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第95話 株式投資。

やっぱり、

この都市でも、ウンコ差別はひどかった。


パンも宿賃(素泊まり)も、どれもこれもさ。


ウンコ特別価格で『9999G』なんだ。


これじゃ、普通の生活すら、

1週間もままならない。


ウンコは金を増やすことにした。


ヴァイテガは、

市場経済のシステムを導入していて、

株式市場がある。


だからさ。

株の売買で、

お金を雪だるま式に稼ぐことができるんだ。


ぷぷぷ。

ウンコは金貨の風呂を、金貨のプール。


いや、金貨の海にまで大きくするんだ。


そこで、お金に苦労しない生活をするんだ。

超絶美女と一緒にね。


もちろん、レバレッジはしないよ。

ウンコは堅実だからね。



ウンコは証券取引所に向かった。

時価総額(普通株式ベース)は約2兆G。


上場企業数は約1000社。

1日の売買高は約1200万株。

1日の売買代金は約8億G


そんな怪物的市場である

『ヴァイ証一部』を司る証券取引所。


そこは戦場だった。

「ドワーフ建設! 

 456Gで売り100株!」

「フェアリーミュージック! 

 1552Gで買い10株!」


売り注文や買い注文が怒号のような声で、

絶え間なく飛び交う。


超高速ブラインドタッチで、

職員たちがソロバンをパチパチ鳴らしている。


その結果として、導き出される株価はさ。


はしごに登った職員たちによって、

『大規模映画館のスクリーン大の黒板』

にチョークで、ビッシリと書かれている。

 

絶え間なく更新され続けてることもあってかさ。


株価を見ていると、目が回りそうだ。

忙しいのは承知の上で、ウンコ。


手近な職員に聞いた。

「ウンコ、株が欲しいんですけど」


「…………」

無視された。


「ウンコだけど、お金はあります」

「…………」

また無視された。


だからさ。


「ウンコだから、ウンコもあります」

ウンコ片手に、そう脅したら、

ようやく話を聞いてくれてさ。


「株は証券会社で買える」と教えてくれた。



早速、ウンコは証券会社に行った。

ここは、大魔法使い銀行の2階にある、

ダモフ証券。


受付窓口の数は10で、受付嬢は全員人間。

当然、

ウンコは1番カワイイ受付嬢のいる窓口に並んだ。


店の時計で30分後。

ついにウンコの番になった。


「株を買いたいんですが」

ウンコがそう言うと、受付嬢は


『本日の営業はこれにて終了致します』

というプレートを出して、去って行った。


他の窓口も同様のプレートを出して、閉鎖された。


投資家たちは、ウンコをにらみながら、

続々と去っていく。


そんな居たたまれない状況の中。


「金ならいくらでもあるぞ!」


ウンコがそう叫ぶと、

窓口の奥から、1人の老人(人間)が現れた。


「で、いくらあるんじゃ?」

開口一番、老人ジジイがそう聞いてきた。


ウンコは、がま口を開くや、すぐさま閉じた。


中に閉じ込めておいた職証君が

飛び出すかもしれないからね。


がま口の中に広がる金貨の風呂を確認すると、

老人は笑顔になった。


「わしの名前は、ダモフ・ガンダールじゃ。

 わしは金のある者を差別しない。

 よろしくな。ウン公」


老人はウンコに握手を求めてきた。

この老人、

金と差別のケジメがしっかりできている

人格者らしい。


ウンコは固く握手しながら、言った。

「貴方があの高名な大魔法使いダモフ殿ですか。

 勇者の仲間としての数々の伝説、

 寡聞なウンコでも耳にしております」


「ほっほっほ。そう持ち上げられると照れるの。

 で、どの会社の株が欲しいんじゃ?」


どの会社の株か……

ウンコは考えた。

高速かつ確実に儲けられる株が欲しいな。


ウンコは専門家じゃないので、素直に聞いた。

「どの株が、高速かつ確実に儲かりますか?」


ダモフ殿は肩をすくめて、言った。

「そんなものはありゃせんよ」


ダモフ殿は一転、眼光鋭く言った。

「じゃが、ほぼ確実に利益が出る株はあるぞい」

「どの株ですか?」


「わしら勇者一行の会社の株じゃ」


都市ヴァイテガには、

三つの巨大企業複合体がある。


大戦士グレンが代表であり、

大戦士建設を核とする、大戦士財閥。


大僧侶ミランダが代表であり、

聖クロス僧侶病院を核とする、大僧侶財閥。


大魔法使いダモフが代表であり、

ダモフ銀行を核とする、大魔法使い財閥。


ダモフの話では、

この三大グループの株は、常に高値安定。


伸び幅は非常に緩やかだけどさ。


株主配当を含めると、

年率で5%は確実に儲かるそうだ。


300万Gの5%は、150000G。


結構な金額だ。

でもさ。

「それじゃ足りません。

 ウンコが最低限度の生活を送るには、

 1日約4万Gが必要なんです」


この浪費癖ウンコめ。

そう思う人はいるかもしれないけどさ。


一日、パン3個食べて、宿屋で眠る、

最低限度の生活で考えてもね。


パン3個(普通は3G)

