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第23話:今度こそ 終わったかな 俺 PART3

死んだかと思った。

次に目を覚ました時は、ライジングサン号の中。

ニーナの顔が映る。隣には苦々しい表情のカトラン。


「全く……俺とニーナが良いところだったのによ……」

「えっと……俺……」

「アキラさん……パトリシアには近づかないほうが良いです……」

こっちもちょっと冷たい反応だ。


「アナタは頭の骨を砕かれたんです。あとちょっと遅かったら、死んでましたよ。全く……」

ニーナの続きのセリフは「せっかくいい雰囲気だったのに」といったところか。


「ゴメンなさい! ゴメンなさい!!」

額を地面につけて土下座しているのはパトリシア。

関係各位……主にニーナに平謝りだ。


「す……すいませんでした!」

俺も騒動を起こしたことを深く詫びる。

もちろん土下座だ。


「まぁ良いだろう。次に誰かと組手をする時には、アキラ君はパトリシアから離れてくれたまえ……」

他のゼイル旅団の面々も渋い表情だ。

無意識下で人を死に至らしめる力を持ってるのだから、魔王並みに恐ろしい存在……といったところか。


夜、俺はパトリシアにも謝りに行く。

「あの……ゴメン。キミに迷惑をかけてしまった……」

「ホントですよ、もう……また皆から嫌われちゃいました……」

あの旅団の面々の冷たい雰囲気……彼女の殺戮兵器ぶりに皆、ドン引きしていた……


「いや……その不可抗力でさ……ワザとじゃないんだ」

「お尻……触ってみてください」

「え!?」

「悪いと思ってるのなら触ってみてください」

そう言われたら触るしかない。


恐る恐る触ると……柔らかい感触が。

「アキラさん……どうですか?」

「あの……柔らかい……よ」

「ですよね? 普段はこうなんです。あの時はびっくりして力が入っただけで……いきなり異物が入ってきたら誰でもびっくりします!」


はぁ……とため息のパトリシア。

「どうして皆と仲良くできないんだろう……」

寂しそうにつぶやく。


「いや……無理なもんは無理だって……」

「そんなこと言わないでください!」

「だから……仲良くできる人とだけ仲良くすれば良いんだよ……俺とかさ……」

「……え?」

顔が赤くなっていく。


「あとメルビンもきっと仲良くできる。ひょっとしたらリースも……」

思わず口走ったが、リースはちょっと話を盛ったかもしれない……けど、彼からは中立の印象を受けている。


「な……だから落ち込むなって」

それを聞くと、ちょっと嬉しそうにうつむくパトリシア。


「んーー…………でも……今日の一連の出来事は全部、アキラさんのせいですからね……」

「う……まぁ悪かったよ。勘弁してよ……」

「私の事……怖くなりました?」

「いや、そんなことない」

俺の即答にニコっと笑うパトリシア。


「うふふ…………いつまで私のお尻を触ってるんですか?」

「!! ……ゴ……ゴメンゴメン!!」

「ほら……怖がってる……」

慌てて手を引っ込めた俺を笑うパトリシア。

「からかうなって……じゃ……じゃあ、また明日」


別れを告げて、ライジングサン号の中に戻る途中、俺は考える。

本当は「いつか皆と仲良くできるよ」と声をかけるべきだったのかもしれない。でもそれは気休めだ。


とあるサッカーチームがあったとする。

そのサッカーチームは5年かけて選手を集め、適材適所にポジションを決めて、作戦も綿密に練って、そしてチームで戦う。なのだが、そこに野球志望のやつがポッと現れる。そいつはボールを持つとドリブルで相手選手を10人抜きくらいやって、シュートを決めちまう。

その時、サッカーチームの監督はそいつをどう思うか?


