九十三話 いつもと同じ帰り道
「すっかり遅くったなー」
「本当ね」
夕方、日の沈み始めた頃、俺達は西区白波学園の廊下を歩いていた。
「まさか、今日提出のレポートが終わってないとはな」
俺、新藤 誠は、幼馴染みの椎名 彩芽と共に、レポートの提出を忘れていた、友人の設楽 友也と工藤 美幸、遠見 真十花の手伝いをしていた。
「本当なら紫穂に見せて貰う筈だった」
真十花が、親友の永津希 紫穂の事を言いながら、悔しそうに言う。
「仕方ないだろ、突然家の用事が入ったんだしさ」
紫穂は名の知れた大貴族の娘で、今日は家で急用が入ってしまい、途中で退室したのだ。それでも「うー」と唸っている真十花に呆れた麻霧 和義が「出せたんだから良いじゃないか」と言うと渋々ながらも頷いた。
「ま、今回は終わって良かった!」
友也の言葉に、全員が微妙な顔をしつつも下駄箱で靴を履き、校舎を出る。そして自身の相棒、分離寄生命体を預けている依託所に入り、依託所担当の先生、恵澤 吉実先生に話し、依託所内部に入る。
「永津希さんの針鼠、守刺、信楽さんのガゼル、鈍勇、麻霧さんのハイエナ、独徒、工藤さんのカツオドリ、飛嶽、遠見さんの象、華昇、椎名さんの鳥、薙摘、新藤さんの狼、天風……はい、全員確認しました。気をつけて帰ってね」
と、先生に言われ、了解した後、学校を出た。
「今日はどうする?どこか寄るか?」
友也が、俺に質問を投げかけてきた。その質問に俺は「うーん」と悩みながら周りを見、周囲が暗くなり始めているのを感じた。
「今日はやめておこうかな。もう暗いし、健康診断が終わった千姫が待ってるだろうし」
「そうだよね。千姫ちゃん大丈夫だったかな?」
「大丈夫だよきっと。だって事件に巻き込まれたけど誠が助けただろう?」
「でも友達としては心配でしょっ」
俺の返答から、話がみるみる広がっていく。いつもと同じ、愉快な帰り道であった。