総帥、徳のレバレッジ取引に手を出す~全人類の未来を証拠金(マージン)にしました~
悠馬君が暴走している
ハミルトン帝国のCEOオフィス。
佐伯悠馬は、血走った目でモニターに映る「-1,000,000」という真っ赤な数字を凝視していた。
その横には、猫耳牛のミルクで作った「超回復プロテイン」をジョッキで飲み干すノアがいる。
「……お母さん。まっとうな経営(善行)では、もはやこの負債を完済できません。……ノア、私は決断しました。残されたハミルトン・グループの全資産を証拠金に、一発逆転の『徳・レバレッジ取引』を敢行します」
「兄さん! 投資っすね! いいっすよ、僕のこの鋼の筋肉も、全部相場に突っ込んでやるっす!(野太い声での咆哮)」
『ピコーン☆ 悠馬くん、ついに壊れちゃった?☆ 「徳の信用取引」へようこそ!♡』
女神が、今度は「カジノのディーラー」と「証券マン」を足して割ったような、下品に光るタキシード姿で現れた。
『今のマイナス100万徳を軍資金に、さらに「100倍のレバレッジ」をかけるんだね? 成功すれば一瞬でロンドンだけど、失敗したら悠馬くんの魂は、異世界の全人類と一緒に「女神のスマホの壁紙」として永久保存だよん☆彡』
「……了解。……世界を賭けた、最大効率の裁定取引です」
悠馬が震える指でショップスキルの特殊機能を操作した。
彼が打ち出した「大博打」の内容は、『全世界の不幸を一括買い上げ、幸福として再パッケージ化(証券化)して市場に放出する』という、経済学的禁忌だった。
悠馬の魔法が発動し、世界中から「悲しみ」や「病」の概念が、真っ黒なビットデータとなって悠馬のオフィスに吸い込まれていく。一瞬、世界から不幸が消え、人類が未曾有の歓喜に包まれた。
【ピコーン! 徳:+10,000,000,000(百億徳)!!!】
「……っ、勝った! 勝負ありです! これで負債を完済し、余剰利益でロンドンに『ハミルトン・タワー』を建設して帰還……!」
悠馬が歓喜のあまり、不味いアールグレイを床にぶちまけた、その瞬間。
空に浮かんでいた「徳」のカウンタが、火を吹いて大爆発した。
『あはは! 悠馬くん、ロスカットだよん☆』
「……は? 完済したはずですが」
『あのね、君が「不幸」を全部買い上げちゃったせいで、世界中の宗教や哲学が「修行の意味がなくなった!」って大暴落☆ 人類が快楽に溺れて、一日で「自堕落な肉の塊」へと退化したせいで、徳の価値が暴落したの☆彡』
ピコン!
【警告:『徳の価値暴落』により、追証が発生しました】
【支払額:全世界の生命力 + 悠馬の胃の全機能】
「…………なぜ、こうなった」
視界の端。
【読者満足度:測定不能(世界を賭けてFXで溶かす王子、馬鹿すぎて涙出るwww)】
【称号:『全宇宙一のダメ投資家』『世界を質に入れた男』が追加されました】
【現在の状況:徳が「-100,000,000(一億)」を突破。悠馬くんの胃が、物理的にショップスキルの『漬物石』と交換されました】
「……女神。一つだけ。……私は、ただ、母さんの……焦げたトーストを……胃があった頃の感覚で、味わいたいんです…………」
『ダメ~☆ 明日は「一億徳の返済」のために、異世界の神様たち相手に「借金踏み倒し交渉」だよ♡ 頑張って、土下座してね!☆彡』
悠馬は、胃の代わりに腹に詰まった『漬物石』の重みに耐えながら、静かに「胃薬(を飲むための胃がないので、皮膚に塗る)」を取り出した。
ハミルトン総帥、異世界二十二日目。
彼の「大博打」は、世界を幸福で滅ぼし、自らの内臓を資産価値ゼロの石へと変えてしまっていた。
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