第42話:俺に力を貸してくれ
急に室内に緊張が走る。
「全っ然見えないけど、ホントかしら?」
疑うミリアだが、マドリーナとパトリシアはフィアを信頼しているので、リアから出撃する。
「ちょ……ちょっと待ってよ~」
それを見て、しぶしぶ彼女も出る。
フィアの言うとおり、少し経つと、オレンジデーモンが遠くに見え始める。
前方の数体はフィアが跳躍し、あっという間に首をへし折っていた。フィアは直ちに戻り、左翼のミリア、パトリシアに合流する。
室内に残されたゴールは俺たちを集める。
「これは……ヤツ……だよな?」
不自然なオレンジデーモン。
魔王ロキが近くにいることを示唆している。
特訓時、魔導石が極端に少なくなることは防いでいた。そのための『午前中のみ』だ。
だが……魔王ロキは言っていた。
カラーデーモンとは視覚を共有できる……と。
俺たちの狩りまくってる様子が見られたかもしれない。仏の顔も三度まで……というが、魔王は即刻ブチギレか?
「なぁアキラ……お前の火龍波で『道』は作れるか?」
真剣に聞いてくるゴール。
「何する気だ?」
そうは言うものの、決死の突撃をする気だ……そう直感する。
「ゼイル旅団はな……魔王を倒すためだけに五年……やってきたんだ。わかるだろ?」
「いや……ミリアたちに任せよう。無駄死にするぞ」
「無駄死にだって? ……いいや……ここであいつらが魔王を倒したら……俺は自分が許せない」
決意を込めて言うゴール。
言いながら、置いてあった鉄ナイフを手に取る。
「ちょっと……ニーナ……なんとか言ってくれ……」
こういうの状態の人間を説得できるのは、長い付き合いを持つ団長のニーナしかいない。
だが……
「アキラ……火龍波を……お願いします。サク……アナタは無理にとは言いません」
ニーナはゆっくり歩みを進め、彼女もまた鉄ナイフを手に取る。
「何言うてんねん、団長……俺は覚悟できてまっせ……。俺はギャンブラーやからな……その賭け……のったで」
ニヤリと笑うサク。
歩みを進め、対魔王の武器、鉄ナイフを握る。
「おい! マドリーナの作戦どおりに動けよ!」
必死に叫ぶ俺。
「アキラ……火龍波だけお願いします。私たちに付き合う必要は……ありません。魔王は……私たちの手で……殺ります。ほんのわずかな可能性だけど……やらせてください」
バカな……どうしても自分たちでケリをつけたいというのか……だけど、彼らの積み上げてきた年月は重い。
そして、魔王とカラーデーモンに対する感情も重い。
ここで動かなければ、一生後悔する。
魔王を例え、ミリアたちが倒したとしても後悔する……自分たちの命より大切なものがある……俺は説得を諦めた。
例え、俺が火龍波の援護を拒んだとしても……彼らは突撃するだろう。
「わかった」
俺だって、彼らを死なせたくない。ならば、せめてできる限りの援護をしよう。
「わがままを聞いてくれてありがとう。攻撃力も防御力も全員できるだけ引き上げます」
ニーナは呪文を唱え、俺たちに援護魔法をかける。
生まれて初めてかけられた援護魔法。
力が湧いてくる。カトラン並という触れ込みだが……凄い。
普段、華奢な俺からすれば、彼と同等の力になるだけでも大違いだ。
火龍波の威力は直接ぶん殴るのと同程度。基礎の攻撃力が上がってるってことか。
リアの小窓から周囲をうかがう。
赤い。
デカい集団が50体程、こっちに迫って来る。
真ん中はとりわけ団子状態になっている。恐らく、その中心にいるのが魔王ロキ。
外では4人がマドリーナの作戦どおりの布陣で迎え撃つ。
決戦だ!
右翼のレッドデーモンは、マドリーナ一人に吸い寄せられるように取り囲む。
左翼の攻撃陣は、レッドデーモンを蹴散らしにかかる。
時同じくして……ライジングサン号のリアの扉が開く。
俺は集中して、手の中に火龍波を出す。
援護魔法のおかげでこれまで見たこともない、サッカーボールくらいの『氣』が集まる。
そして……
「私と心中……してくれる?」
「ああ……わかったよ」
ニーナの問いにゴールが答える。
この会話を聞いた瞬間、フラッシュバックする。
シノ……
絶望的な状況の中、俺の命を救う直前の彼女の穏やかな笑いが……鮮やかに蘇った。
シノ、ありがとう!
過去最大級の感謝の念。
これが俺の出せる最大火力!!
シノ…………俺に力を!!
「うおぉぉぉぉ!!」
俺の両手から真っすぐに火龍波が放たれた!!!




