総帥、現代知識で衛生管理を行う~下水処理は魔法無双で解決します~
異世界といえば現代知識チートでしょ!
学園の学生寮。
そこは「貴族の嗜み」という名の手抜きと不衛生が支配する魔窟だった。
佐伯悠馬は、自室のバスルームを一瞥し、軍服の袖で口元を覆った。
「……お母さん。この世界の『ラグジュアリー』の定義には、下水道の概念が含まれていないようです。……ノア、ショップから『ハミルトン製・超強力パイプクリーナー』と『業務用・防護服』を」
「うっす兄さん! 異世界のドブ掃除、体育会系のノリでブチかましますよ!(野太い声)」
ノアは、最高級のシルクドレスの裾をベルトで股の間に固定し(いわゆるカボチャパンツ状態)、美少女の顔で「オラァ!」と叫びながら、劇物を排水口に注ぎ込んだ。
「……さて。現代知識の基本、それは『公衆衛生』です。魔法でこの街全体の汚水を一括処理すれば、疫病のリスクが激減し、膨大な『徳』が得られるはずです」
『ピコーン☆ 悠馬くん、やる気だね! 街全体の浄化イベント発生だよん♡』
「了解。……全属性魔法・極大出力。ハミルトン流・広域環境クリーンアップ、開始」
悠馬が杖を地面に突き立てた瞬間、学園を中心に街全体を覆う巨大な魔法陣が展開された。
それは、中世レベルの魔法体系を数千年先取りする、圧倒的な「魔法無双」だった。
「……分解、滅菌、そして再構築。――『パーフェクト・サニテーション』」
ズドドドドン!!
街中の地下から、凄まじい地鳴りが響く。
悠馬の魔法は、街の地下に溜まっていた数百年分の汚物とバクテリアを分子レベルで強制分解。同時に、ショップから召喚した「ハミルトン・高密度塩化ビニル管」が、土を割りながら地下へと自動敷設されていく。
翌朝。
街は、見たこともないほど白く輝き、不快な臭いは完全に一掃されていた。
悠馬は、澄み渡る空を見上げ、確信した。
これこそが「徳」だ、と。
ピコン!
【徳:-50】
「…………は?」
悠馬の瞳から光が消えた。
『あはは! 悠馬くん、またやっちゃったね☆』
女神が、今度はデリバリーピザを食べながら現れた。
『あのね、悠馬くんが「完璧な下水道」を作っちゃったせいで、この街の伝統産業だった「肥汲みギルド」の三千人が即日失業しちゃったの☆ あと、肥料が急になくなって農家が大パニック! 飢饉の予兆だよん☆彡』
「……産業構造の急激な変化による副作用、ですか」
『そうそう! 読者満足度は「文明崩壊チートすげぇ!」ってことで+1000だけどね!☆』
さらに追い打ちをかけるように、ノアが走ってきた。
「兄さん! 大変です! 魔法で綺麗になりすぎたせいで、街の『魔力を食う益虫』が全滅しました! 代わりに『魔法に耐性のある超巨大G』が変異して大量発生です! 聖女エルゼさんが今、火炎放射魔法で街ごと焼こうとしてます!!」
「……なぜ、こうなった」
視界の端で、絶望の通知が止まらない。
【読者満足度:500%(魔法でドブ掃除→パニック映画展開、神!)】
【称号:『ドブ板の亡命王子』『生態系デストロイヤー』追加】
【警告:住民が賛否両派に分裂、内戦(暴動)準備中】
「……女神。一つだけ。……現代知識チートの取扱説明書は、どこにありますか?」
『ないよ~☆ 悠馬くんが苦しむのが一番のエンタメなんだもん♡ 次は「学食を三ツ星にして周辺の食堂全部潰す」イベントね! 頑張って!☆彡』
悠馬は、美しく浄化された――そして暴動寸前の――街を見つめた。
英国紳士らしく、懐から取り出した『Tescoの胃薬』を、水なしで噛み砕く。
現代の常識は、この雑な異世界においては。
ただの「大量破壊兵器」でしかなかった。
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