第78話 復讐の果てに……
3日後の朝。
俺は、王都ホーオーの正門の前にたどり着いた。
扉は閉ざされている。
門番はいない。
どうやって、中に入ろう?
死んだはずのウンコが戻ってきたとあればさ。
薄汚い人間どもはおそらく、
『ウンコゾンビ』として、俺を処分するはずだ。
まさに『臭い物にはフタ』。
この言葉は、
人間の醜い本性を如実に現した、
至高の名言である。
策が見つからず、近くの茂みに隠れていると……
突如、正門が開いた。
1台の馬車と、
たくさんの人間どもが外に出てきた。
全員赤い頭巾を被っている。
外へと旅立つ馬車を、
人間どもは、『万歳三唱』で見送った。
そのドサクサに紛れて、
俺は王都内に侵入することに成功した。
ふふふ。
これから、俺は人間どもを虐殺する。
だが、腹は減っては戦は出来ぬ。
ウンコは3日飯を食ってない。
まずは腹ごしらえだ。
俺はパン屋に入った。
客はいない。
中にいるのは、
人間の女『店員・推定17歳』だけだ。
俺は陳列されているパンを1つ、
鷲づかみにして食べた。
女が俺をじっと見ている。
当然、俺はさ。
女の子が悲鳴をあげたり、
文句を言ったりしたら、殺すつもりだ。
俺は女を、脅すようににらみつけた。
女は、さっと目をそらした。
問答無用と言わんばかりに俺はさ。
パンを手当たり次第に食べ漁った。
ふう、腹がふくれた。
でも、喉が渇いた。
なんか飲みたいな。
そう思っていたら、女がやって来た。
「コーヒーはいかがですか」
女がくれた温かいコーヒーを俺は飲んだ。
薄汚い人間どもめ。
そこまでして生き残りたいか。
それとも、
コーヒーの中に入った毒薬で、
俺を殺すつもりか?
ふふふ、愚か者め。
ウンコに毒は効かない。
小娘の奸計をあざ笑うように、
俺はコーヒーを一気に飲み干した。
そして、言った。
「うまい。おかわり」
「かしこまりました」
女はそう言って、店の奥へと走り出すと、
すぐにコーヒーを持って戻ってきた。
俺は再びコーヒーを一気に飲み干した。
ふう、喉の乾きが止まった。
特別に、貴様を殺すのは後回しにしてやろう。
俺は店を出るために、ドアを開いた。
「待って! 貴方のお名前は!」
女はそう言って、俺を呼び止めた。
俺は魔王にように、ニヒルに答えた。
「我が名はウン公。復讐にその身を捧げた鬼だ」
女の子は悲鳴をあげた。
「きゃああああああああああああっ!」
ふふふ、ウンコの恐ろしさ。
思い知ったか。
それから、俺は武器屋に行った。
ガルド武器商店ではなく、
小さな店で、客はいない。
いるのは、女が1人『店員・推定25歳』だけだ。
「殺されたくなかったら、武器をよこせ」
俺は低く押し殺した声で、そう言った。
「女殺しの貴方になら、殺されても構いません」
女の子はそう言った。
何言ってんだ、こいつ?
自殺志願者か?
俺は訝しげな視線を、女に向けた。
女は急に慌てだした。
「さ、さっきの言葉は忘れて下さい。
ぶ、武器ですよね? なんでもどうぞ」
店で一番高い剣を俺は手に取った。
だが、ウンコは武器を装備できない。
すぐに刃が溶解してしまった。
「神のクソ野郎が!」
そう怒声をあげて、俺は剣を床に叩きつけた。
もはや、ここには用はない。
店を出ようと、
俺はドアを開くと、女が俺を呼び止めた。
「また、来てくれますか?」
なぜか、女の子はモジモジしている。
さては、罠をはって待ち構え、
再来店した俺を殺す気だな。
俺は豪傑のように、豪胆に笑いながら言った。
「我はどんな障害があろうとも、
必ず、再びここを訪れる。
貴様を殺しにな!」
女の子は悲鳴をあげた。
「きゃあああああああああ!」
ふふふ。
この女には、もはや2度と安眠は訪れまい。
武器屋を出ると、
俺はたくさんの女の子に囲まれた。
「「「キャー! キャー! キャー!」」」
ふふふ。
みんな悲鳴をあげている。
恐怖に狂い死ぬがいい、人間どもめ!