パトリシアがやってることは、これと一緒だ……体制派と交わることは……ないよな。

であれば、ちょっとでも味方になる人を増やしてあげる……俺にできることはそれだけだ。


いよいよイエローデーモンとの決戦の時が近づく。西の山道の出口が物理的に近い。

それまで何度かグリーンデーモンと戦い、危なげなく勝利。


俺の火龍波の威力も、実戦を通じて高まっている。ゼイル旅団の面々の士気は、最高潮に達している。


ゼイルさんは最後の確認をする。

「ニーナは全力で、まずは防御力を上げる魔法を前衛拳士にかける。今回は、カトランも防御に集中するんだ」

油断はない。


「シルビアは単独で、イエローデーモンを狙え。そして、マルガリータとメアリーとエイトは、一体に火の玉を集中。アキラ君も火龍波で援護。きっちり一体ずつ仕留めろ」

変に火力を分散させて倒しきれないことがないように。


「レオは遠目の相手に、眠りの雲を発生させろ。ティルとニーナは、前衛の拳士のケガの回復に注力するんだ」

ティルは攻撃より防御優先……消極的だが、相手の力がわからない以上、非常に妥当だ。


「それからパトリシア、イエローデーモンを発見したら、ライジングサン号を直ちに旋回。万が一に備えて、東へ逃げられるようにする。旋回し終わったら、攻撃に参加。本隊とは距離を取れ」

俺から見ても慎重……かつ最善手に見える。


「ゼイルさん……俺も回復にまわらなくても良いんすか?」

と、ここでエイトが確認する。エイトも地味に二系統使いだったか……

「回復の癒し性能を考えたら、エイトは攻撃に回ったほうが良いと判断した」

適材適所ってか。


この口ぶりだと、彼はそこまで回復が得意というわけではなさそうだ。ゼイルさんは優秀な指揮官だな。


指示を聞いてから、10分程度が経過する。

まだか……まだか……と構えてるが、待っているとなかなか来ないものだ。

「ニーナ……この戦いが終わったらさ……」

沈黙を破ったのはカトラン。


そして喋りはじめたその刹那。

ライジングサン号が停止し、旋回し始める。


「チ……続きは後だ」

リアの扉を開ける。

景色が回り、旋回中であることがわかる。


数体見えるイエローデーモン。大きさはおよそ250cmくらいか。鮮やかな黄色い肌。


日本人は蔑称「イエローモンキー」とか言われるけど、黄色人種の黄色じゃなく、完全に濃い黄色だ。


作戦通りに皆が動く。


敵の数はおよそ20体!


ニーナはありったけの防御魔法を前衛のゼイルさん、カトラン、ゴール、サクへかけ、先手必勝とばかりにシルビアの麻痺光線が炸裂する。


近づかれる前に火の玉もバンバン飛んで行き、俺も火龍波を打ち込む。

そして接敵。


俺は、横目で遊撃隊のパトリシアの姿を確認する。

パトリシアはイエローデーモンに対してローキック。ヤツの脚は変な角度で曲がり、遠目にも骨折してるのはわかった。

ん? 骨折??

グリーンデーモンのときは切断できてたよな……この時点で嫌な予感がする。


マズイ……前線が……!


シルビアの麻痺で2体くらいは停止に追い込んでいる。


レオの眠りの雲でもう3体くらいを停止させている。


が、火の玉の魔法と俺の火龍波で集中砲火したヤツは近づいてきて、前衛のゴールを引っ掻く。

一発で重傷級のダメージを負い、ニーナとティルが回復。


なだれ込んでくるイエローデーモンは2体でカトランに襲い掛かる。


これが今回の敗因となった。

カトランは無残に切り裂かれ……回復魔法では復帰できない程の損傷で即死。


想像以上の相手の攻撃力の前に、前線が崩壊したことを悟ったゼイルさんは全軍撤退を宣言。

だが、カトランが支えきれなかったことで、魔導士たちが次々に爪の餌食になる。


レオ、メアリー、マルガリータと次々に切り裂かれ、シルビアが意地の麻痺魔法で一体を戦闘不能に追いこむものの戦死を遂げる。

俺の目の前にもイエローデーモンが…………振りかぶったヤツの爪が光る……!


今度こそ終わった!?




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