総帥、ダンジョンを重機で蹂躙する~迷宮踏破はインフラ整備の別名です~
この先どうしたものかと小一時間。
ハミルトン農場の地下に発見された、未踏の古代迷宮。そこには数千年の時を経た魔物と、莫大な財宝が眠っているという。
佐伯悠馬は、軍服の裾をまくり上げ、ショップスキルで召喚した『ハミルトン製・工業用完全防護ヘルメット』を深く被り直した。
「……お母さん。冒険とは本来、ロマンに満ちたものだそうですが、私には『未活用の地下資産』にしか見えません。……ノア、これより迷宮の『資産価値の最大化』、および『安全性向上(全魔物の駆逐)』を行います」
「兄さん! 了解っす! 迷宮の主なんて、僕がプロテインの容器代わりにシェイクしてやるっす!(野太い声での咆哮・ドレスの下にラッシュガード着用)」
『ピコーン☆ 悠馬くん、背に腹は代えられないね! ダンジョン攻略イベント開始だよん♡ でも悠馬くんが松明一本で潜るわけないよね☆彡』
「……了解。……まずは、迷宮の構造を『物理的に』最適化します。ショップスキル、起動」
悠馬が呼び出したのは、伝説の武器でも聖なる光でもなかった。
迷宮の入り口に、轟音と共に現れたのは――『ハミルトン製・超巨大シールドマシン(トンネル掘削機)』。
ズガガガガガガガ!!
悠馬はコンソールを叩き、迷宮の入り口から最深部までを一直線に貫く「ハミルトン・高速地下通路」の建設を開始した。
隠し扉も、毒の罠も、複雑な迷路も、ハミルトンの掘削技術の前では「無駄なコスト」に過ぎない。壁と一緒に粉砕され、瞬時にコンクリートで補強されていく。
「……計算通りです。ボスの部屋まで徒歩五分。通勤圏内です」
「兄さん! 大変っす! 迷宮の守護者が、自分の寝床にいきなりハイウェイが貫通したショックで、アイデンティティを喪失して引きこもっちゃいました!(野太い声)」
ピコン!
【徳:+100,000!】
【理由:数千年にわたり人々を脅かした魔物の巣窟を、安全で快適な『地下駐車場付き観光地』へとリノベーションしたため】
「……っ! 勝ちました! ついに六桁の徳を回収! このまま世界のダンジョンを全て駐車場に変えれば、年内に帰還ゲートが……!」
悠馬が希望の光に目を細めた瞬間、女神が「工事現場の交通整理員」の格好で現れた。
『あはは! 悠馬くん、仕事早いね~☆』
「……その笑顔、嫌な予感しかしません」
『君が迷宮を「更地」にしちゃったせいで、迷宮の魔力が地上に漏れ出して、周辺の村の牛たちが全部「猫耳メイド姿の牛」に進化しちゃった☆ 酪農家たちが「可愛いけど絞りにくい!」って暴動を起こしてるよん☆彡』
「……魔力の流出による、生物学的バグ(萌え化)ですか」
ピコン!
【警告:『生態系への致命的なハラスメント』によりペナルティ発生】
【現在の徳:+100,000 → -1,000,000(世界を萌えで壊滅させた罪)】
「…………なぜ、こうなった」
視界の端。
【読者満足度:∞(「ダンジョンを駐車場にする」という前代未聞の蹂躙、神展開すぎて腹筋死ぬww)】
【称号:『迷宮を埋め立てる男』『萌えのパンデミック創始者』が追加されました】
【現在の状況:猫耳牛たちが「悠馬様、搾って♡」と、ハミルトン農場のゲートに押し寄せています】
「……女神。一つだけ。……私は、ただ、母さんの……あの、少し焦げた……。……もう、ロンドンの地下鉄の騒音すら、これよりはマシです…………」
『ダメ~☆ 明日は「猫耳牛まつり」の主催だよ♡ 頑張って、全世界の酪農利権を掌握(搾乳)してね!☆彡』
悠馬は、自分に擦り寄ってくる猫耳牛(ゴロゴロ言う)と、それを「兄さん、次は牛をプロテインに加工して、全人類に猫耳を生やしましょう!」と笑うノアに囲まれ、静かに八錠目の胃薬を飲み込んだ。
ハミルトン総帥、異世界二十一日目。
彼の「ダンジョン攻略」は、ついに人類の食糧事情を「萌え」という名の狂気で支配しようとしていた。
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