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僕の耳

お互いの衣装も無事決まり、僕は彼女を家へ送り、その日はそのまま解散となった。


それから僕たちは、また前のように連絡だけの日々に戻った。

次の日。

練習に向かうと、社長から驚くべき発表があった。


「皆!初LIVE、決まったぞー!」


「え!」

「嘘!まじで!?」

「やったー!」

「すご…。」

「頑張ります。ありがとうございます。」


「うん!頑張るのは当たり前だな。頑張るってことは、誰の何のために頑張るか、どう頑張るか、考えて行動することを頑張るって言うからな。」


「はい!」


社長の言う通りだ。

ゆるい気持ちでやったって何も届けられない。

僕たちは、たくさんの人に幸せな気持ちになれる時間を増やしたいと、頑張ることにした。


「初LIVEは、クリスマスイブの12月24日!あんまり日にち無いけど、新曲二曲と、カバー曲でLIVEさせてもらえることになったから!気合い入れて頑張るぞ!」


「はい!」


カバー曲か…。

それなら…。


「あの…提案なんですが…。」


「お!いいねー。聞くよ!」


「一人一曲、カバー曲を披露するというのはどうでしょうか…?カバー曲ではなく、オリジナル曲でやりたいならそれでももちろんいいと思います。歌う曲次第で、それぞれの個性も伝わりますし、得意分野でお見せできるので、一人一人の想いがしっかり届けられるなと思いました…。」


「え…夜織…それめっちゃいいじゃん!めっちゃいいそれ!ダンス得意なメンバーはコレオ作って、ダンスだけで見せてもいいし!歌なら歌で、それこそ夜織は、弾き語りかな?」


「はい!ありがとうございます。僕は弾き語りさせていただきたいです。」


「よし!時間ないからこそ、焦らず、しっかり自分の今持ってる力全部使って、幸せな時間作るぞー!おー!」


「おー!」


よし。

僕はもう何を歌うか決めていた。

夜織と出会った日に歌っていたあの歌。

僕が作ったオリジナル曲。

それを君に。

あの時よりも、もっともっと素敵な声で届けたい。


その日の夜、夜織にも電話で伝えた。

もちろん関係者席を用意して、ご両親と来ていただけることになった。


「えー!すごい!うわぁ、ええ!?楽しみすぎるー!何着ようかなー!」


「ははっ。ありがとう。僕も楽しみ。幸せな時間にするから。楽しみにしててね。」


「うん!ありがとう!」


それからというもの。

僕は、時間さえあれば練習をした。

喉は炎症になるギリギリまで歌い、ギターの練習も腱鞘炎になる程やった。

毎日身体はボロボロで帰る日々…。

でも、毎日夜帰れば、君との電話があった。

だから頑張れた。

本当にありがとう。


練習に力を入れてから10日後の、12月11日金曜日。

朝起きた時から、僕は耳に違和感を覚えた。

音がこもる感じがした。

耳鳴りもあったが、これは高校生ぐらいから頻繁にあったことなので、そこまで気にしていなかった。

でも、自分の耳ぐらいで、気にしてる場合でもなかった為、僕は準備をして、そのまま練習に向かった。

練習が開始しても、耳は治らなかった。

聞こえずらかったから、歌い方も少し変えなければいけなかった。

ただ、一時的なものだと思い、僕はそのまま練習を夜までした。

練習が終わり、僕は念の為、社長とメンバーに話した。


「ちょっと耳に違和感があって…。なんか音がこもる感じがあって聞こえずらくて、今日歌い方少し変えたから、ちょっと喉も炎症起こしそうな感じです。」


すると、社長の顔が一気に曇り、真剣な顔で僕を見た。


「明日朝一で病院に行きなさい。すぐに診てもらった方がいい。耳鳴りはある?」


「はい…。でも、それは高校生ぐらいの時から結構あったので、そこまで気にしてはなかったです…。」


「夜織…それ、もしかしたら耳硬化症かもしれないよ。」


「え…なんですかそれ…。」


「最初は耳鳴りとかなんだけど、徐々に音がこもってる感じで聴こえずらくなっていく病気なんだよ。でももしそれなら、補聴器とかを付ける生活になっていく…かも…。」


「え…?」


「とにかく明日診察優先で。もし来れたら、顔だして結果教えてに来てくれる?」


「はい…。」


その日の夜。

僕はいつも通り、夜織に電話をかけた。


「今日もお疲れ様!」


いつもと変わらない君の声を、僕の耳は少しこもった音で伝えてくる。

それが悔しくて、悲しくて、僕は決めた。

絶対に夜織には話さないようにしようと。

夜織に話せば、もしかしたら自分の耳の機能を僕に譲渡するかもしれないからだ。

一番届けたい人の身体の機能を奪ってまで、続ける意味など、その時の僕にはないと思っていた。


「…夜織くん?」


「あ、ごめん。大丈夫。」


それから、また話をし、電話をきった。


翌朝、僕は病院で診察を受け、結果を伝えに、事務所へ向かった。

社長に全員集めてもらい、みんなの前で話した。


「耳硬化症になっていました。」

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