第30話:カラーチェンジ
俺の時計は、8月15日を示している。
真夏の暑いなか、イエローデーモンとの戦いが続いている。
ゼイル旅団の最終目標は魔王だが、その手前の目標はコレだったからだ。カラーデーモンが湧き出る根元でヤツらを食い止め、南北のシップビリッジ、シャインビリッジの安全を確保する。
地味だけど、方円の陣を引いて、常に持久戦で被害を出さないように戦う。
魔導石も大量に貯まり、ライジングサン号の中に貯蔵している。
俺が国のお偉いさんから聞いた話が真実ならば、コレを売って商人へと渡った魔導石は最終的に国が買い取り、そして魔王に渡す。ニーナもこのカラクリを理解しているため、ひたすら戦う方針とした。
換金せずにため込んでおけば、自然と魔王はカラーデーモンを作り出すことができず、結果としてカラーデーモンによる被害も減る。
もちろん、全ての戦いに勝利したわけではない。
ここ一週間、連戦になる時もあり、あまりにも疲労が激しくなった時はあえてライジングサン号の中へ退却し、ヤツらをやり過ごすこともあった。
ヤツらは視界に人間を捉えると追いかけてきて襲い掛かる。だが視界に映らなければ、大多数が最東端であるセンターシティへと歩を進める。
このひたすら戦っている期間、パトリシアの蹴りの威力はミリアの指導もあって増加した。
エイトの火の玉の魔法も、呪文を地味に改良し続けて、かつての四天王ティルに遜色ないほどになってきた。
ミリアに酷評されていたサクの『捌き』も実戦を重ねるにつれ、有効に相手の攻撃をいなし始めていて、これには、俺もシノの「力はいらんねん」が本当だったことを思い知らされる。
俺の火龍波も、主にフィアへの感謝の念を込め、イエローデーモンどもを蹴散らす。
ちなみにミリアとパトリシアへの感謝の念ももちろんあるが、本人がいる前で念を込めるのは、なかなかに難しかった。
なんというか……片方への思い入れを強くすると、本能的に悪いことしている気がして。浮気性の自覚はもちろん……ある。
ゼイル旅団を半壊に追い込んだイエローデーモンを相手に、今は良い戦いをしている。
が、運命の日は8月22日だった。
俺たちは午前中の戦いを終え、そして午後も方円の陣形で戦っていた。
慣れてきたイエローデーモン。
だが、ヤツの身体の様子が突然おかしくなる!
黄色から橙へと肌の色を変化させているじゃないか!
そして身長もミリアを超え、パトリシアよりも高くなる。
「なっ!?」
全員が驚く。
マドリーナはチラッと退路を確認し、ニーナにアイコンタクトを送る。
もちろん……「退却するか?」という確認だ。
ニーナの選択は継戦だった。
根拠は何となく理解できる。
ミリアの鉄拳がイエローデーモンの時と同じく、相手の胸を裂くようにして粉砕している。
パトリシアのローキックを食らったオレンジデーモンの脚は、あり得ない方向に曲がっている。
俺の感謝の念付き火龍波も、ヤツの身体に大ダメージを与えている。
全く歯が立たないワケではなく、そして相手の数は少なかった。
だが、俺はコレで済まない予感がしていた。
コンピューターゲームの魔王……やつらは勇者が退治しに行くまで大人しく魔王城で待っててくれている。
だが、現実はそんなもんじゃない。
魔王だって移動することはある。俺たちが目標とは限らないが、普通に移動してくる。
なにせ、俺は過去に会ったことがあるのだから。
案の定、悪夢のような光景が……
オレンジデーモンであった時間は、戦闘中のほんのわずか。
ヤツらの肌の色は赤くなる。
レッドデーモンだ!
ミリアたちより一回りデカくなっている。
そして何体かの増援。ニーナの好戦的な判断がまずかったのか。
パトリシアが引っかかれ、二撃目を受ける瞬間、マドリーナの「かばう」が発動。
大女組に、この能力を使ったのはもちろん初めてだ。
そして、ここから右翼側に防御がいった揺り戻しというか……左翼のミリアへ2体がかりの攻撃が降りかかり、そしてミリアが転ばされる!
その真後ろには、エイト!
一瞬だった。
あの筋肉隆々のカトランも、イエローデーモンに即死させられた。
それより二段階も上のレッドデーモンの攻撃を魔導士が受けて、無事なワケがなかった……
一瞬でエイトは切り裂かれ……旅団は一気に壊滅へと向かっていった。
エイトの姿を見て、立ち上がったミリアが怒りのヒートアップ、そして意地の一撃をレッドデーモンに見舞って、粉砕するが……
パトリシアとマドリーナの攻撃は、レッドデーモンにあまり効いていない。
ぜ……全滅か?