=ウンコ特別価格9999G×3

=2万9997G。


宿屋1泊(普通は10G)

=ウンコ特別価格9999G。

合わせて、約4万G。


ウンコは決して、

ゴージャスな生活を望んでいるわけではないのだ。


「さすがに、

 1日4万Gを稼げる銘柄はないのう……」


ダモフは困った顔でそう言うと、しばし思案した。


腹時計で約5分後。


ダモフは言った。

「じゃが、お勧めの株はあるぞい」


「どの株ですか? 

 この際、1日パン1個でも我慢しますから」


「アゼリッチ商会の株じゃ。

 新進気鋭の才女アゼレア姫が

 代表を務める魔法生地屋でな。

 株価の上昇が著しく、

 株主配当がなんと、月額10%じゃ」


ここで、ウンコは計算した。


現在のウンコの所持金=約300万G。

その10%=約30万G。


株主配当で、月当たり30個もパンが買える。

まとめ買いすれば、

1個ぐらい余分に買えるはず。


というわけでさ。

アゼリッチ商会の株を買えば、

ウンコは毎日パンが1個食べられる。


株価が2倍に上がれば、

パンが2個食べられる日も来るかもしれない。


その可能性は充分にある。


前会った時に、ケチ魔女はこう言っていた。

『全属性耐久、軽量、

 廉価の新生地の開発が成功した』とね。


「アゼリッチ商会の株を買えるだけ買います」

ウンコは即答すると、

がま口を開いて巨大化させた。


ダモフの力を借りて、

がま口をひっくり返すと、

大量の金貨と職証君が、床にこぼれた。


「どうなっても知りませんよ」

職証君がそう警告してくるけどさ。


ウンコは金貨を数えるのに夢中なので無視。


「本当に知りませんからね」

職証君はそう言って、去っていった。


だが、そんなことはどうでもいい。

金貨は全部で、ちょうど31000枚あった。


総額310万G(その10%=31万G)である。


よっしゃ。

まとめ買いしなくても、パンが毎日食べられるぞ。


「なら、この契約書にサインをしてくれ」

ダモフが流れるような速記で書いた契約書に、

ウンコは即座にサインした。


内容は確認するまでもない。

この老人は、

金と差別のケジメができているからだ。


「なら、これで契約成立じゃ。

 では、ウン公よ。

 アゼリッチ商会の株価が上がる様子を、

 証券取引所に一緒に見に行くかい?」


「はい、ダモフ殿!」



ウンコは、ダモフと一緒に馬車で移動した。


こうして、ウンコは証券取引所に再降臨した。


今回はダモフが一緒なので、

職員全員が起立し、ウンコに敬礼をした。


超気持ちいい。


アゼリッチ商会の株価は現在、3000G。


証券会社の代表取締役であるダモフは、

「アゼリッチ商会。3000Gで買い1100株」

と声高らかに言うと、

一呼吸置いて、絶叫した。

「ウンコがな!」


証券取引所全体がシーンと静まりかえった。

売買注文の声も、

ソロバンを叩く音も、

黒板にチョークを走らせる音も消えた。



30分後、静寂は破られた。


「アゼリッチ商会! 

 3012Gで売り70株!」

「アゼリッチ商会! 

 2987Gで売り150株!」

「アゼリッチ商会! 

 2928Gで売り350株!」


アゼリッチ商会の株に、

怒濤の勢いで、売り注文が浴びせられる。


見る見るうちに、

アゼリッチ商会の株価が落ちていく。


おそらく、ウンコが株を買ったということがさ。


不安材料として、市場に受け止められたんだ。


そうに決まっている。


だって今。


外では、ヴァイテガ経済新聞の社員が、

「号外! 号外!」と叫びながら、


『ウンコ、株を買う。

 アゼリッチ商会、倒産の危機か?』

という表題の記事をばらまいている。


現在、株価は半額の1500Gにまで、

落ちてしまった。


「なんで、ウンコが株を買ったことを

 バラしちゃったんですか?」


ウンコがそう聞くと、

ダモフは全く悪びれる様子もなく、答えた。

「うっかりバラしてしもうた。

 年かもしれんのう。ほっほっほ」


「笑ってる場合じゃねえだろ、じじい! 

