総帥、徳の粉飾決算が発覚する~感謝は負債の始まりでした~
まぁ。うかつに動くとこうならないかなって言うか?
学園の「CEOオフィス」にて。
佐伯悠馬は、空に浮かぶ「徳・カウンタ」が【9,999】で静止しているのを見つめていた。あと一点。あと一回、誰かに心から感謝されれば、ロンドンへ帰れる。
「……お母さん。ようやく、この非効率な異世界の監査を終えられます。……ノア、最後の一仕上げです。ショップから『ハミルトン製・完全無欠の浄水器』を街の広場に設置しなさい。泥水を飲んでいた子供たちに、最高のH2Oを提供します」
「うっす兄さん! 仕上げの慈善事業、プレスリリースも完璧に打っておきました!(野太い声)」
設置完了。澄み渡る水が溢れ出し、子供たちが「王子様、ありがとう!」と駆け寄ってくる。
ピコーン!【徳:10,000】
「……っ、帰れる。ようやく……」
悠馬の体が帰還の光に包まれる。――が、その光は一瞬でどす黒く濁り、弾け飛んだ。
『――あはは! 悠馬くん、残念☆ 「徳の追徴課税」の時間だよん♡』女神が税務調査官のような眼鏡をかけて現れ、空のカウンタが音を立てて逆回転する。【徳:10,000 → 4,000 → 0 → -15,000】
「…………は? なぜですか。私は対価を求めず、インフラを提供したはずです」
『最高の水をタダで配ったせいで、井戸の老夫婦が即失業☆ さらに人々は努力を放棄、自立心が崩壊! これ、重罪ね☆』
「……善意による市場独占の副作用、ですか」
『それだけじゃないよ! 学園中に「悠馬様の愛人」が3,000人発生☆ 親切=プロポーズ扱いで婚約全破談、各家門が決闘準備中!』
そこへノアが飛び込んできた。「兄さん! 徳マイナスでショップ規約が発動! 紅茶も胃薬も全部『徳の利子』で遡及請求! 100万徳払えないと公共奴隷化です!(野太い声)」
「……なぜ、こうなった」
視界の端で通知が暴走する。【読者満足度:2,000,000%】【称号:『無自覚な搾取者』『粉飾決算犯』】【現在:井戸の老夫婦が血涙で呪詛中】
「……女神。一つだけ。……私は、ただ、母さんの作った……少し焦げた……あの食パンが…………」
『ダメ~☆ 被害者の会(3,000人)による慰謝料請求イベント開始♡ 頑張って返済してね!☆彡』
悠馬は、闇に包まれたオフィスで、懐から出した『Tescoの最後の一錠(胃薬)』を飲み込もうとしたが、ショップの機能停止でそれすら砂に変わった。
現実的で、逃げ場のない、あまりに重い負債。
ハミルトン総帥、佐伯悠馬。彼の「善行」という名の投資は、異世界という名のブラック市場で、最悪のデフォルト(債務不履行)を起こしていた。
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