伊織のある日
遅くて申し訳なきことこの上なし
平井家直属令嬢部執事課副執事、伊織の朝は通い詰めのジムから始まる。
毎週火曜日を休日に定めている彼は朝から晩までそれをジムで過ごします。
九月のとある火曜日にも、朝から黒いジャージを着たその人がジムへやって来ました。
マット広場でせっせと丁寧に準備体操をし、職員の方々に片手で挨拶をした彼は、ジムの隅っこに置かれているランニングマシーンの列の奥のそれに乗りました。
スタートスピードは30キロにしたようです。
ランニングマシーンがキュイーンといった音を立てて伊織の脚に、走れと促します。だんだんと脚が幻影のように見えてきます。
三分ほど走った頃でしょうか、彼はスピードを50キロ、90キロと順に上げてゆきました。
最終的に120キロにもなれば、脚はあまり見えません。
そんな時の事です。伊織の隣のランニングマシーンが動き始めました。
普段から他人のことにはあまり興味を持たない伊織ですが、今回はその限りではありません。
隣に来た金髪黒ジャージの男は、スターティングから120キロを出したのです。次には130キロへと速度をあげたのです。
こればかりは流石の伊織も驚きます。
(こ、こいつ······この俺を煽ってやがるのか······?)
伊織がそんな事を考えていますと、金髪の男はニヤリと微笑み、伊織に向かってアカンベーしました。
「上等だ!返り討ちにしてやる!」
140キロへと速度を上げた伊織を見た金髪の男はムッとした表情をして150キロに上げました。
ジムの室内で強烈な風が吹き荒れます。
それを見た伊織は顔を青くして「うっそだろ······」と151キロに上げました。
金髪の男は「コイツ······」と152キロに上げました。
伊織は「うおおお」と153キロに上げ、金髪も「これで俺の勝っ!」と、このランニングマシーン最高速度の154キロに上げました。
その瞬間の事です。ランニングマシーンはガゴッゴゴッキィィンと音を立て、周りを巻き込み連鎖大爆発しました。
黒煙の中から姿を現わした黒ジャージの真っ黒な二人は、握手をするかのように互いの頬を殴って、重量上げのゾーンへ足を進めました。
「なぁ真っ黒野郎」
「伊織だ。金髪野郎」
「ほーう、俺はベルゼだぜ。どうだ伊織さんや。白黒付けたくねぇか?」
「奇遇だな金髪野郎。俺とお前の格差をハッキリさせやろうじゃねぇか」
「おうおう、やろうじゃねぇか」
これが伊織とベルゼの因縁の始まりだったのです。
人気の出るキャラクターって破壊総額が比例してるらしいですね············やっちゃいましょう