 クソをぶつけてクソじじいにしてやんぞ!」


俺はウンコを召喚して、ダモフに見せた。


だが、ダモフは動じない。

「ほっほっほ」


くっ。

さすが勇者の仲間だけあって、

脅しは通用しないか。


ああ、どうしよう? ああ、どうしよう?


そうウンコが混乱している間にもさ。

ゼリッチ商会の株価は下がり続け、

ついに100Gの大台を割り込んだ。


「ウン公よ。今から話すことをよく聞くんじゃ」


ダモフが真面目な顔になって、諭すように言った。

「不運じゃがのう。

 このままではアゼリッチ商会は確実に倒産し、

 株式は紙くずになる。

 

 だから、これから、

 お主は損切りをしなければならん。

 

 損切りとはな。

 損失を最小限に抑えるためにな。

 損をするのをわかっていながら、

 株を手放すことじゃよ。

 

 ウン公よ。全てを失うか。

 それとも、わずかではあるが、

 手元に金を残すか。

 答えは考えるまでもないじゃろう?」


ダモフの言うことはもっともだ。

優秀な経済人は総じて、損切りの決断が早い。


優秀なウンコは即断した。

「株を全て手放します」


ダモフは即座に叫んだ。

「アゼリッチ商会! 10Gで売り1100株!」


ダモフは今回も、こう付け加えた。

「ウンコがな!」


だが、今回はそれで終わらず、

ダモフは更に言葉をつないだ。


「アゼリッチ商会!

 9Gで買い10000! 

 ダモフ証券がな!」


ウンコが株を売ったこと。

それと、

業界最大手のダモフ証券が株を大量購入したこと。


この2点が市場に好材料と判断され、

株価は急反発した。


疾風怒濤破竹の勢いで、株価が上がっていく。


外では、経済新聞の社員が、

「号外! 号外!」と叫びながら、


『ウンコ、株を手放す。

 ダモフ証券、大量買い。

 アゼリッチ商会、

 本日中に、魔法生地の最新作を発表か?』

 という表題の記事をばらまいている。


「アゼリッチ商会! 

 1500Gで買い15000株!」


ダモフはなおも、株を買い増し続けている。


「ダモフ殿、俺もアゼリッチ商会の株を買う」

ウンコはそう言っただけどさ。


「お主が買うと、株価が下がるから嫌じゃ」

ダモフにそう一蹴された。


結局。

株価は、元の3000Gに戻ったところで安定。


ダモフは買い注文をやめると、

ホクホク顔で言った。

「ぬひひひ、ウンコのおかげで儲かったわい」


ここでようやく、

ウンコは、だまされたことに気づいた。


ちくしょう。何が月10%の配当だ。


ウンコの悲惨な境遇を利用して、

金儲けしやがって。


「だましたな!」

と俺がウンコ片手に責めると、


「だまされた方が悪い!」

とダモフは開き直った。


「だます方が悪いに決まってるだろ!」


「あ、ちなみにな。

 株価が下がっていた時も、

 百倍レバレッジで空売りをして、

 稼がせてもらったぞい。

 

 それと、外で、号外を配っている奴はな。

 大魔法使い財閥傘下の、

 大魔法使い経済新聞社の社員じゃ。

 

 まあ、つまり、わしの部下というわけじゃな。

 ほっほっほ」


ちくしょう! 

何もかもが計算づくだったのか。


これは投資詐欺だ! 

