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初LIVE

社長とメンバーとの話し合いの末、僕は活動を継続。

病気に関しては、現時点では違和感のみの為、これからの経過次第での判断となった。

練習はとにかく大変だった。

やはり歌い方自体を変える必要があった為、練習は困難を極めた。

だが、グループでの初LIVE。

それに、夜織の中では、人生初のLIVEになる。

なんとしてでも成功させる。

絶対全員にとって、幸せな時間を増やす。


だけど、LIVEの5日前の朝。

ふと考えてしまった。

音が前とは違う、自分の耳。

なんでもっと早く病院に行かなかったのか。

なんでこうなるまで気付けなかったのか。

僕はどんどんこのまま耳の機能を失っていく…。

あ…。

僕は何を考えてるんだ…。

夜織は…。

夜織は、怖かっただろうな…。

自分から望んだとはいえ、彼女はどんどんどんどん自分の身体の機能は消えていった。

今まで出来ていたこと、当たり前の生活、それらを少しづつ失っていく…。

君は、強いんじゃなくて、我慢強いでもないと思う。

きっと、君の心には、優しいが張り付いていて、引き剥がせない。

心の内側にある自分の心まで、気が付かない程にそれが侵食している。

だから、自分よりも他を優先するんだと僕は思う。

僕は、いつかそれを剥して、君の心ごと、守れるように。

あわよくばLIVEで、きっかけを作れるように。

そうだ。

僕は頑張ることしか出来ないんだ。

なら、頑張ればいい。

考えてる暇があるなら、動け。


そして、12月24日木曜日、初LIVE当日。

僕は、緊張はしていなかった。

努力が身体に染み込んでいるから。

夜織にも、朝に電話でエールをもらった。

あとは、届けるだけ。

夜織は、ご両親と関係者席に居てくれる。

よし。

全員で円陣を組んだ。


「今日は初LIVE!絶対届けるぞ!一人一人の人生の、幸せな時間を今日作るぞー!行くぞー!」


「おー!」


幕が上がる。

たくさんの照明に、慣れない目。

でも、それもすぐに慣れた。

目の前には、たくさんの人。

僕は、ここに居てくれる人全員に、一人一人人生があるんだと。

その人生の二時間に、僕たちが幸せな時間として刻まれるように、精一杯やろうと。

一瞬で心に決めた。


LIVE中、何度も何度も夜織を見た。

見る度に彼女は、キラキラした目で、僕を見ていた。

君にとってのアーティストの初LIVE。

幸せそうで本当に良かった。

でも、夜織を見るぐらい、一人一人の顔をよく見た。

皆さん、夜織と同様、キラキラした目で僕を見てくれた。

手を振り、隣の人と顔を見合せて、嬉しそうに笑ってくれた。

僕はそれだけで、本当に幸せだった。

LIVEが進み、メンバーのソロは最後、僕の出番。

僕は椅子に座り、ギターを持った。

全体を一回見渡した。

そして、深呼吸をして、僕はギターを置いて、椅子から立ち、マイクをスタンドから外して持った。


「曲を披露させていただく前に、少し話させてください。デビューが決まってすぐ、早々にお騒がせ致しました。ですが、一つだけ。僕は、皆さん全員に幸せで居てほしいです。素敵な人に出会うと、本当に人生が変わります。僕は自分が分からなかった。歌を歌ってても、心はどこにもなくて。誰かに届けるとか、考えることも忘れてた。でも、彼女に出会えて僕は自分を見つけられた。歌を歌う意味を、届けるということを理解して、今ここに立てるようになれた。だから、今の僕を応援して下さる皆さんの中にも、自分を見つけられなくて、迷って、苦しくて悔しくて、辛い人がいると思います。でも、その時間は絶対無駄じゃないし、その時間はいつか終わる時が来ます。僕がそれをここで証明させて下さい。幸せな時間を届けます。聴いてください。For you.」


僕は歌った。

今までの全てをかけて、全員に届けた。

曲が終わると、たくさんの拍手が聞こえた。

少しこもったその音は、耳を抜けて、僕の脳内に記憶として残った。

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