「あの、これに……」
1人の女『推定15歳』が怖ず怖ずと、
俺にペンと色紙を渡してきた。
「サインをお願いします!」
女は『く』の字に身体を曲げて、懇願している。
気持ち悪いくらい、必死だ。
この小娘。
死後の裁判所に行った時。
『魔王サタン』に俺のサイン色紙を渡して、
『地獄行き』を免れるつもりだな。
なかなかの知恵だ。
確かに今の俺は、究極の悪。
サタンは俺を、無二の盟友と思っているはずだ。
俺はサインをしてやった。
すると、他の女たちも、
俺にサインを求めてきた。
この薄汚い人間どもめ!
天国に行くためならば、
悪に堕ちることもいとわないか!
「あの、私と……」
1人の女『推定45歳』が怖ず怖ずと、
両手を差し出してきた。
「握手をしてください!」
女の子は『く』の字に身体を曲げて、
懇願している。
気持ち悪いくらい、必死だ。
このオバハンめ!
ウンコに魂を売ってまで、生き残りたいか!
その代償、高くつくぞ。
俺は握手をしてやると、
残虐に笑いながら、言った。
「これで、貴様は我の眷属となった。
もはや、貴様。
他の男と交わること、叶うまい」
女は悲鳴をあげた。
「きゃあああああああああ!」
バカめ。
後悔しても、もう遅い。
ウンコの臭いは、
既に貴様をむしばんだのだからな。
「「「ズルい! 私も握手をお願いします!」」」
薄汚いメス豚どもは、次々と握手を求めてきた。
仕方がないので、
俺は政治家並のスピードで握手をしてやる。
だがさ。
このドアからも、
その路地からも、あの通りからもさ。
「「「私も」」」「「「私も」」」
「「「私も」」」「「「私も」」」
現在進行形で、
女どもはどんどん集まってくるんだ。
まるで、ウンコにたかるアリのようだ。
これじゃ、いくら握手しても、キリがない。
このままでは、同志の無念は晴らせない。
どうしよう?
そこに、ルルナと職証君がやって来た。
ちなみにルルナのバカはさ。
姫騎士の名を汚した罰として、戦争には参加せず、
『病院でボランティア』をしていた。
職証君は当然、
『ウンコの巻き添えになりたくない』
という理由で、ルルナの傍にいた。
「よいしょ、よいしょ」
人混みをかき分けて、
ルルナが目の前にやって来た。
「やはり、我が野望の前に立ちはだかるか!
姫騎士ルルナよ!
はああああああっ!」
俺は闇のオーラを、極限まで高めた。
なのにさ。
「はあ?」
ウンコをなめているのか、ルルナの奴はさ。
剣を抜かず、無防備に顔を近づけてきて、言った。
「それにしても、信じられません。
別人にしか見えません。顔は同じなのに」
俺は、裏ボスのような威厳で答えた。
「ふはは、俺は闇の波動に目覚め、
復讐の鬼神、最強の悪魔となったのだ!」
足下から、職証君の声が聞こえた。
「ウン公、貴方は最強になんてなっていませんよ」
えっ?
「だって我は、
真っ赤な復讐のオーラに包まれたのだぞ」
「それは、神ミミックがくれた
『反転の紅宝珠』の魔力です。
よく聞いて下さい。
貴方のステータスは反転したのです」
そう言うと、
職証君は俺のステータスを読み上げてくれた。
「名前 ウン公
LV 70
職業 ウンコ
性別 男
年齢 17
HP 8/8
力1 身の守り1 素早さ5 魔力1
かっこよさ 445
ウンコのかぐわしさ 545」
確かに、俺のステータスは反転していた。
変更部分を要約すると、
以下の通り。
『かっこよさ・-445』
→『かっこよさ・+445』
『ウンコの臭い』
→『ウンコのかぐわしさ』
俺は信じられず、
試しにウンコを1個召喚してみた。
「あああ、なんて良い香り……」
女どもは恍惚の表情で、そう言った。
そして……
「「「これは私のよ!」」」
「「「いいえ、私のよ!」」」
ウンコをめぐって、
女どは血みどろの争いを始めた。
むふふ、俺。
究極イケメン人に返り咲いちゃった。
というわけで……
ウンコ、復讐、や~めた。