ダモフは最低最悪のインチキじじいだ。


「この極悪人めぇえええ!」

ダモフを成敗するために、

俺はウンコを振りかぶった。


同時に、後方から声が飛んできた。

「極悪人はお前だぁあああ!」


声と共に飛んできたドロップキックを食らい、

ウンコは吹き飛ばされた。


声とドロップキックの主は姫魔女アゼレアだった。


そのそばには、

姫騎士ルルナと勇者セインと職証君がいた。


アゼレアは不動明王みたいな顔で言った。

「お前が、私の金を盗んだと、

 職証君が教えてくれたぞ」


ウンコは連続攻撃の危機を感じた。

薬草の切れ端を口に含み、

その4分の1を飲み込む。


HPを回復させたウンコは、立ち上がって言った。

「俺は盗んでいない。俺とその紙切れ。

 お前はどっちを信じるんだ?」


「もちろん、職証君だぁあああ!」

アゼレアのコブラツイストが、

ウンコに炸裂した。


ウンコは、

口中の薬草を3分の1飲み込むと、言った。

「俺は盗んでいない、盗んだのは勇者だ」


「いいえ、神に誓って、私は盗んでいません」

と勇者セインは言うと、


「神も勇者の潔白を保証するぞ」

と天井から、神の声が響いた。


ち、幼女め。余計な真似を。


だが、まあいい。

俺はアゼレアとの絆を信じる。


「さあ、ウンコと勇者&神、どっちを信じる?」


「もちろん勇者&神だぁあああ!」

アゼレアのアルゼンチンバックブリーカーが、

ウンコの背骨を逆V字に曲げた。


まあ、当然だよね。

実際、盗んだのはウンコだしね。


でもさ。


ウンコ以上の悪がこの場にいる。

ウンコは口中の薬草を2分の1飲み込むと、

言った。


「アゼレア、よく聞いてくれ。

 本当の悪は、ダモフだ。

 

 奴は、アゼリッチ商会の株を、

 ウンコを利用して操作した。

 

 そんな不当な株価操作で、

 巨額の利益を出して、

 お前の会社を乗っ取ったんだ」


「本当ですか? ダモフ老?」

アゼレアがそう言うとさ。


ダモフは急に老人っぽく、

背筋を曲げて、弱々しくなった。


「ち、違うぞい。

 わしはただ……

 アゼリッチ商会を潰したくなかったが故に、

 必死に株を買い支えただけじゃ」


「この嘘つきめ。旅の仲間と勇者の仲間。

 どっちを信じる?」


ウンコは信じた。

アゼレアに真実を見抜く眼力があることを。


だが、結果は無情だった。


「勇者の仲間だぁあああ!」

アゼレアのバックドロップが、

ウンコの頭を床に叩きつけた。


こうして、アゼレアの説得に失敗し、

ウンコは瀕死になった。


もう、薬草を飲み込むのも、しんどい。


追い打ちをかけるように、

勇者がウンコに手錠をかけてきた。


「魔物ウンコ。

 窃盗とインサイダー取引の容疑で逮捕します」


まあ、窃盗はともかくとして。


どうやらさ。

『アゼリッチ商会は、丈夫で軽くて安い、

 新型魔法生地の開発が成功した』


この事実を知った上で、株を買ったことがさ。

インサイダー取引に当たると判断されたらしい。


ちなみにインサイダー取引とはね。

株価に重大な影響を与える重要情報を

知りながらさ。


その重要情報が公表される前に、

株を買うことだよ。


罰則は、5年以下の懲役。

もしくは5万G以下

(日本では500万円以下)の罰金。


それと、得た財産

(投資金額と利益)の没収だよ。


よい子のみんな、これでよくわかったよね。


絶対に、

インサイダー取引なんてしちゃダメだからね。


「さあ、立ち上がって、さっさと歩きなさい」

勇者はそう言うが、

ウンコは瀕死だから動けない。


「仕方ありませんね。私が運びます」

勇者にお姫様抱っこされながら、

ウンコは連行された。


ウンコは泣きながら、

旅の仲間たちに慈悲を乞うた。

「た、助けて、みんな」


アゼレアは犯罪者を見るような目で、言った。

「お前は、もう、縁もゆかりもない赤の他人だ」


ルルナは軽蔑を露わに、言った。

「もう、絶交です」


最後に、職証君が身体を広げた。


その職業欄には、

今のウンコの真実の姿が書かれていた。


『汚い金でギャンブルをして、

 かけがえのないものを失ったウンコ』


ウンコは最後の力を振り絞って、

口中の薬草を全て飲み込むとさ。


心の底から後悔した。


ごめんなさい。

シクシク。


と見せかけて、

ウンコは逃走を図ったんだけどさ。


まあ、当然失敗して、

ボコボコにされましたとさ。

 


この後。

ウンコは裁判所で裁判を受けた。


ウンコは素直に罪を認めた。


そして、ダモフの株価不正操作を必死に訴えた。

「せめて、調査を。

 ダモフが今回の事件で大儲けしたの明白なんだ」


だが、全く取り合ってもらえなかった。


ウンコが何度も訴えてもさ。


裁判官は機械的な声で、

こう繰り返すばかりだった。


「ダモフ老は模範的なトレーダーです。

 調べるまでもありません」


どうやら、世界は変われども。

財界のドンは法で裁けないのが、世の常らしい。


一巻きのウンコとして、悔しいぜ。

以上。


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