↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/25

認めてもらうこと

「え、おめでとう。」


「え…?」


「うん!おめでとう!すごい!かなり早いけど、既婚者第一号だ!」

「夫婦だ!すげぇ…!結婚式楽しみだなぁ!」

「おめでとう。どんな人なの?」


「え、待って。怒らないの…?」


「なんで怒るんだよ。悪いことしてないだろ。人として幸せ掴むだけなのに、誰の許可がいるんだよ。夜織の人生なんだから、当たり前に、幸せになってほしいよ、俺達は特に。」


僕は、涙をぐっと堪えた。

僕は、どこまで恵まれているんだろう…。

だから、気付かなかった。

後ろに社長が居ることに。


「…ありがとう。彼女は…。」


「ちょっと待って。彼女って…?」


「お疲れ様です!」


全員で立ち、挨拶をして顔を上げて見た社長の顔は、かなり曇っていた。


「とりあえず座ってもらって。…夜織、彼女居るの?」


「…はい。その方と、結婚を考えています。なるべく早く。」


「ん、ちょっと気になったんだけど、結婚したいは本当に素敵な事だからもちろん賛成なんだけど、なるべく早くっていうのは?そこは、理由が知りたいな。デビューしてすぐの今のこの時期に、結婚をするって、ごめん、正直今すぐどうぞって、相当な理由ないと言ってあげられないよ。」


「はい。嘘は、つかないって決めてるので、全て正直に話します。僕の彼女は_。」


僕は全てを話した。

彼女の余命のこと、記憶障害のこと、願いのこと…。

包み隠さずに、全てを話した。

夜織にも、ご家族にも事前に話していたから。

大切な人達に、嘘をつかずに説明させてほしいと。


全てを話し、僕は改めて涙を堪えながら顔を上げた。

本当に驚いた。

びっくりするほど社長もメンバーも鼻をすすりながら、泣いていたから。


「えっと…。社長…?」


「なんだよそれ…。結婚、今すぐどうぞだよ…。」


「え…いいんですか…?」


「当たり前だろ!もう今すぐしてくださいそれは!細かいことは、全部俺に任せろ!夜織は、夜織さんとの幸せを考えてください!」


夜織、ありがとう。

君に出会えたから、僕はこんなにも素敵な人達に恵まれたんだと思う。


「社長も、みんなも、本当にありがとうございます。皆さんに恩返しが出来るよう、精一杯努力して、パフォーマンスを届け続けます。」


みんなで円陣を組み、僕達は誓い合った。

パフォーマンスを、たくさんの人に届けることを。



そして、なるべく早く公表することが大切ということで、夕方には発表することがその場で決定した。

夜織にも認めてもらえたことと、発表を配信で行うことを電話で伝え、時間までレッスンに励んだ。


発表の時間になり、社長が配信を開始した。


「先日は、デビュー発表をさせていただき、彼らのパフォーマンスをご覧くださり、本当にありがとうございました。本日、急に配信をさせていただいたのには、ちゃんとした理由があります。メンバーである、夜織がこの度、素敵な縁に恵まれ、結婚することとなりました。」


僕とメンバーは、コメント欄と社長を交互に見ていた。

コメント欄には、様々な意見がでていた。


(夜織くんが結婚!?)

(びっくりしたけど、おめでとう!)

(え、昨日デビューで、今日結婚?早くね笑)

(えー普通に無理かも)

(プロとしての自覚欠けてんじゃない?)

(所詮は一般人よな)


僕がまるで犯罪者なのかなと思う程、僕は言葉に負けそうになっていた…。


「様々なご意見があると思います。まず、祝福のコメントして下さる皆様、本当にありがとうございます。私も同意見です。まず前提として、私の事務所のタレントの恋愛に関しましては、本人の自由。つまり、恋愛禁止ではありません。夜織は、隠すことも出来ただろうに、嘘をつかず、正直に話してくれました。私もメンバーも、そんな彼の意思を尊重することを決めました。」


(何それ)

(ファン辞めようかな)

(え、ファンの意見はどうでもいいの?)

(へぇー)

(にしてもはえーだろ)


「ここからは、社長ではなく、私自身の、一個人の意見として、聞いてほしいのですが…。

芸能人は、幸せになることを許されない生き物なのでしょうか?

芸能人と一般人は何か違いがありますか?

起きて、ご飯食べて、仕事して、趣味があったり無かったりして、お風呂入って、寝て。

何か違いがありますか?

幸せになろうとしてる人が居て、それがあなたの大切な人達だったら?友達でもご家族でもいいです。

大切な人が幸せになることは、自分も嬉しくなりませんか?

私たちは嬉しかった。嘘をつかなかったことじゃない。

夜織が、大切な人が、幸せになろうとしているからです。

私たちのファンでいてくださる皆様は、私たちにとって大切な人です。

私たちは、皆様が幸せであってほしいです。

そしてあわよくば、皆様にとっての大切な人に私たちはなりたい。そう思っています。

夜織の幸せには、夜織の人生には、彼女が必要でした。

今の夜織が居るのは、彼女のおかげであり、話を聞き、私たちにとっても彼女は大切な人になりました。

今の夜織を作ってくれた彼女に、私たちは心から感謝を伝えたいと共に、幸せになってほしいと心から思っています。

長くなって申し訳ありません。ご報告は以上となります。

お忙しい中、ご視聴いただき、誠にありがとうございました。」


社長は配信をきった。

僕はきるギリギリまで、コメント欄を見ていた。

一番最後のコメントだった。


(夜織くんも、彼女さんも、幸せになってくださいね!)


理解されない方が今は多いのかもしれない。

でも、僕には、少なくとも九人の見味方がいる。


「社長、本当にありがとうございます。」


「感謝はまだ早いな!結婚式で、長めに言ってもらわないとな!」


「え!社長そこ!?」

「なんかもっと、さっきまでめっちゃかっこよかったのに…!」


「絶対そこだろ!結婚式だぞ!大事だろー!」


そうして社長に追いかけられるメンバーを見て、僕は、夜織以外の前で初めて、心から笑ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。