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野球少年
「野球、好き?」
少年は驚いた顔をして、すぐ大きく頷いた。
よく見ると、包帯が巻かれている左手には、野球ボールが強く握りしめられていた。
「手、怪我したの?」
私は、ゆっくり彼の前に座った。
「…有鈎骨?の疲労骨折だって。練習のやりすぎでなるって…。大会近いのに、なんで今なんだよ…。」
うつむき、小さな肩が震えるその姿を見て私は思った。
私の願い、今使わなくてどうする。
そこに迷いはなかった。
「ごめんね。痛いかもしれないけど、左手握ってもいいかな。」
「え、うん…。」
そして、左手を握り、目をつむり、私は強く願った。
「私の左手の有鈎骨の機能を彼に渡してください」
目を開け、手を離した。
「どう?」
「え、なんで、痛みが無い…。」
「ボール握ってみて。」
驚きながら彼はボールを握り、その後、嬉しそうな顔へとすぐに変わった。
「え、なんで?お姉さんは魔法使いかなんかなの?」
くすっと笑い、私は、
「このことは内緒ね。大会頑張ってね。」
と言葉を残し、病室へ向かった。




