↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/25

きっかけ

初LIVEが終わり、僕たちは汗だくで、驚く程笑顔で、楽屋へ戻った。

お疲れ様と言い合っていると、みんなの家族が続々と楽屋に来てくれた。

もちろん夜織と、ご両親も。


「本日は、お越しくださり、本当にありがとうございました。」


「感動しました!本当に幸せな時間でした!ありがとうございました!」


「うん。ありがとう。夜織、皆に紹介させてもらってもいいかな…?」


「はい!あ、でも私全然正装とかじゃ…。」


「驚く程素敵です。」


皆のご家族が帰り、僕は少し緊張しながら、少し顔が赤い夜織を連れて歩き出した。


「皆、紹介させて欲しい。僕の婚約者の夜織さんです。」


「初めまして!座ったままのご挨拶で、大変申し訳ありません。改めまして、夜織と申します。本日は、幸せな時間を過ごさせていただき、本当にありがとうございました。皆様、これからも、末永く鈴木夜織を、よろしくお願いいたします。」


彼女は、深く頭を下げた。

その姿に、僕は泣きそうになったが、ぐっとこらえた。

社長やメンバーは、口々に素敵な人だと、改めて彼女を認めてくれた。

僕の大切な人を、僕の大切な人が認めてくれる。

こんなに幸せな時間を過ごせる日が来るとは、生きていれば、良いこともあるもんなんだね…。

それもこれも、君と出会えたからなんだよ。

本当にありがとう。

ただ、僕はこの時胸が少しだけチクッとしていた。


(皆様、これからも、末永く鈴木夜織を、よろしくお願いいたします。)


末永く…か…。

夜織は、僕とのことを言ったんじゃない。

僕のことを、メンバーに託したように言ったんだ…。

夜織とご両親の話によれば、夜織の寿命は残り3ヶ月。

今日も朝から日記を読み、自分の人生を理解して、背負って来てくれた。

それに…。

夜織には、言えないことがあってね。

僕は、末永くはこの場所には居られないんだよ。

僕の耳は少しづつ聴こえなくなる。

でもそれは、君が消えた後のことだから。

知らなくていいんだけどね。


「えっと、男性の夜織さん!ご両親がお話があると…。」


「ありがとうございます。分かりました。すぐ行きます。夜織、ちょっと待っててね。」


そして僕は楽屋を出て、ご両親から差し入れのお菓子をいただき、式の話をした。



私は、正直すごく怖かった。

男性しか居ないこの狭い空間で、すごく見られて、コソコソ目の前で話されたから。

私のこと、やっぱり認めてもらえないのかなって…。

すると、社長さんが私の目の前に来て、目線を合わせて話してくれた。


「君の耳を、君の旦那さんに渡してもらえませんか?」



楽屋に戻ると、夜織は笑っていた。

でも、違和感だったのは、社長もメンバーも、作り笑いをしていたこと。


「…ん?何話してたの?」


「夜織くんの、メンバーさん達の前でしか見せてない、オフの感じ聞いちゃった!夜織くんって、意外と抜けたところがあるんだね!」


「え!ちょっと、何話したんだよ。お前ら。」


「え、え!いや、夜織さんが知りたい顔してたから!」


「えー!私そんな顔してました!?恥ずかしい!ははっ!」


大切な人達が楽しそうに笑ってる姿を見られるだけで、幸せなんだね。


その後、夜織とご両親をお見送りさせていただき、僕たちは、LIVE会場をスタッフさんと共に片付け、打ち上げに向かった。

次の日も練習だった為、僕たちはお酒を飲まず、食事だけをして解散した。

疲れてたからだろうか。

心做しか、みんな笑顔が固かったような…。

いや、今日は幸せな時間を作ることが出来たんだ。

そして、一週間後は結婚式。

二日前から休みをいただき、二人の時間を過ごしてから式に臨む。

今年できる努力は、あと三日間。

しっかりやりきる。

明日の朝は、ご両親にも許可を得て、夜織が日記を読み終える時間に合わせて、クリスマスプレゼントを渡しにご実家に伺う。

今年は、楽しみがぎゅっと詰まった一年だったように思う。

僕はその幸せを噛み締めながら、眠りについた。


翌朝、僕はご実家に行き、夜織と会えた。

プレゼントはもちろん。


「改めて、僕と結婚してください。」


指輪を彼女の左手にはめて、とびっきりの笑顔で笑う彼女を抱きしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。