熟通りにて。


ウンコは女の子に声をかけた。

「ヘイ、彼女、お茶しない」


「…………」

女の子は華麗なるスルーをかまして、

去って行った。


まあいい。

ナンパはプロでも、失敗するのが普通なんだ。


100回挑戦して、

1回成功すれば、

それで上出来なんだ。


ウンコは1000回挑戦することにした。


女千人斬りをして、ナンパ師に転職。


それが、ウンコが悟った答えだった。


でも、やっぱりスルーは辛いな。


ウンコが落ち込んでいると、職証君が言った。

「ガンバ、ウン公。まだ1人目ですよ」


「ありがとう、職証君。

 でもお前、宿屋に戻んなくてもいいの?」


「いいんですよ。

 あんな人間中心主義の店では

 働きたくありません。

 知っていますか、あの女主人。

 魔族の使用人を、

 最低賃金の半額の時給で働かせていたんですよ。

 私の日給も、貴方の宿代という、

 最低水準の金額でした。

 本当にムカつきますよね」


職証君は怒りを露わにすると、

『人間専用』のあの宿屋が、

なぜスラムにあるのかを教えてくれた。


最近、人間どもの間ではさ。


魔族が苦しむ姿を見て楽しむことが

ブームになっていて、


『貧困に苦しむ魔族を観察するツアー』の

宿泊地としてさ。


あの宿屋は商売しているらしい。


本当に最低だな。人間どもは。


「だから、私はもうあの宿屋に戻りません。

 それより、

 私はウンコが更正する

 歴史的瞬間を見たいんです」


職証君が毅然と、そう言い切ったからさ。

ウンコはそれ以上、なにも言わなかった。


まあ、俺なら正義を捨てて、

宿屋でぬくぬくするけどね。



2人目。

今度はキレイな言葉で攻めることにした。


ウンコはキタナイ語の名手だけどさ。


前の世界ではイケメン語の名手だったからだ。

「君の10カラットの瞳に乾杯」


結果……

熱々のコーヒー(特盛りグランデ)を

ぶっかけられました。


でも、諦めないぞ。

3人目だ。

もっともっとキレイな言葉で。


うん、これならどうだ。

「トゲのないバラ、それが君だ」  


結果……

トゲ付きメリケンサックで殴られました。


4人目。

「ああ、このままでは危険だ。

 俺は神ではなく、君を崇拝してしまう」


結果……

「なら、私の命令に従えるわよね」


「はい、ウンコは貴方の信者です」

「じゃあ、死んで」


「…………」

「お願いだから、死んで」


ウンコは逃げ出した。

 

それでも、ウンコは諦めない。

5人目。

今度は、

あまりタイプではない女の子に声をかけた。


ふふふ。

イケメンはな。

決して女の子を、ブスとは言わないのだ。


「見えないけれど輝いている

 昼間の一等星。それが君だ」


結果……

「星クズの貴方に言われてもね」


ちくしょう。

ブスにクズ扱いされた。


だが、俺は負けないぞ。

ウンコは、

持ちうるボキャブラリーの全てを駆使して、

イケメン語を唱え続けた。


そして、1000人目。


ウンコは、最高の言葉をひねり出した。

「永遠、それは僕と君にのみ許された……奇跡だ」


結果……

はどうでもあっても、悔いはない。


でも、一応教えておくね。

「なら、永遠に私の前から消滅して。

 当然、生まれ変わってからもよ」


こうして、ウンコは、

女1000人斬られを達成した。


晴天を仰ぎ見る。

俺はやるだけのことはやった。


世界はきっとウンコの努力を認めてくれるはず。

「さあ、職証君、身体を広げて見せてくれ」


「はい、ウン公」


俺は職証君の中身(俺のステータス)を熟読した。


そして、ウンコの現在の職業は、

『臭い台詞を吐くウンコ』でした。


これって、どう見ても悪化してるよね。 

クソ野郎。



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