君の生活
それから二時間後。
夜織を起こす時間になった。
僕はベッドの横に座った。
そして、申し訳ないが、あまりにも可愛い寝顔だったので一分ぐらい眺めさせてもらい、夜織に声をかけた。
「夜織。時間だよ。起きられそう?」
「ん…。」
僕は正直怖かった。
起きた君は、僕を知らないかもしれなくて、君を怖がらせてしまうんじゃないかって。
そう思うと、怖くてたまらなかったけど、そうゆう君のことも知りたいと思った。
知れたら、これからまたこうやってゆっくりできる時に、僕は君のサポートができるから。
そして、彼女は目を覚まし、僕を見た。
「おはよう、僕のこと分かるかな…。」
「え…おはよう…ございます…。えっと…すみません…分からないです…。誰ですか…?」
うん。
良かった。
これからサポート出来るようになれるってことだよね。
「初めまして。説明をさせてください。
まず、ここは僕の家です。そして、僕は、夜織さんと結婚させていただく予定の、鈴木夜織と申します。今、夜織さんとは、ハンバーグを二人で食べて、仮眠を夜織さんは取っていたところでした。
これから、二人で式場に行き、僕のタキシードの試着を一緒にする予定でした。
説明自体は終わりなんですけど…。怖いですよね急に、結婚とか…男の人の家で寝てるとか…。」
僕は床に膝をつき、なるべく遠い状態で話をした。
なるべく怖がらせないように、少しでも不安を取り除けるように。
「名前…私と同じなんですね…。」
「…はい。…ちなみに漢字も同じです。」
「え!すごい!婚約者が同じ名前って、もはや運命ですね!」
僕は、驚いて顔を上げた。
するとそこには、いつもの夜織の笑顔があった。
警戒心のない、屈託のない笑顔。
僕は、心から安堵したと同時に、ここで決めたんだ。
しっかり説明をして、なるべく記憶のことには触れないようにしようと。
記憶のことに触れれば、夜織が悲しんだり、僕のことを考えて、まるで悪いことをしたかのように謝るかもしれないから。
だから、説明が終わって、夜織が警戒心を解いてくれそうだったら、僕はこれからの楽しい話をしようと思った。
「運命って思ってもらえて嬉しいです。あと、30分後ぐらいには家を出て、僕と式場に行って、タキシードの試着を手伝ってほしいんですけど、一緒に来ていただけますか…?」
「はい!もちろんです!え、それって、私もドレス選んだり、試着したりしてもいいんですか?」
彼女のドレスは元々決まっていた。
お母さんと決めたらしい。
写真も見た。
でも
「試着の場合見てもいいですか?それとも、式当日まで我慢の方がいいですか?」
「んー、そうだな…夜織さんの好みも知りたいので、恥ずかしいけど、見てほしいです…!」
「ありがとうございます。一緒にお互いの選びましょう。」
「はい!あの、もし良ければなんですけど、車椅子に乗りたいので、抱きかかえて手伝ってもらえますか…?」
「もちろんです。」
車椅子を横に起き、起き上がった夜織を抱きかかえて、車椅子に座ってもらった。
夜織は、毎日ご両親にこうやって乗せてもらってたんだね。
役に立てたみたいで、嬉しかった。
「じゃあ、僕も準備しますね。準備終わったら、少し早いですけど、道混んでたら間に合わないので、出発しちゃいましょうか。」
「はい!」
それから、僕は着替えて準備をした。
その間、彼女は携帯をじっと見て、時折笑っていた。
五分後、着替え終わると、彼女はツボに入ったようで、お腹を抱えて静かに笑っていた。
「ん…?何見て笑って…あ!」
携帯には、僕の事故画が映っていた。
「え!ちょっと、すごい恥ずかしいんですけど…消してくださいねそれ!」
「ふふふっ、嫌です。絶対消しません…!」
「え!ちょっと!」
彼女は携帯をあちこちに振り回し、僕に掴まれないようにした。
そしてやっとの思いで彼女の腕を掴み、
「やっと掴まえた…。」
顔を動かすと、彼女の顔が真ん前にあった。
そして、10秒見つめ合い、彼女の方からキスをしてきてくれた。




