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第91話 用心棒。

路上に打ち捨てられたウンコ。


だが、捨てる神あれば、拾う神あり。

熱々のウンコを拾う、

神のように高潔な御仁が現れた。


御仁は、山羊魔族の爺さんで、

その名はハナサカ。


ウンコを背負って歩きながらさ。


ハナサカ爺さんは

人なつっこい笑みを浮かべながら、言った。

「わしのことは、ハナ爺と呼んでいいぞい」


優しい声だった。

でも、荒んだ心のウンコには、

その優しさが信じられない。

「なんで、ウンコで魔物の俺を、助けるんだ?」


「ウンコも魔物も魔族もない。

 わしは、ただ、行き倒れている者を

 見捨てておけないだけじゃよ」


どうやら、ハナ爺は、

本当に神のように高潔な御仁だった。


どっかの幼女に見習わせてやりたいな。

 

ハナ爺の家に運ばれたウンコ。

ハナ爺の家はイースト・スラムにあって、

ボロボロだった。


臭えなと思いながら、

ハナ爺の加齢臭が染みこんだベッドにて、

ウンコは横になる。


一休みしてから起きると、

薬草のスープをご馳走になった。


HPが回復すると、

ウンコは傷ついた心を回復させるために、

再び寝た。


起きると、

ハナ爺の家がメチャクチャになっていた。


壺は倒され、タンス、クローゼット、

宝箱さえも開けられ、

『それらの中身全て』が空になっていた。


「何が起こったんだ?」

ウンコは茫然自失にそう聞くと、

ハナ爺は疲れ切った顔で答えた。


「地上げ屋どもが来たんじゃ。

 奴らが、わしの財産を持っていったんじゃ」


「勇者憲法第29条、その1。

 財産権は、これを侵してはならない。

 だから、

 財産の強制的な略奪はできないはずだろ」

 

ウンコの疑問に、

ハナ爺はため息をつくと、答えた。


「じゃがな。勇者一行はその例外でな。

 彼らは、壺、タンス、クローゼット、

 宝箱などの中身をな。

 それらがどこにあるものでも、

 好き勝手に徴収することができる。

 それが、この都市の不文律なんじゃ」


「そんな無茶苦茶な!」

ウンコは思わず叫んだ。


そんなのドラク○などの

RPG主人公限定の特権だと思っていた。


「で、勇者一行の誰が来たんだ?」

とウンコは聞くと、

「大戦士グレンじゃよ」

とハナ爺は山羊ヒゲをさすりながら、答えた。


大戦士グレン、大戦士グレン、大戦士グレン。

ウンコは心の中で、そう繰り返した。


よし、覚えたぞ。

後でルルナにチクってやる。


ざまあみろ。

これで勇者セインの好感度がストップ安だ。


勇者には仲間の監督責任がある。

連帯責任の不条理さを思い知れ。



それはさておき、ハナ爺の話によると。


大戦士グレンは、

都市最大の建設会社である

『大戦士建設』の社長でさ。


大戦士建設は現在、

大規模な土地買収を断行しているそうだ。


その目的はイースト・スラムの再開発。

30万人収容の巨大な競馬場の建設でさ。


周囲の住民(魔族)は、

ハナ爺以外の全員が、

端金を握らされて、立ち退いてしまったそうだ。


窓から、外を見ると、

確かに周辺は広大な更地になっている。


「奴らはまず銅貨袋で頬を叩き、

 それでも屈しない者にはグー拳で頬を叩く」

ハナ爺は青く腫れた頬をさすりながら、

そう言った。


「なんで非道なな……」

ウンコは憤りも露わに、そう言った。


「そうじゃ、奴らは常軌を逸しておる。

 お鍋のフタはおろか、

 ステテコパンツすらも持っていくんじゃからの」


いや、それはウンコも持っていく思う。


だって、ドラク○5ではさ。

お鍋のフタは20G、

ステテコパンツは5Gで売れるんだよ。


合計25Gあればさ。

薬草(1枚8G)を3枚買って、お釣りが出る。


薬草はウンコの冒険のマストアイテム。

1枚あれば3回も、

瀕死の状態から全回復できる。


「あんなもの、

 薬草3枚分ほどの価値しかないのにの」

ハナ爺はそう言うと、1階に降りていった。


ちなみに、ハナ爺のこの家。

1階は薬草屋で、

2階が居住スペースになっている。


1階から戻ってくると、

ハナ爺は薬草を大量に抱えていた。


「あんな奴らでも、商売物だけには手を出せん。

 だから、薬草だけはたんまりあるぞい。

 薬草のおかわりはどうじゃ?」


「うん。ハナ爺」

ウンコは孤児のように、大きくうなずいた。


薬草を10枚、ウンコは平らげた。


結果。

最大HPの30倍分、

ウンコのHPはオーバーキュアした。


ウンコは元気一杯になった。

そこに地上げ屋どもが、

釘バットを持って、やって来るのが窓から見えた。


おびえるハナ爺に、ウンコは言った。

「このウンコに任せておけ」


ウンコは受けた恩を忘れない。

2寝11草の恩なら、魔物だって忘れないだろう。


地上げ屋どもは当然、

汚らわしき人間どもで3人組だった。


3人とも、

黒スーツでグラサンのマッチョ男だった。


「あの中に大戦士グレンはいるか?」

とウンコが聞くと、

「いないぞい」とハナ爺は答えた。


「ならば、この用心棒ウンコの敵ではない」


ウンコ(魔物)

