お互いに
それから、私はその場から静かに離れた。
これ以上近くに居れば、私は、彼のことを本気で好きになってしまう。
車椅子を動かし、ゆっくりとその場を去った。
家に帰るまでが、時間も距離も、こんなに長いなんて初めて知った。
それにしても、なんで…。
なんで私、好きだなんて言っちゃったんだろう…。
怖かっただろうな、あの人…。
いやでも、あの人も好きって、どうゆう…。
トントン。
私は、かなり驚いた。
誰に肩を叩かれたのか分からなかったから。
まだ、慣れないな…この生活…。
怖かったけど、振り向いてみた。
すると、そこにはあの人が居た。
かなり息切れをして。
走ってきてくれたの…?
私は、息切れをするこの人に、自分の飲み物を渡すことしか出来なかった。
飲み物を飲んで落ち着いたこの人は、息を整え、飲み物を私に返した。
それからしゃがみ、私の右手をとり、手の甲にペンで何かを書き始めた。
「ぼくとうたをつくりませんか」
逆さで書いたから、上手くかけてるとは言えない、少し不格好なその文字に、私はわくわくしてしまっていた。
その顔に、彼は僕は気付いたかのように、私の顔を見てほほえんだ。
彼女が去った後、僕は、どうすれば彼女の傍に居られるのかを考えた。
後ろ姿に焦りを覚えたながらでた答えは、彼女が生きた証を作ってあげたいという想いだった。
彼女がしてくれたこと、くれたもの全部、彼女が生きてくれた意味を作りたいと思ったんだ。
僕は、走った。
彼女は僕のことを想って自分から去っていった。
なら、僕がすることは、君を想って走ることだと思ったんだ。
僕はこの時の決断が、間違ってなかったと、今でも思う。
彼女は少し肩を落として進む後ろ姿に、僕は大きな声で名前を呼んだ。
でも、彼女は振り向かなかった。
僕は、足を止めてしまった。
分かってたはずなのに…。
前から知ってるみたいに名前も呼んでしまった…。
本当に僕って奴は…どこまで…。
でも、だからこそ、走れ。
追いついて、こんな僕でも出来ること、やるんだ。
肩を突然叩いてごめん。
目の前に行くと、急に車椅子止めなきゃいけなくて、危ないと思ったんだ。
でも、怖がらせてたんだんだよね。
ごめん。
ゆっくりと顔を見上げた君。
やっぱり可愛いと思ってしまってごめんなさい。
僕は、彼女の前に行き、しゃがんで、まっすぐ彼女の顔を見た。
そして、右手をとり、逆さで書いたからか、とてつもなく汚い字で、僕はこう書いた。
「ぼくとうたをつくりませんか」
読んでいた目が止まったとき、彼女はわくわくした顔をしていた。
何かを見つけられたような、楽しそうな。
僕は、その顔を見て、思わずほほえんだ。
それから、僕たちは公園に戻り、たくさん文字で会話をした。
どんな曲にするのか、歌詞に入れたい言葉、イメージ…。
たくさん消して書いて、彼女は話してくれた。




