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第89話 勇者。

都市の中心、トラキア大通りにて。


すれ違った人間(男)にこう言われた。

「ウンコ、汚い、死ね」


ウンコがこのヴァイテガにいることは、

都市中の者が知っている。


正門の門番(1+2章に出てきたのと兄弟)が、

都市中に言い触らしたからだ。


『ウンコ=汚い→だから、死ね』

てな公式で、

人間どもはウンコを差別し、悪口を言う。


でも、まあいいさ。


人間>ウンコ。

これが世の理だからね。


俺が寛大な気持ちで、悪口を許すと、

今度はさ。

「ウンコ、汚い、死ね」

馬の顔をした人間(魔族)に、そう言われた。


この都市では、人間と魔族が共存している。


2年ほど前、

勇者セイン一行が魔王ネメアを倒した。


その際、

勇者セインは魔族の残党を皆殺しにせずに、

都市に受け入れた。


でも、勝ったのは人間で、負けたのは魔族。


必然的に、魔族が新参者として、

人間の社会に組み込まれる形になる。


結果として、人間と魔族の間に、

富の格差が生じ、

『人間>魔族』

という差別構造が出来上がっている。


この都市に住む、

魔族の大半は貧困にあえいでいる。


魔族たちは、

ウンコを罵ることでストレスを解消しているのだ。


仕方ないことだよな。

そう悟った俺は、馬頭の魔族を許すことにした。


ウンコ、マジ仏。


ああ、職業ブッダにならねえかな。


と思っていたら、後ろからさ。

差別を欠片も感じさせない、

気さくな声が聞こえた。


「あ、ウン公さん。おはようございます」


声の高さから推測すると、

声の主は女性のようだった。


この女性は、

差別根絶を目指す

人権派弁護士クラスの知性を持っている。


知性の高い女性は、ウンコの大好物。


この出会いに、ウンコは運命を感じた。

振り向き様に、

ウンコはキラースマイルを繰り出す。


でもさ。


声の主は姫騎士ルルナ(大バカ)だった。


ガッカリ。

それに、なぜかムカついた。

ルルナの隣に、男がいたからだ。


あれ、なぜか混乱してきたぞ。


ムカつく理由はハッキリしているのに、

その理由にムカつく自分がさ。

全く納得できないんだ。


男は超イケメンだった。

超サイ○人並みに、

反り返った黒髪に、宝石のついた額当て。

神秘と言えるほど、カッコいい剣と鎧と盾。


その姿は、万人の認める勇者のようであった。


「ルルナ姫、この御仁はどなたですか」

と超イケメン(勇者)は聞くと、


「ウンコのウン公さんですよ」

とルルナ(大バカ)は答えた。


「ほう、貴方があのウン公さんですか。

 私は勇者セインです。よろしく」


勇者セインは、ウンコに握手を求めてきた。


こいつ、性格も超イケメンだ。

声も超イケメンだし。


なんか、ウンコは焦ってきちゃったからさ。


なぜか、ウンコは言っちゃった。

「お前はルルナの何なんだ?」


「将来の夫です」

何の照れもなくセインはそう答えると、

なぜかルルナが弁解を始めた。


「ウ、ウン公さん、

 ち、違いますよ。

 彼はただの傭兵団の、どどど同僚です」


狼狽するルルナを見て、

ウンコはなぜか自信を回復した。


「貴方はルルナ姫の何なんですか?」

ほんの少しの焦りを含んだ声で、

セインはそう言った。


ウンコはスタンド使いのように、

ジョジョ立ちを決めて、答えた。

「将来の主人だ!」


「つまり、貴方はルルナ姫を妻にすると?」

とセインが言うと、


「本当ですか? ウン公さん!」

とルルナが少女マンガばりに、

目をキラキラさせて聞いてきた。


ウンコは即答した。

「いや、俺はルルナを肉奴隷にする。

 そういう意味での奴隷小屋の主人」


ルルナが汚物を見るような目で、言った。

「セインさん、このウンコは私にとって、

 ただのウンコです。

 それ以上でもそれ以下でもありません。

 存在自体が汚らわしいウンコです」


セインが抗議の叫びをあげた。

「こんな美しきルルナ姫を奴隷にするとは

 なんて卑劣な!

 貴方はルルナ姫の尊き価値が、

 まるで理解していない!」


俺も叫び返した。

「お前にルルナの何がわかる!」


「わかりますよ。貴方よりはね」

セインは詩を詠うように、語り出した。


「バラのように華やかな顔。

 柳のようにしなやかな腰つき。

 その美しさは、女神を嫉妬させ、

 薄命の定めを呪わせるほどに」


「なんて綺麗な言の葉の詩……」

ルルナがそう言いながら、

うっとりとした顔つきになった。


凄えムカついてきたので、ウンコは言った。


「なんですか、そのキレイ語は? 

 意味わかんないんですけど。

 ウンコでもわかるキタナイ語でお願いします!」


「汚い語とは?」

セインがそう問い返してきたので、

ウンコは正しいキタナイ語に訳してあげた。


「パエリアを食った後のゲロのように華やかな顔。

 小便アーチのようにしなやかな腰つき。

 その美しさは女神を嫉妬させ、

 ウンコの恋人になる定めを呪わせるほどに」


訳し終えると同時に、セインが激怒した。

「汚れなき乙女に対し、なんて下劣な! 

 魔王ルシファーに負けず劣らずの悪辣さだ!」


でもさ。


ウンコの方が激怒しているので、当然言い返した。

「なんですか、そのカッコイイ語は? 

 意味わかんないんですけど。

 ウンコでもわかるカッコワルイ語で

 お願いします!」


「んぐぅ、貴方のように

 低劣なボキャブラリーは私には……」

勇者セインは絶句した。


ウンコは勇者に大勝利。


超金星。

マジ最高。


だが、ウンコは逃走を図った。

ウンコよりも、激怒している存在がいたからだ。


その名は姫騎士ルルナ。

ルルナは、ウンコの首根っこをつかむと、

乱れ突きながら叫んだ。


「この大便クソウンコ! 

 この大便クソウンコ!

 この大便クソウンコ!」


ああ、なんてヒドい言葉なんだろう。


ウンコの3重表現(大便+クソ+ウンコ)なんて

聞いたこともない。


まさに、

キタナイ語とカッコワルイ語の

頂点に値する言葉だった。


ウンコを瀕死にすると、

ルルナは勇者の手を引っ張りながら、

去って行った。


その去り際にルルナがさ。

「でも、恋人の定めの部分は……」

と言った後に、ぼそりとさ。

こう呟いた。

「……うれしかったです」


聞き間違えだと思いたいが、

確かにそう聞こえた。

本当に聞こえたんだからね。


でも、誰も信じてくれないか。

俺も信じられないし。


ウンコの恋人が

うれしい女の子なんているはずがないんだ。


うん、やっぱ、聞き間違えだ。


この話題はこれにて終わり。

『第89話 勇者』も、これにて終わり。

続行は断固拒否する。


以上!


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