23 勝負
港町を出て数日後。私達は予定より三日遅れでクララの家に到着していた。
「やったー!あがりですっ!」
「これで僕とクララは十点差か。だいぶ差が縮まってきたね」
なんだかんだでアルバートもついてきて、クララの弟、ジェファスも交えて子供は四人。ハリーは騎士の訓練で、まだ学園にいるらしい。
「次の親は俺だな。八枚ずつだっけ?」
「ジェファス、会わない間に随分強くなったね。さては勉強サボってカードゲームばっかしてたなこのー!」
「姉ちゃん、痛い!痛いから!カード配れない!」
クララの家は、でっかいお屋敷みたいなやつ。王都の家と違って、隣に大きな納屋だったり、倉庫だったりが建ってる。まさに領主様の館って感じ。周りが畑や農家なのも高得点。向こうの丘には馬もいるんですよって言われた時は驚いた。小さい頃から、動物の世話をしていたのだとか。まさにヒロイン。
「まずは僕からか。とりあえずバラの四点は確保しておこうかな。めくりで何が出るかだけど……。うーん、ここでつたが出たか」
「あ、つたゲットです!これで後四枚!」
「ふん、殿下も甘いな。既に場に二枚出てるバラを取るなんて。そういうのは取られる確率が低いんだから、先に他のを取らないと」
「こらジェファス!殿下には敬語を使いなさい!」
そしてクララの弟ジェファス君、まだ九歳。来年学園に入学するんだそう。果たして彼が乙女ゲームの攻略対象の一人ってことはあるのだろうか。今のところ血が繋がってないとか、そういう話は聞かないし、クララと顔立ちがとてもよく似ている。これは実の弟っぽいし、恋愛したらアウトだね!
まあそんなこと言ってたら逆ハーなんて狙えないんだけどね!
そして、乙女ゲームの攻略対象ということは、必然的に乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私のヒーロー候補でもある。ヒロインの弟とくっつくタイプの話ってあったっけ?自分の義理の弟と!ってやつが多かった気がする。とにかく年下はそれだけで腹黒フラグだからね。たとえ一人称が俺で、やんちゃ坊主みたいな雰囲気でも油断は禁物。
「次はクリスティナの番だよ。出すもの無い?」
「……うむむ。ここは月、いや、朝顔!とりあえず取って、めくりは朝顔!何故だ!ターンエンド!」
「クリスティナちゃんそればっかじゃないですか」
「これで負けたら四連敗か?」
思い出すのは、昨日の会話。アルバートに、何歳から結婚できるか聞いてみた時のことだ。ちょっと嬉しそうな彼が言うには、男が十七歳になっていることが条件らしい。その時は、それなら乙女ゲーム本編が始まるのは後五年後か、長いなーって思ってたけど、他の攻略対象って年齢違うじゃん。アルバートも十七歳になった頃は、仕事が始まって学園にはあまり来なくなるだろうし。生徒会長を用意するなら、その一年前。王子十六歳、クララ十四歳、ジェファス十三歳、ハリー十四歳。この辺が妥協点かな?数年がかりの乙女ゲームなら、十四歳から始まっても不自然では無いと思う。
それまでに、何か対策を考えねば。私のせいで展開がだいぶ歪んで、ひょっとしたら悪役令嬢の転生者補正では誤魔化せないレベルにまで来ている可能性がある。いくらハッピーエンドとはいえ、私は冒険者になって放浪の旅とかしたくない。豪華な家具に囲まれて、でっかいお屋敷で日々美味しいもの食べてふかふかのベッドで眠りたい。
……。私異世界に向いてなかったりする?
「やった!めくりも当たったよ!二点札が二枚、三点札が一枚、一点札が三枚か……。順調順調」
そしてこの世界のおかしな所。なぜかカードゲームが花札もどき。
いきなりの和要素!
花札なんてほとんどやったことないぞ私。普通トランプで大富豪じゃないの?それとも、これが乙女ゲームのミニゲーム的なやつなのだろうか。ちょっと運に偏り過ぎな気もするけれど、二人でするにはちょうど良かったりするのかも。
「よし、私も!今回は二点札集めようかな?とにかくひいらぎゲット!」
「あっそれ私が取ろうとしてたのに……」
「クリスティナちゃん、目線でばればれですよ。赤札三つを狙うだなんて、よっぽどいい手札ですね」
「クリスティナはずっと同じ札を見てるからね。分かりやすいよ」
「クリスティナさんは勝負事、あんま向いてないね」
ぐはぁ。
というかこいこいもどきを四人で遊ぶ辺りがもうおかしいのだ。一人八枚ずつで三十枚超えるじゃん。めくりまで合わせると、ほとんど全部の札が一度の試合でめくられる計算になる。札の柄もスミレだのバラだの、変なのになってるし。ここまでがっつり花札なら柄もサボテンから桐までちゃんとしたのに揃えてほしかった。そういえば、花の名前ってどこまで私の言語チートが通用してるんだろ?
