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MAKI  作者: 明石多朗
21/21

21話  清原つむぎ

    **** 清原 つむぎ ****


 あたしのおかあさんは歌が上手。

 ピアノもうまい。声もきれい。見た目はまあまあ。

 でもあたしは歌が下手。

 見た目はいいけど。

 いっしょうけんめい歌うけど、教室のみんなよりうまく歌えない。

 それでもおかあさんはあたしがいっしょうけんめい歌うと嬉しそう。

 でもあたしは歌が下手。

 見た目はいいけど。


 今日はおうちに、人気歌手のちーちゃんと、メーちゃん、ハル姉さんが来る。

 おかあさんが先生をする日だ。

 すごい。

 なのにおかあさんはまだソファで眠ってる。有名人が来るというのに、いつもこう。お父さんが三人を迎えに行ったとたん、「じゃあひと寝入り」と言ってソファにごろん。そしてあっという間に寝てしまう。

 あたしのほうが大丈夫なの? っていつもいつもふあんになる。

 窓を開けて空気の入れ替えをして、ピアノの椅子の位置を整えて、ピアノを拭いて、それからえっと……。

 おでこのあせをふいて、ふぅとひと息ついていると、おとうさんから電話が入った。もう少ししたら着くそうだ。あたしはおかあさんを起こす。

 するとおかあさんはパッと起きて、ぐるぐる腕を回してピアノの前に座った。

 一音鳴らして、ゆっくり声を出し始める。

 オクターブを一周して、演奏を始める。


「つむぎも歌う?」

「うんっ」


 おかあさんの横に座る。

 あたしのおかあさんは歌が上手。


「ねえ、おかあさん」

「んー?」

「おかあさんは、なんで歌の先生なの?」


 三人の先生なら上手ってことだし、テレビにも出れるでしょ?

 お母さんが作った歌をみんなが歌ってる。

 だったらおかあさんも歌手になれるでしょ?

 おかあさんはピアノを弾く指を止めずに答えた。



 ──それはね、楽しいからだよ♪──



 その答えは弾く指と同じくらいに早く軽かった。


「歌を歌うこともー、教えることも~、作ることもっ、みーんなできて、みーんなができなかったことができるようになっていくのをみるのが、お母さんはとっても楽しいからだよ~☆」


 ピィンと高い音色が響いた。

 あたしも歌を歌ったりピアノを弾いたりするのは楽しい。

 でも下手なのだ。


「じゃあなんでおかあさんは、楽しいの? 上手だから? 先生だから?」


 鍵盤の上、きれいな指を弾ませながら、おかあさんが笑った。


「じゃあつむぎは、なんで歌を歌うの?」


 そんなのかんたん。

 あたしは答えを言う。

 するとおかあさんは「えへへ、奇遇だね」と笑って答えた。



 ──アタシも歌が好きだからだよ──

 


 さあ歌おっ。

 言われてあたしはいっしょうけんめいに声を出す。

 大きな口で大きな声を出す。おかあさんが嬉しそうに笑う。

 けっきょくのところ、あたしが下手なりゆうはよくわからない。

 けれど、あたしもおかあさんも歌が大好き。



 ならきっと、いつかはアタシもおかあさんみたいに、歌が上手になれるだろう。



 おかあさんは、今日も天使みたいにきれいな声で歌を奏でる。

 開けた窓からあたたかい春の風がやってきた。


 入ってきた風になびかれて、替えたてのレースのカーテンがふわりと舞っておかあさんの背中をなでた。

 それはおかあさんから生えた、天使の羽みたいだった。



 おうちの外、おとうさんの車の音がした。



   Fin


最後までお読みいただきありがとうございました。


『MAKI』

 いかがだったでしょうか?


 信じてくれる仲間

 夢への再挑戦

 好きということ、楽しいと思うこと


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 細かく分けた章組みのため、一章一章はもの足りない文章量だったかもしれません。

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 長らくのお付き合いありがとうございました。

 ご感想等ございましたら、ぜひいただけると嬉しいです。


 また何かの機会にお会いしましょう^^

 

 

 明石多朗

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