結婚式
式当日。
僕たちは二人で家を出た。
式場に着き、それぞれ準備を始めた。
僕は緊張で手汗が酷かった。タキシードに拭いていいのかも分からず、ひたすら持ってきたタオルを握りしめていた。
コンコンコン。
「はい。」
入ってきたのは、夜織のお父さんだった。
「夜織くを、とても似合っているね。かっこいいよ。」
「とても嬉しいです。ありがとうございます。お義父さんも、モーニングコート、とてもお似合いです。」
「ありがとう。…改めて、娘と結婚して下さって、本当にありがとうございます。」
お義父さんは深く頭を下げた。
「頭を上げて下さい!感謝したいのはこちらです。突然のお話だったのにも関わらず、受け入れて下さったこと、感謝してもしきれません。」
「…ありがとう。君は、娘が居なくなることを知った上で、結婚してくれると言った…。娘の夢のひとつ…いや、いくつも叶えてくれた…。本当にありがとう…。」
「夜織さんの夢は、僕の夢です。僕は、夜織さんに生きる意味を見つけてもらいました。大切なものでさえ、大切に出来てなかった僕を、意味を教え、導いてくれました。僕は夜織さんという人に出会えて、本当に幸せ者です。」
そして、お義父さんと堅く握手をし、笑い合えた。
僕はお義父さんの心の温かさで、緊張をほぐしてもらえたように思う。
コンコンコン。
「失礼致します!新婦様のご準備が出来ました!ご案内致します!」
「はい!ありがとうございます。」
お義父さんは、お義母さんともうすでに見たから、行っておいでと、背中をトントンと叩いてくれた。
行ってきますと言い、僕は夜織の控え室へ向かった。
コンコンコン。
「新婦様失礼致します!新郎様お呼びしました!入ってもよろしいでしょうか?」
「はい!」
開けて入ると、そこには真っ白なドレス姿の彼女が居た。
この時の衝撃は、今もこれからも忘れることはないだろう。
振り向き、ふふっと笑う君。
「どう?」
とわくわくした目で見つめてくる君。
いつもとは違う髪型の君。
プロのメイクをした君。
見えすぎてちょっと不安になる首元をしている君。
笑顔はいつも通り素敵な君。
僕は、ひたすら目に焼き付けた。
「すごく似合う。本当に綺麗。素敵だよ。」
「ありがとう!夜織くん…夜織も!とっても似合ってて、かっこいい!世界一の旦那さんだね!」
すると、彼女は泣き出した。
笑いながら泣く君を、僕はそっと抱きしめた。
何も言わず、落ち着くまで背中をさすった。
泣く彼女を思い出す度、後悔が蘇ってくる。
「あー…せっかく綺麗にしてもらったのに、メイク落ちちゃったね…ふふっ。」
「結局素敵なのは変わらないよ。」
「うん…!ありがとう!夜織、大好きです。世界で一番。だーい好き!」
そう言うと、彼女は抱きついてくれた。
強く、強く。
僕を抱きしめてくれた。
「僕も。世界一で一番、夜織のことが大好きだよ。」
そして、二人で思う存分泣いた。
その後、予定通り式を挙げた。
参列者は、ご両親と、社長とメンバー。
大切な人達に囲まれた、世界一幸せな結婚式。
彼女のお色直し。
僕は、色も形も全く知らされていなかった。
だから、すごく楽しみだった。
「お待たせー!」
「全然待ってな…。」
彼女は、黄色のドレスで現れた。
しかも、ロングだった髪をショートにバッサリ切って。
「髪!切ってもらって!ドレスも着てたら、お手伝いしていただいたのに、上手く私が着られなくてちょっと遅くなっちゃった!ごめんね!」
「全然待ってないし、むしろ楽しみな時間が増えて楽しかったよ。ありがとう。…色…。」
「うん!意味はね…。」
「…幸福や希望。夜織にぴったりで、本当に素敵…。それに、髪…。本当に可愛い…。本当に似合ってる。」
彼女はホッとしたように笑った。
全ての式を終え、今日は夜織は、ご両親とご実家に帰った。
式の後、僕は社長とメンバーと二次会に行き、式が素敵だったという話で盛り上がった。
早めに解散をし、僕は家に帰った。
すると、ソファにはおうまさんが居た。
夜織が忘れて帰ったんだろう。
いつも一緒に寝てるんじゃ…。
いや、たまたまだろう。
いや、違う。
そう思いたかったんだよな。
僕は、深く考えず、次の日の夜織との年越しに備えて、色々考えを膨らませていた。