VS地上げ屋(人間ども)の戦いが始まった。


リングは、1階の薬草屋。

呼び鈴も鳴らさずに、

ズカズカと入り込んだ地上げ屋どもにさ。


ウンコは不意打ちをかました。

「クソ食らえ」

投げた3つのウンコは、

3人の顔にそれぞれ命中した。


「きゃああああああっ!」

地上げ屋どもは、

女みたいな悲鳴をあげて、逃げ出していった。


ぷぷぷ。

ウンコ、大勝利。


程なく、地上げ屋どもが洗顔を済ませて、

戻ってきた。


5人に数が増えている。

だが、ウンコは臆せず、ウンコを5個投げた。


ヒット嘔吐、ヒット気絶、ヒット嘔吐、

ヒット気絶、ミス。


しまった。1人外した。


その1人(多分リーダー格)が、

ウンコに向けて、釘バットを振り下ろした。


ウンコは回避を試みるも失敗。


凄まじい一撃だった。

間違いなく、

8(ウンコの最大HP)以上のダメージを受けた。


ウンコは動けなくなった。

リーダー格の男が2階に上がろうと、

階段を登り始めた。


その背中に、俺はウンコを投げた。

ウンコは後頭部に直撃した。


リーダー格の男は、

驚愕の顔で振り向くと、気絶した。


だが、それは驚愕に値することではない。

ここは薬草屋だから、薬草は沢山ある。


ウンコは店の薬草を食べて、

HPを回復させただけのことなのだ。

もちろん、ハナ爺の許可は出ている。


『なかなか死ねない』ウンコは薬草がある限り、

立ち上がり続ける。

不死身のウンコなのだ。


薄汚い人間どもめ。

これからが悪夢の始まりだ。



入浴や洗濯を済ませると、

地上げ屋どもは再び戻ってきた。


数も100人に激増していた。


ウンコ地雷やウンコバリケードやウンコ手榴弾で、 

ウンコは抵抗した。


悲鳴と失神が渦巻く、

クソでクソを洗う戦いの中。


ウンコは3日3晩、籠城し奮闘した。

薬草をかじりながら、

地上げ屋どもにクソをぶつけ続けてさ。


少しずつ、その数を削っていく。

精神的なHPがゼロになった奴は気絶し、

担架で運ばれていくんだけどさ。


奴らは適宜、

入浴や洗顔や着替えを済ませて心を癒やすとさ。

再び、店に戻ってくるんだ。


きりが無かった。


でも、ウンコはハクスラゲーで、

レアアイテム掘りに慣れているから、

ガマン適正大。


余裕だね。



でも、翌朝。

無情にも最後の薬草が尽きてしまう。


圧倒的な数の暴力に、蹂躙されるウンコ。

人間どもは憎しみに満ちた目で、

釘バットでタコ殴りしてくる。


ふざけやがって。悪いのはどっちだ。

他者の土地を強引に奪おうとする、お前らだろ。


他者の痛みを無視して、

自己の痛みだけを主張する。


そうやって、

先進国は植民地をいたぶってきたんだ。


ウンコは、手からウンコを出し続ける。


少しでも、この空間を臭くして、

奴らを苦しめるためにだ。

恥知らずにもさ。


人間どもはさらに激怒して、

金属釘バットを振り下ろしてくる。

まりのダメージに、

意識がもうろうとしてきた時。


ハナ爺が2階から降りてきて、叫んだ。


「もう、暴力はたくさんじゃ!

 戦争は何も産み出さない!

 こんな土地、もうくれてやる!

 じゃから、ウン公を殴るのは、

 もうやめてくれ!」


「だめだ……」

ウンコは息も絶え絶えに、そう訴えた。


「いいんじゃ、お主の命の方が大事じゃ。

 それに、わしはもう疲れた」


ハナ爺はそう答えると、

土地の権利書を地上げ屋どもに渡した。


地上げ屋どもは勝ちどきをあげて、去っていった。


用心棒の責務を果たせなかった、ウンコ。


そんな情けない魔物に、

ハナ爺は薬草を1枚買ってきてくれた。


薬草を3分の1食べて、

ウンコはHPを全回復させた。


これで、動くことができる。


ウンコは言った。

「これからどうするんだ?」


ハナ爺は言った。

「都市の外の荒れ地を耕して、

 そこで薬草を育てようと思うんじゃ」


「なら、ウンコも一緒に農作業をしたい」

ハナ爺は首を振った。


「やめておいた方がいいぞい。

 わしは奴らのブラックリストに

 載っているからの。

 勇者の仲間たちは、

 逆らった魔族には、

 死ぬまで嫌がらせを続けるんじゃ」


「その時は、俺が守ってやる。

 だから、俺も連れていってくれ」


ウンコはそう訴えたが、

ハナ爺は無言で首を振った。


こうしてさ。

ハナ爺は着の身着のままで、

この家を退去することになった。


別れ際に、ハナ爺は何かの種をくれた。

「これは、『永遠薬草の種』じゃ。

 植えれば永遠に薬草が生え続ける、

 魔法の種なんじゃ。

 ウン公や、もしも安住の地を見つけられたら、

 そこにな。

 この種を植えるんじゃよ」


安住の地。

ウンコにそんなものがあるのだろうか?


外を歩きながら、ウンコは1人考えた。

一瞬、ルルナの顔が浮かんだが、あり得ない。


あんな暴力女のそばが、

安住の地であってたまるか。


じゃあ、どこでなら、

ウンコは幸せになれるんだろう?


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