海水浴セカンドデイ前編
リライトする時に書こうと思ってたものですけど、気分で予定変更です(鬱)
海水と砂浜の協奏曲が優しく鼓膜を撫でる。
「はぁ〜、変な夢見た〜。」ゆっくり重い心と軽い体を起き上がらせ、身体をググッと後ろへ反らした。
瞳を開けると、ロココ調のドレッサーが目に入った。
そのドレッサーの鏡には、少し長い耳にピンクの瞳、淡いピンクの髪を揺らす少女が写っていた。
いつカモフラージュが解けたのだろう、と疑問を持ちながら私服に着替え髪を黒色に染める。
「おっはよー」
リビングかもしれない大きな部屋へと続く扉を開けると共に挨拶を送った。
リビングかもしれない何かには稜葵、レイ、伊織、そしてジジイがいた。レイ以外各々、既にアホ毛は生えていない。
稜葵はジジイとトランプで遊んでおり、レイはその巨体で私に飛び込んで「ウグッ」と寝起きダメージを与えてきた。
伊織は此方に視線を移し頭を人差し指でトントンしながら、「髪、治ったんだな」と言ってきた。
「ゑ、いつから髪変わってた······?」
「海溝でお前が気味悪い物出した時からだな」
「そ、そんな前から······」
その時から髪色が変わっていたのであれば、この島にいる全員が之を一度は見たという事になる。
「ねぇ稜葵······」
「綾ちゃん、ちょっといいですか?」
私の声かけを差し押さえて稜葵が口を開く。
私が人でない事がバレて糾弾されるのだろうか、はたまた研究材料として捕獲されるのだろうか。
稜葵は、そんな心配は杞憂であると言わんばかりに、トランプをジジイの顔に投げつ「目がーっ!」け、テレビの電源を入れて国営放送のチャンネルを映し出した。
『昨晩から発生していました、マリアナ海溝近海の巨大な渦潮の消滅が先程衛星写真で確認されました。しかし────』
「こちら、昨日の出来事と何か関係があるのでしょうか」
光る三原色の板を背景に稜葵は問いかけてきた。
昨日の出来事。──飢餓に襲われ、謎の化物に襲われ、遺跡の崩壊に巻き込まれた私たち三人は気が付いたら稜葵の所有するこの島に流れ着いていた。
「遺跡が崩壊して、そこに水が流れ込んで、渦潮が出来た······とか?」
「やはり、そう考えますよね······」
私と稜葵の意見は一致したようで、伊織も頷いている。
ガッシャーンと、突如大きな音が邸で鳴り響いた。そして、楓夏の寝室の扉がバタンと飛んだ。
「ほんと一体どうなってんの!」
扉の後ろから姿を現した楓夏は開口一番に、そう文句を言った。
その頭にアホ毛は生えておらず、昔からの荒々しい楓夏のおでましである。
「ねぇ綾ちゃーん、どうして私は君たちと海を渡ってまで海水浴に来たの?頭に霧がかかって分かんないんだけど?」
「楓夏ちゃんは、暇潰しに良いからと言って私からのお誘いをお受けになった筈ですが」
楓夏の質問に稜葵は頭上にハテナマークを浮かべながら答えた。
「うっ、まぁそんな事はいいの。そんな事より············、戸室綾という人物の形をした何かがどうして此処に来れたのか、という疑問と、昨日見せられたピンク髪。あれは、何?あなた、本当に戸室綾なの?」
「おい戸室、此奴は一体何を言っている?」
楓夏の確信をつく質問にたじろぐ私に、事情を知らない者を代表して伊織が更に質問を被せてくる。
だが今は、焦りを感じ取られてはいけない。冷静さを装いながら答えなくてはならない。
「あぁ、外に出られなく呪いの事ね?あれはイザナミ様が治してくれたんだよ。パパっとね。ピンク髪については、肉体操作の能力だよ。この能力のせいでよく勝手に髪色が変わるんだよね〜。ほら、普通の人でもストレスを感じると短時間でも白髪が増えまくるっていうしさ。呪いの有無とただ身体が少しおかしいってだけで別人扱いはちょっと酷いな〜楓夏」
「髪色は能力······というのは分かったから良いとして。あなた、イザナミ様に会ったの······?」
「うん、実は奇跡的になんと偶然的に会えちゃいました〜ってね」
「············帰る」
「え?何て?」
「帰るって言ったの。ヘリは自分で用意するからお構いなく」
楓夏は寝室に戻って、バッグを肩にぶら下げてリビングかもしれない何かに戻って来た。
「待ってください楓夏ちゃん。お土産にドラゴンフルーツを差し上げます」
稜葵はジジイに赤い果物を二つ持って来させ、それを楓夏に手渡した。
「ふん、ありがとう」
楓夏は少し嬉しそうに受け取った。
「待って楓夏!私からもお土産にこのダイヤ剣をあげよう」
「··················」
楓夏は目を点にしてダイヤ剣を受け取った。
楓夏は目を点にしてダイヤ剣を眺めながら外に出た。
楓夏は目を点にしたまま御手洗家のヘリコプターに乗り込んだ。
楓夏の目が点になったままヘリコプターは地平線の彼方へ飛んでいった。
「何か言えよッッッ!!」
「じゃあ、愚かな姉に代わり僕がお礼を言おう」
背後からの声に驚き、振り返ると、アホ毛の無い御手洗弟こと御手洗黒がそこに立っていた。




