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第11話:終わったかな 俺

光る円を踏んだ。

俺は今、山の中にいる。

知らない場所……

フィアと俺が共に戦っていた場所じゃないことはすぐわかった。


あの時はレッドデーモンに担がれ、街道からすぐの場所で魔王の所にテレポートした。元の場所であれば、街道がすぐ見えるはずだ。

クソ……外れだ。

四択を外した。

浮気男に天罰が下ったのか?


天罰って……神様から喰らうやつだよな……まさか魔王から喰らうなんてな……

あまりにいろんな出来事が起き過ぎて、自虐する。

俺はヒルビリッジにフィアと買い物をしに出かけた。


だけど、何の理屈も無く魔王に邂逅し、フィアはレッドデーモンに囲まれ、俺は魔王の住み処に連れて行かれた。

俺が死んでいない事、俺にはこの世界の攻撃魔法が効かない事、そしてあとは好きにしろと言われ、俺は魔法陣と思わしき円を踏んだ。


足元を確認すると、何の変哲もないただの地面だ。

なるほど……あのテレポートは魔王の魔力によるもので、ヤツが何かをしない限り、テレポートは発動しない。

踏み直して、やり直しはできない。


つまり、全然わからないところに一人、俺はいる。

クソ……俺の人生を見て、楽しむんじゃねぇのかよ……俺が死んじまったら、続きは見れないぞ!?


この理不尽さが魔王って感じがするな。妙な説得力が残った。

あくまでも推論だけど……俺が死んだらそれはそれで、別のヤツを連れてくるだけ……きっとそうなんだろうな。


時計を見る。

11:00だ。

日が高いのが、せめてもの救い。

街道を目指して、その後どっかの村を目標にするか、それとも山の中で食べ物を探すか……なんだが、街道の方向もわからない。


現実的な路線としては、食えるものを探しながら、まずは雨露をしのげる場所を探す。

コレしかない。

ミリアたちも、まずはねぐらになる場所を探していた。

なので、それを真似する。


フィア……大丈夫かな。

最後の光景を思い出しながら歩く。

ミリアから魔王の話を聞いた時、俺はコンピューターゲームを思い浮かべた。

王様が勇者を募って……そして魔王退治に行く。普通はそういうもんかと思っていた。


だけど、あのフィアの様子を見て、何となくだけどわかった。

多分、簡単には太刀打ちできないんだろうって。だから……魔王の住み処から、とにかく離れる。そうすれば対抗できる強さのカラーデーモンのみを相手できる。


魔王退治なんて夢のまた夢で……現実路線で、この世界の人は対応してる。

誰も倒せない魔王なんだ……


レッドデーモンは桁違いの強さだった。

イノシシを軽く仕留めるマッチョ女でも倒せなかったのだ。


でも、フィア一人だったら何とかなったのかな……そういう考えも湧いてくる。


彼女の戦いで特徴的だったのは空中殺法だ。イノシシを踏んづけた時も、ブルーデーモンを上から押しつぶした時も……


俺がいたせいで……俺を一人残すわけにもいかず、彼女は得意技が出せていなかった。

俺のせいか……俺がもっと強ければ……悔恨の念に耐えない。

ミリアとマドリーナは言ってしまえば、俺がいようといまいと何も運命は変わらなかった。ロノスト王国の中の派閥争いなんて、俺は何の影響も与えていない。


だけど、フィアは違う。

一人の女の人生を俺が狂わせてしまった。

そもそも正直に俺が話していれば、ヒルビリッジへの買い物も不要だったのだから。


クソ……そういうのを含めて、魔王は楽しんでるのか?

異物をこの世界に投入して、何かの歯車が変わるのを……


あてもなく30分ほど歩き続ける。

だが、ここで一気に希望というべき光景が見える。

建物だ。家が五軒ほど。


だが、ちょっと不思議なのは、その五軒の他にほぼ全壊している家が20軒ほどあること。

廃村……か?

慎重に歩を進める。


この世界、ゾンビとか出てきてもおかしくない。

パッと見、人がいない以上、警戒心は高くなる。

……と、そこへ3m級の茶色い生き物が!

すぐさま俺は身を隠す。

ヒグマ……デカいぞ。


こっそりと窺うと、建物の中から人らしきモノが姿を現す。

こっちもデカい。

270cmある。

だけど、俺はもうミリアやフィアで慣れっこだ。


デカさにビビるというより、この世界の人に会えたことの喜びが余裕で勝つ。

建物の入り口で威嚇するヒグマ。


そこに相対する……なんか布団みたいなのを被った人物。

俺はそっちに駆け出す。

ヒグマが危ないって?

そんなことない。

絶対、この巨人の世界の人間が勝つ。信頼感さえあった。


布団を被ってた人物は、スッと布団を下ろし……って水着!?

赤いビキニで布面積が少ない。

灼熱を思わせる赤い髪に……色白。


発達しまくってる筋肉。

翼が広がってるかのような広背筋と陰影を作る腹斜筋により、相対的にウエストが細く見える。胸のあたりの膨らみが女であることを示していた。

その女はヒグマに対して…………え?

目の錯覚か?

掴んでブン投げた。


まぁ、あのヒグマの巨体をブン投げるとこまでは良いとしよう。

だけど異常だったのは、その間合いだ。どう考えても腕の届かぬ位置から、ヒグマを掴んでいた。


俺が日本で昔やってた格闘ゲーム。

あの手のゲームの投げキャラ……信じられない間合いから相手を吸い込むのだが、それの実物を見た。

真上にブン投げられたヒグマは上空10mくらいか?

そのまま自由落下して、大ダメージを受ける。


赤髪のムキムキ女はしゃがんで、落下の衝撃で動けなくなったヒグマの頭を掴むと一周。

血管が浮き上がった前腕から繰り出される万力のようなパワー。何の抵抗も感じさせずに、ゴキゴキと首を折っていた。


まぁ……これくらい、ミリアとかフィアとかでも余裕で似たようなことやるよな。

すっかり怪力女に対して免疫がついている俺。


「おーいっ!」

とにかく一人で心細かった俺は、声をかける。

するとその声にビクッと反応する。


ちょうどクマの首をへし折ったところだったが、スクッと立ち上がる。

「みーたーなー……」

直視できないレベルの露出。


その声の異質さに気付いた俺は、急ブレーキだ。

漫画とかでよくあるラッキースケベに対して、女の子がボコボコにして来る感じではなく……ガチの声色だったからだ。

「あ……えっと……」

戸惑う俺。


ミリアにしてもマドリーナにしてもフィアにしても、殺意をはらんだ視線を俺に送ってきたことは一度たりともなかった。


だが、目の前の赤髪は獲物を狙う目でこっちを見ており、速攻で飛び掛かって来た!

背を向けて逃げ出すが、全然瞬発力に差がある。体格差も幼稚園児と大人くらいの差はある。

あっという間に追いつかれ、そして後ろから極太の腕を回され、首を絞められる。


ジ・エンド…………??


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