表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/111

第八十七話 衝撃の通達

 昨日はその後、警察から簡単な事情聴取をされ、あまり時間はかからず解放された。そして今日。早めに起き、訓練をするために家の扉を開けると、その瞬間、川蝉が飛び込んできた。扉を開けたタイミングが良かった。もし開けなかったら、硝子がらすを割って飛び込んでくる、そんな勢いであった。

「いったいどうしたんだ?織曖さんからここまで緊急性のありそうな通達は久しぶりだな」

 俺は言いようのない不安を憶えながら、川蝉を自身の上に停まらせる。すると、川蝉はすぐに言葉を発した。

「“緊急通達。松川利斎が、魔獣汚染浄化解放教団まじゅうおせんじょうかかいほうきょうだんの主導者、魔浄人まじょうとであることが判明しました”」

「なっ!」

 その言葉に、俺は動揺を隠せなかった。だが、その前に聞くことがあった。

「それで今、松川利斎は?」

 俺の言葉に、川蝉の声は少し暗く返答した。

「松川利斎は現在、妻子を殺害した後に逃走、居所いどころはまだ明らかになっていません」

「そう、ですか……」

 俺は、その言葉を深く受け止め、起きていた彩芽に「織曖さんの所に行ってくる」と言って、大急ぎで織曖さんの元に向かった。そして急いで向かう事数分。俺は織曖さんの居る川蝉の本部に着いた。そのまま俺は受付を通り、織曖さんが居る部屋へ小走りで向い、着いた瞬間にノックをする。

「入ってくれ」

 その短い言葉を聞いた瞬間、俺は急いで扉を開けた。

「失礼します」

「エルブか」

 織曖さんはいつもの調子で対応してくる。だが、俺はその事に安堵する事なく、扉を閉めるとすぐ、深く頭を下げた。

「織曖さん、松川利斎について何も気付けず、大変申し訳ございませんでした。この事を反省し、自らを戒め、必ずや松川 利斎を捕縛して見せます。ですのでどうか、俺に償いの機会を下さい。お願いします」

 俺は、自身の言葉に反省と償いの気持ちを込め、言うと、織曖さんは小さい溜息と共に「ほぅ」と声を上げた。

「罪を償う為に辞めるなどとは言わず、反省して名誉挽回として自身の罪を自分で対処する、か……うむ、良いでわないか、。良いぞ、失態を犯した者は辞めるだの指を詰めるだのくだらないことばかり言う。だが誠、お前は自分のケツは自分で拭けるようだな」

 俺は織曖さんから、意外に賞賛されている事に動揺した。

「えと、どう言う事でしょうか?」

 俺が、色々と理解できないまま聞くと、織曖さんは落ち着きを取り戻して言った。

「いや、すまない。エルブが予想以上にしっかりとしていたのでね。エルブ、君が大きな失敗をしたのは今回が初めてだろう?だから少し事実を歪曲わいきょくさせて通達させたんだ。君がどう言う反応をするかを見ておきたくてね。だから安心したまえ、妻子は怪我こそしたが既に完治済み。松川利斎の居場所は既に把握済みだ」

 俺はその言葉に、隠れて溜息ためいきを吐く。

「そうだったんですね。なら良……くはないですね。それで、罪は償わせていただけますでしょうか?」

 俺が恐る恐る言うと、織曖さんはニヤリと笑って言った。

「当たり前だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