総帥、遺失物(カバン)を再評価する~仕事道具は聖遺物の輝きを放ちます~
社畜龍^^
古龍が空から迫り、地響きが轟く「聖なるトイレ」の裏手。
佐伯悠馬は、瓦礫の山から、ボロボロになりながらも奇跡的に原形を留めていた『ハミルトン製・最高級本革ブリーフケース』を掘り出した。
「……お母さん。英国紳士にとって、カバンは身体の一部であり、机であり、そして『最後の砦』です。 ……ショップスキルが停止した今、私のビジネスマンとしての真価が、この中身に問われています」
「兄さん! そのカバン、まだ持ってたんすか!? 頑丈っすね、僕の腹筋みたいっす!
(野太い声での咆哮)」
「……ノア、静かに。……クラリス、開錠の儀式を。中には『現代社会の知恵』が詰まっています」
震える指でロックを解除し、中から取り出されたのは、異世界の住人からすれば
「オーパーツ」にしか見えない品々だった。
使いかけの『養生テープ』
ハミルトン・ロゴ入りの『高級ボールペン』
予備の『胃薬(ロンドン処方)』
そして……『一束の、真っ白な名刺』
『あはは! 悠馬くん、ただの事務用品じゃん!☆』
女神が、今度は「文房具屋の店員」の格好で現れた。
『そんなので古龍を倒せると思ってるの?♡ ギガ死した上に、武器が文房具なんてウケる~!☆彡』
「……女神。貴女は何も分かっていない。……ビジネスにおいて、
『名刺』とは相手の魂を契約のテーブルに引きずり出すための、最強の触媒(聖遺物)です」
悠馬は、空から降り立ち、金ピカのノアを食おうと顎を開いた古龍の前に、
スッと音もなく立ちはだかった。
そして、魅了粒子を全開にした指先で、真っ白な名刺を古龍の鼻先に差し出した。
「……古龍殿。突然の訪問、失礼いたします。……ハミルトン・グループ代表、佐伯悠馬です。……貴殿の『捕食活動』を、我が社の『物流事業』への現物出資として切り替えませんか?」
古龍の瞳に、悠馬の「魅了」と、名刺から放たれる「エリートビジネスマンの気圧」が直撃した。
龍は、見たこともない「白い紙」の美しさと、悠馬の圧倒的な「上司力」に屈し、その場で大人しく伏せをした。
ピコン!
【徳:+50,000】
【理由:伝説の古龍を『名刺一枚』で懐柔し、世界最速の航空物流ルートを開拓したため】
「……っ! +50,000! カバンの備品が、一瞬で莫大な資産(龍)に変わりました」
「兄さん、すげーっす! 龍が兄さんに懐いて、尻尾を振ってるっす!
これで僕、食われなくて済むっすね!(野太い声での歓喜)」
ピコン!
【称号:『名刺で龍を釣る男』『事務用品の魔術師(笑)』が追加されました】
【現在の状況:古龍が『ハミルトン空輸・初号機』として登録され、首に「養生テープ」で社員証を貼られました】
「……女神。一つだけ。……私は、ロンドンの……。……いえ、もう言いません。……ただ、この『養生テープ』の粘着力が、異世界の物理法則を超えて龍の鱗に密着している事実に、私は…………」
ハミルトン総帥、異世界(実質)三日目・完。
彼の「ブリーフケース」は、低速モードの絶望を「営業活動」へと変え、
伝説の龍をハミルトンの社畜へと変貌させていた。
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