気になるけどスルーで。
「よっしゃ!これで後二枚だ。俺今回一位狙えるかも」
「やれやれ、やっと私の番か……。コナラ!」
「クリスティナちゃん、それクヌギですよ」
知らねーよ‼︎
その後四回勝負して、ぼろぼろに負けた。場の札の見落とし、手札が相手にまる見え、二択を外すとか、全部やった。無理ゲー。
帰りにアルバートが一言。
「クリスティナ、君は一生賭け事には手を出さないでね。絶対約束してね」
うあー。思い出したら腹立ってきた。最後の方なんて、ジェファスに至っては私にアドバイスまでしてきた。運ゲーでアドバイスってなんなんだよ。確率がどうとか言ってたけど、所詮九歳児。前世も合わせて(多分)二十八歳になる私を納得させる理論は導けなかったようだ。
「ふう。クリスティナちゃん、どうでしたか?初めてだったから負けちゃったりもしましたけど、楽しかったですか?」
あの後男二人はそれぞれの部屋に戻って、私達は着替えて念願のパジャマパーティーである。ほんと久しぶり。前世の小学校以来?二人でベッドに寝っ転がって、お話しする。
「ん。楽しめた。ただ次はもうちょっと、頭を使う遊びがいいかも」
「頭……?」
「さっきのカードゲームはほとんど運だったから。頭を使う遊びなら、私も有利に戦える。作戦勝ちできる」
クララが不思議そうな顔でこっちを見る。
「うーん、クリスティナちゃんの頭……。そっか。どうでしょう、まずはプレイングのがばがばをなんとかしないといけないかもですねー」
「あれはがばがばじゃないから。相手の意表を突いて、動揺を誘う。こーとーな心理テクニック。私は精神の次元で勝負をしている」
「そうきたかー。そういえば、帰り際にアルバート様が言ってたこと、気になりますね」
こいつ話にならないからって露骨に話題を変えてきた。私はごろごろ左右に回転しながら答える。
「え?一生賭け事はするなってやつ?」
「そっちじゃなくて、明日クリスティナちゃんにお客さんが来るって話です。クリスティナちゃん、心当たりありますか?」
「ダニエルかなんかじゃない?」
「お兄さんをなんか扱いしないでください。それならアルバート様、名前を言ってくださると思うんですよ。一体私の家にどなたがいらっしゃるんでしょう……?」
クララが結構本気で考え込み始めてしまったので、クララの上に十字の形で寝っ転がってみる。
クララ、結構細い。こんなところにもヒロインのポテンシャルが……。でもこういうのって普通、私がスタイル抜群ってパターンだよね?
「クリスティナちゃん、ちょっと重いです」
「ほほーう?レディに向かって重いとは失礼な」
「いや、そうじゃなくて、どいてくれませんか?」
クララが私を軽々押し転がして、私は元の位置に戻る。クララは力も強い。身長がほんの少し違うだけなのに、田舎育ちは伊達じゃないって感じ。
「うわ、クリスティナちゃん軽っ。あとお肉柔らかい!どうなってるんですか⁉︎」
「私の体はドーナツとマカロン、ワッフルにホットケーキでできてるから。ふわふわなの」
「え……。筋肉が全然ないって意味で言ったんですけど、ちゃんと運動してます?」
「私は頭脳派だから」
「あー、ダメです、突っ込んだら私の負け、突っ込んだら負け……」
そんなぐだぐだな会話をしつつ、私は最後の安眠に落ちていった。こんなに安らげる時間は二度と来ないなんて知らずに。
作者です。
これまで明日の展開は明日考えればいいやってスタンスで書いてきましたが、それだと終わりそうに無いことに気づきました。
土日で今まで書いた文を読み返して考えた結果、なんとか終わらせる方法を考えつくことができました。
多分この辺で折り返しです。
もはやタイトルがぐだぐだしか合ってないような作品ですが、完結まで見届けてくれると嬉しいです。




