総帥、神を相手に債務整理を迫る~踏み倒しは合理的な経営判断です~
所謂リセットで失敗的な
悠馬のオフィスに、異世界の神々の意思を代行する「審判の光」が降り注ぐ。
マイナス一億徳。返済不能。通常なら、世界ごと消滅して再起動案件である。
だが、佐伯悠馬は、胃の代わりの「漬物石」を腹に抱えたまま、冷徹な笑みを浮かべて分厚い提案書(ショップ製・耐火仕様)を突きつけた。
「……お母さん。英国紳士は、支払えない負債を前にして泣き言を言いません。……代わりに、『貴方が私を潰せば、貴方も困るでしょう?』と微笑むのです。……ノア、プロジェクターの準備を」
「兄さん! 了解っす! 神様だろうがなんだろうが、ハミルトンの債権回収ルートに引きずり込んでやるっす!(野太い声での咆哮)」
『えっ、悠馬くん!? 往生際が悪くない!? ほら、早く「世界滅亡」のハンコ押してよ!☆』
「……女神。私はハミルトン・グループの総帥です。……審判の神々よ、聞きなさい。現在、この世界のインフラ、食糧流通、そして『萌え(猫耳牛)』を含む全経済活動は、私のショップスキルと直結しています」
悠馬が指を鳴らすと、世界中の「明かり」が半分消え、全自動トラクターが一斉に停止した。
「……私が消滅し、ハミルトン・グループが倒産すれば、この世界のGDPは99%下落します。人類は三日で餓死し、貴方たちが『徳』を回収する対象すら存在しなくなる。……いわゆる、『大きすぎて潰せない(Too Big to Fail)』状態です」
「……っ、な、なんだと……!? 神を脅迫するのか!」
「……いえ、交渉です。提案します。私のマイナス一億徳を帳消しにする代わりに、この世界の『信仰心』の20%を、ハミルトンの優先株として発行しなさい。……これで、私の負債と世界の未来を相殺にします」
ピコーン!
【警告:神を相手取った『えげつない債務整理』が成立しました】
【結果:徳のカウンタがリセットされ『±0』になりました】
「……っ、やりました。……お母さん、ついに、ついに貸借対照表が健全化されました……!」
悠馬が、勝利の余韻に浸りながら『Tescoの格安アールグレイ(粉末)』を口にした、その瞬間。
『あはは! 悠馬くん、プラマイゼロおめでとう!☆』
女神が、今度は「管財人」の服を脱ぎ捨て、「バブル時代のOL」みたいなボディコン姿で現れた。
『でもね、負債を帳消しにするための条件、ちゃんと読んだ? 「世界の運営権を神から譲受する」って項目☆彡』
「……は?」
ピコン!
【称号:『異世界の真の所有者』が追加されました】
【理由:神の負債を肩代わりし、世界の全資産をハミルトン名義に書き換えたため】
【ペナルティ:所有者には「無限の管理責任」が生じます。以後、一秒ごとに『維持管理のための徳』が発生し、働かないと即・マイナスに転落します】
「…………なぜ、こうなった」
視界の端。
【読者満足度:測定不能(神相手に踏み倒し交渉して、逆に「世界そのもの」を押し付けられる王子www)】
【現在の状況:徳ポイントが、一秒ごとに「-100」ずつ減るカウントダウン制に移行しました】
「……女神。一つだけ。……私は、ロンドンの、あの冷淡で……無関心な……。……なぜ、世界の寿命が、私の残業時間と直結しているんですか…………」
『ダメ~☆ 今夜から「世界のメンテナンス(24時間営業)」開始だよ♡ 頑張って、一秒でも長く生かしてね!☆彡』
悠馬は、一秒ごとに減り続ける「徳」のタイマーを凝視しながら、静かに六錠目の胃薬(を塗るための皮膚)を摩った。
ハミルトン総帥、異世界二十三日目。
彼の「大交渉」は、負債を消す代わりに、世界という名の「永久に終わらないデスマーチ」を買い取ってしまっていた。
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