君の気持ち
それから、式の準備をしつつ、僕とメンバーは練習に励んだ。
相変わらず世間の言葉は冷めたものもあったが、社長のおかげで、風は少しずつ落ち着いていった。
式は、どうにかお願いを聞いてもらえ、2ヶ月後になった。
その日は夜織の十八歳の誕生日だ。
だが夜織は、前にも増して記憶を失くすことが多くなった。
今ではもう、昨日のことは丸々覚えていない。
僕は、練習の時間が長い為、練習終わりの夜織が眠りにつく前にビデオ電話をかけ、夜織はそれを日記に書く。
そして翌朝日記を読み、記憶を新たに僕におはようのメッセージをくれる。
これが、僕達の当たり前になっていた。
式の相談は、リモートで参加させてもらい、基本的には夜織のご両親が付き添ってくださっていた。
そして、一ヶ月後。
式まではあと残り一ヶ月の11月30日月曜日。
時間を作り、久しぶりに夜織と会えることになった。
僕の家で食事をし、ゆっくりした後、二人で式場に行き、僕のタキシードの試着をする予定だ。
朝、久しぶりに会えるので、僕はとてもわくわくしながら、夜織のご実家に向かった。
着いてすぐ、僕は夜織に連絡をした。
すると、連絡をしてすぐ、彼女は一人で家から出てきた。
一ヶ月ぶりの彼女は、やはりとても可愛く綺麗で、僕は言葉を失った。
「?おはよう!久しぶりだね!」
「あ、ごめん。おはよう。久しぶり。体調とか大丈夫?」
「うん!大丈夫!ありがとう!楽しみすぎて玄関で待ってたんだ…へへっ、行こ!」
「可愛い…。うん。行こうか。」
そして、僕の家に着き、僕は二人の大好きなハンバーグを作った。
夜織はその間、料理をする僕をたくさん写真や動画で撮っていた。
「ねえ、撮りすぎじゃない?なんか、恥ずかしいよ…。服とかもシンプルなものだし…。」
「まだまだ撮るよ!…じゃないと私、夜織くんとの思い出、分からないからさ、日記だけじゃ物足りなくて、寂しい…んだよね…。」
そう言うと彼女は、僕に向けていたカメラを静かに下ろし、泣き始めた。
僕は、料理を止め、手を洗い、彼女に向かって走った。
そして、隙間がなくなるほどに抱きしめた。
「ごめん、ごめん夜織。そうだよね。寂しいよね。僕も寂しかったんだから、夜織はもっとだよね。
会えないだけじゃなくて、毎日分からなくなって、朝は日記読んで、日中は僕のことを思い出そうとしてくれて、夜は電話をして、明日の為に日記を書いて、なかなか会えないから、僕の為に毎日毎日頑張ってくれて…。無理をさせてごめん。
寂しい思いさせてごめん。夜織、大好きだよ。本当に大好き。写真も動画もたくさん撮り合おう。
僕も夜織の写真と動画もっと欲しい。
ごめんね、正直デート中の隠し撮り何個かあるけど、僕も物足りなかった。撮らせてくれる…?」
「うん…たくさん撮る。隠し撮りは、二重顎とかになってないか、後で確認させてね…。」
「ははっ、うん。でも、二人で確認しようね?毎日見てるけど、見足りないから。」
「ふふっ、うん!しょうがないなあ夜織くんは。」
君が初めて、ちゃんと想いを話してくれた日だったね。
本当に嬉しかった。
同じ気持ちだって知れて。
そして、僕達はハンバーグを食べ、その間も、お互い動画や写真を撮りあった。
食べ終わり、ゆっくりしていると、彼女は隣でうとうとし始めた。
「ん…?眠いの?」
「うん…あのね、久しぶりなんだよね?会えるの…。だからね…過去の私の為にも楽しい時間過ごしたくて…昨日日記書いたあとも頑張って起きてたの…。」
「何それ…はあ…可愛すぎるんだって…。ベッド連れてくから、試着まで寝たらいいよ。」
「ん…でも夜織くんは寝ないでしょ?私だけ、彼氏さんのお家で寝るって…あんまり良くない気が…。」
「夜織が気になるなら、僕も寝るよ。アラームかけて、一緒に寝よ?ね。」
「うん…そう、する…。」
そして彼女はソファで寝落ちした。
僕は彼女を抱っこし、ベッドまで運び、布団をかけた。
僕は隣では寝ずに、食器の片付けをし、写真フォルダを見返していた。
もし起きた時、記憶がなかったら、知らない男の人の家ってだけで怖いのに、寝てたら余計に怖いからね。




