第100話 女を泣かせる。
「ウン公♪ 友達♪ ウン公♪ 友達♪
ニャニャ~♪」
ミーニャが俺の腕に抱きつきながら、
歌を歌っている。
萌え系の声でさ。
しかも、音程がちゃんととれているから、
耳に心地良い。
でも、これからどうしよう?
さっき、職案に行ったら、入り口にさ。
貼り紙が貼ってあった。
『ウンコとゲリー・ブリットはお断り』だってよ。
もうじき、
ズキンがこのヴァイテガにやって来る。
それまでに、
真っ当な職に就かないといけないのに。
「もう1人じゃないニャ♪
2人合わせりゃ最強ニャ~ズ♪」
ミーニャはノリノリで歌い続けている。
こいつは気楽でいいな。
ウンコがそう思っているとさ。
トラキア大通りを猛烈な勢いで、
ルルナが走ってきた。
両のかかとで踏ん張るように、急制止すると、
ルルナは叫んだ。
「そのウンコから離れなさい!」
ルルナは興奮していた。
呼吸が荒く、額は玉のような汗で、ビッショリだ。
「なんか、必死な感じが怖いニャ」
ミーニャが怯えている。
俺は安心させるために、言った。
「問題ない、
こいつは『バカ騎士道』を
頑なに守るバカだからな」
「そうニャのか、なら、全然怖くないニャ」
「違います! 姫騎士道です!
それに私はバカじゃありません!」
ルルナはプンプン怒り出した。
「で、ルルナ。俺に何のようだ?
絶交したはずじゃなかったのか?」
俺がそう言うと、ルルナはそっぽを向いて言った。
「そうですよ、ウン公さんとは絶交しました。
だから、私はその姫猫に話があるんです」
「で、この姫猫のなんの話があるんだニャ?」
尊大な口調の『元』姫猫のミーニャにさ。
ルルナが深刻な口調で言った。
「忠告です。このままだと、
『ウンコ3大疾病』になりますよ」
「ウンコ3大疾病とは何だニャ」
「その1、ウンコ中毒。体臭がウンコになる」
うわあ、加齢臭よりも100倍悲惨だ。
「その2、ウンコ感染症。口からウンコが出る」
うわあ、それじゃ、便器にゲロ吐く姿勢で、
ウンコしなくちゃいけないじゃん。
「その3、ウンコ症候群。
寝ている間に、ウンコが出る」
それって、ただ単に、お漏らしだよね。
こんな戯れ言。
誰が信じるんだよ。
だが、ボケ猫は、
すっかり信じ込んでしまったようだ
「嫌だニャ~! 怖いニャ~! 助けてニャ~!」
ボケ猫は半狂乱に泣き叫んでいる。
「なら、ウン公さんに二度と近づかないで下さい」
ルルナは命令口調で、そう言った。
「えっ……? そ、それは……、嫌だニャ……」
ミーニャは辛うじて拒絶を示した。
「なぜですか? 死にますよ!」
「死ぬか! バカ騎士!」
俺はそう叫ぶと、ルルナの頭にチョップした。
ルルナは両手で頭を抑えながら、ブツブツ言った。
「死ぬんです~。女の子なら、
恥ずかしさで死んじゃうんです~」
なんだよ。その屁理屈。
とりあえず俺は、
ミーニャを落ち着かせるために言った。
「今までの言葉は全て、
バカ騎士のバカ故の戯れ言だ。気にするな」
「ニャら、なんで、ニャるを怖がらせたのニャ?」
「そ、それは……」
ミーニャの問いに、言葉が止まるルルナ。
言葉を継いだのはミーニャだった。
「嫉妬だニャ。
このバカ騎士は、
ウン公とニャるが仲良しなのに、
嫉妬しているんだニャ」
ルルナは首をフルフル振って、否定した。
「ち、違います。嫉妬なんかしていません。
姫騎士道その11。姫騎士は嫉妬しない。
だから、嫉妬なんかしていないのです」
久しぶりに出てきたな。姫騎士道。
だが、ルルナよ。
お前の理屈には、重大な欠陥があるぞ。
俺は言った。
「でもさ。姫騎士道その502改。
ただしウンコは例外とする。だろ?」
ルルナは苦しげに答えた。
「くっ……でもそれだけでは、
私は嫉妬しているとは証明できないはず……」
「だが、
嫉妬している可能性は存在するわけだよな?」
「た、確かに、文脈ではそうなります」
「なら、俺はその可能性を信じる。
たとえ、1%未満でもな!」
「ニャるもその可能性を信じるニャ!」
「おお、お前も信じてくれるか!
姫猫ミーニャよ!」
ウンコにたかるハエのような動きをしながら、
ウンコと姫猫は言った。
「「や~い、嫉妬ルルナ。
や~い、嫉妬ルルナ。や~い、嫉妬ルルナ」」
ルルナは両目にブワっと涙をあふれ出させるや、
「ウン公さんのバカぁあああああああああっ!」
と叫びながら、走り去っていった。
こうして、ウンコは見事にバカ騎士を撃退。
久方ぶりの勝利の余韻に浸っていると、
新たなる敵が来襲。
トラキア大通りを猛烈な勢いで、
アゼレアが走ってきた。
全くスピードを落とさずに、
アゼレアはタックルをぶちかましてきた。
押し倒されたウンコは、
ケチ魔女に襟首をつかまれる。
「がま口を返せぇ! 返さないと殺すぞ!」
アゼレアはそう脅してくるけどさ。
ウンコはルルナに勝利した直後だから、
自信満々で、超余裕だ。
「暴力は止めて下さい。で、貴方は誰ですか?」
「私を忘れたのか? クソウンコめ!」
アゼレアは激怒し、
炎をまとった右手を振り上げた。
「覚えてますよ。貴方、私と絶縁しましたよね。
私のことを、縁とゆかりもない赤の他人。
でしたよね」
「んぐぅ、ウンコのくせに小賢しい物言いを……」
「ですから、
その振り上げた拳をお下げください。
それとも貴方……」
ウンコはニヤリと笑った。
「縁もゆかりもない、
当然恨みなんて存在し得ない、
赤の他人を殴るつもりですか?」
アゼレアは涙目になった。
「殺すぞ返せ!
あれはパパからもらった、
初めての誕生日プレゼントなんだ!」
「嫌です。それに残念ながら……」
ウンコはパンツの中の内ポケットを指さした。
「がま口はこの中にあります。
欲しければどうぞ、勝手に奪って下さい。
でも貴方に……」
ウンコは一喝した。
「ウンコのパンツの中に、
手を入れる覚悟はありますかぁ!?」
アゼレアは、
両目にブワっと涙をあふれ出させるや、
「ウンコのクソ野郎ぅうううううううううっ!」
と叫びながら、走り去っていった。
またしても、ウンコ大勝利。
ガッツポーズを決めるウンコに、ボケ猫が言った。
「天晴れウン公。大した女泣かせニャ」
その通り、俺は天性の女泣かせ。
泣かした女は数知れず。
この調子で女を泣かせ続けて、
『女泣かせ』にジョブチェンジしてやるぜ。
ヒャバババ、ヒャバババ。




