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第90話 基本的人権。

瀕死のウンコが路上で倒れている。


でもさ。

俺はウンコだから、誰も助けてくれない。


ああ、助けて。神様。

そう思った自分をバカだと思った。


だって、この世界の神はあの幼女だもん。


というわけで、助けて仏様。

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


ウンコが念仏を唱えていると、

「大丈夫か、ウン公?」


天から幼女の声が聞こえてきたが、

ウンコは無視した。


この幼女と関わると、ろくなことがないからだ。


でもさ。

無視したら、無視したで、

『この無礼者!』

って理屈で、雷を落とされるんだろうな。

 

そう思っていたら、再び幼女の声が聞こえてきた。

「本当に大丈夫か、ウン公……?」


何か様子が変だぞ。

ウンコを本気で心配しているような口調なのだ。


しかも、ウンコではなく、ウン公と呼んでいる。


「今、救急馬車を呼んだぞ。日本で言う救急車だ」

想像すらできなかった神の優しさに、

不覚にも、ウンコの瞳から涙があふれた。



腹時計で約5分後。

救急馬車は本当にやって来た。


『貴方は神を信じますか?』


地球では単なるキレイ事と化した、この問い。

だからこそ、

ウンコは今、高らかに宣言しよう。

「俺は神を信じます!」

 

救急馬車で搬送される俺。

今から、聖クロス僧侶病院に運ばれるらしい。


入国審査の時、

正門で10日間足止めされて、

その時に聞いた門番の話ではさ。


この病院の院長は、

魔王ネメアを倒した勇者一行の1人。

大僧侶ミランダ様だ。

なんでも、女神のように美しく優しい人らしい。


しかも、この病院ではさ。

若い女性僧侶スタッフが

直接回復呪文を唱えてくれるらしい。


回復呪文って気持ちいいんだろうな。

若い女性が唱えたものなら、なおさらだ。


意外なことだけど、ウンコ。

この異世界に来てから、

1度も回復呪文を唱えてもらっていない。


未体験の回復呪文にワクワク。


ウキウキと、期待に胸を膨らませているとさ。

救急馬車は、


聖クロス僧侶病院の搬入口に到着した。


搬入口では、

清楚な感じのメガネ美女が待ち構えていた。


「ミランダです」

美女はステキな笑顔で、

そう自己紹介すると、素手で握手を求めてきた。


「愛・アモーレ・ウンコ」

ウンコはそう自己紹介すると、

ミランダとガッチリ握手を交わした。


濃密な握手を終えると、ミランダが言った。

「それで、都民健康保険には入っていますか?」


「ぼったくりの保険料が払えないので、

 加入していません!」

ウンコがそう即答すると、

ミランダは手の平の皮を返した。


というか、肌によく似た色の手袋を脱ぎ捨てた。

ついでに、面の皮もはがれたみたいでさ。


鉄仮面みたいな無表情で、ミランダは言った。

「金のない方に用はありません。お帰り下さい」


ミランダは、

この世界ではお約束のクソ野郎だった。


でもさ。


ウンコは瀕死。


このままでは命が危ないかもしれないので、

ゴネた。


「都市住人なら全員、治療費は無料だろ!」


鉄面皮ミランダはこう答えた。

「健康保険に加入し、

 保険料払っている方だけが無料なんです。

 じゃないと、

 病院が無収入になって潰れてしまいます」


くっ、もっともなことを。

だがな。


「勇者憲法第25条。その1。

 すべての人間は

 健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利を

 有するだろ!

 それが社会権の中の生存権だろ!」


「なぜ、そんな高度な知識をウンコが……」

絶句するミランダ。


バーカ。ウンコの知性をなめるなよ。


ウンコはな。


正門にて、

入都審査で足止めされていた10日間の間によ。


門番に六法全書を借りて、

この都市の法律をガリ勉していたんだよ。


法律を制する者は人生を制する。


だから、地球ではさ。

弁護士が高収入で

ウハウハな生活をしているんだよ。


「瀕死じゃなく、

 まともな体調で人生を送りたい。

 これは間違いなく、

 最低限度の生活に値する欲求だよな」


ウンコの正論に、

ミランダは絶句したまま、もがき苦しみ始めた。


どうやら、こいつは、

あのケチ魔女級のドケチのようだ。



5分後。

ミランダは苦し紛れに言った。

「そもそも、貴方は人間なんですか?」


一人の人間として、ウンコは答えた。

「当然だ。生まれてこの方、

 人の道を踏み外したことはない」


「証拠を見せてください」

そう言われたが、

今、職証君は宿屋にて、労働中だ。


俺は天を仰いで叫んだ。

「俺は人間だ。そうですよね、神様」


神様のお墨付きを、俺は確信を持って待った。


今の神様はウンコの味方なのだ。


でもさ。


神のクソ野郎は、のたまいやがった。

「そやつは魔物じゃ」


「なんでですか? 神様!

 さっきまでは本当に優しい神様だったのに!」


ウンコがそう訴えると、

神様、ではなく幼女は答えた。


「いや、信じていた者に裏切られるほど、

 辛いことはない。

 と、昨日マンガを読んで学んだので、

 ちょっと試してみた」


確かにそのとおりだった。

今、ウンコの瞳から、

悔し涙がドバドバとあふれ出している。


ミランダが勝ち誇りながら、救急隊員に言った。

「元いた場所に返してきなさい」

 

救急馬車にて、元いた場所に戻されたウンコ。


実は、今は初夏で真昼。


路面を覆う石版は、

太陽の光を浴びて、

目玉焼きが焼けるくらいに熱い。


あまりの暑さにウンコが悶えていると、

天から、幼女の声が聞こえてきた。

「それでも、貴方は神を信じますか?」


ウンコは、最後の力を振り絞り、絶叫した。

「神は死んだ! 

 というか、いつか俺が必ずぶっ殺す! 

 1億倍返しだ!」


当然のように、

神の雷が落ちてきて、ウンコを貫いた。


でも、ウンコは負けないよ。



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