第67話 海水浴:深海5
『あの虫はお前の血に反応して洞窟に来た可能性が高い。ならば────』
ならば、血液を作り、全身でそれを被る!
そして稜葵と伊織から離脱し、囮開始だ。
虫は揃いも揃ってコチラに釘付け。お次は死に釘付けにしてあげよう。
ボス虫の大きさは立派な一軒家2つほどだ。竜王よりも大きい。だが、脊椎動物ではなく無脊椎動物かの違いだ。といえど気持ち悪い事山の如しだが。
ガサゴソと天井や壁、床からどこからともなくヘンテコ虫が現れ、飛びかかってくる。
神道術の能力フィールドをフル展開。半径十五米、高さにして建物5階から6階に相当する。
「いつの間にこんなに伸びて······でも、やってやろうじゃん!」
十米飛び上がり、飛来する虫共を迎え撃つ。
正面、斜め右上、斜め正面左から虫が飛来してくる。
紡ぐはダイヤ剣、2本、左右の虫に上書き作成!
ブチュリ、と2匹の虫が身体の一部をダイヤに置換されて飛沫を上げる。そのまま2本の柄を掴み、正面から来る虫をX字に切り裂く。切れ味上等。
足元に魔素の足場を練だし、二段ジャンプをきめる。二人の様子を一瞥してみると、増え続ける虫から逃げ惑っていた。やはり、数というものは恐ろしいものだ。ならば、逆に言えばその頭を叩いてしまえば一気にクリアしてしまえる。
横に足場を練だし、重力で体軸を横に曲げ、ボス虫の死角へ飛び回り込む。さらにボス虫方向へ足場を出し、体軸を曲げ、ボス虫へ飛び込む。身体を横に回転させ、氷魔術を練る。
「アイスダイヤ!!」
2本の刃が瞬間冷凍されたボス虫の尻の体表を砕き切る。
『ギィイイイインァァァァ!!』
ボス虫は悲鳴を上げ、それと同時に複数の触手が唸りを上げて暴れ始める。
その内の一本が反動中の私にラリアットをぶち当て、上空へ体を吹っ飛ばす。
「けほっ、はぁはぁ······」
魔素の足場に着地し、ダメージ回復をしながらボス虫の動向を見てみる。と、砕いた筈の尻部位が再生されていた。
ボス虫は怒ったのか、コチラを睨み、触手を総出で飛ばしてくる。
そちらが本気ならば、こちらもそれに応えなければならない。よって────
「通ずるは、無の調べ。」
両手の剣を手放し、触手第一陣を中空横ジャンプで回避する。
「今此処に顕在するは有の調べ。」
再び中空ジャンプでボス虫への接近を試みる。後方と左右上下正面より触手が迫り来る。
「遙かなる時を超え存在せし始まりの粒よ」
フィールドに入った正面の触手を、ダイヤの上書き作成で千切り去る。
「我が逝く道は風の果てに在り」
後方の触手を硝酸爆弾で蹴散らす。ギリギリまで迫った左右の触手を中空横回転捻り飛びで躱し、そこにダイヤ剣を打ち込み、杭を入れる。
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伊織は、稜葵をお姫様抱っこしながら2米もある虫の軍団から逃げ惑っていた。
「くそう!多すぎてキリが無い!」
「頑張ってください伊織!ここが正念場です!」
単一個体が幾ら強かろうと、圧倒的な数を前にしたら、軍隊アリに睨まれたアナコンダの如く無力となる。
「ねぇ伊織、綾ちゃんが何か言っているのですが、聞こえませんか?」
「ん?風の果てに在り······だと?何考えてんだアイツ!風之王だ!早く逃げねぇと!!」
そう言うと同時に、伊織の火事場の馬鹿力が発動する。強化系の特殊能力の倍率と掛け合わさり、小虫を無理矢理蹴り飛ばして、出口へ飛び込む。
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「オディエルナメンテ!」
飛躍軌道がズレて地へ小虫を潰しながら着地する。足元には魔法陣が展開され、紫色の光を放ち始める。
ボス虫へと向け、駆け出す。脚を狙って飛んでくる細い触手を跳び躱し、フィールド内の触手全てをダイヤ上書き作成で裁ち切る。
「追い風となりて扉をこじ開けよ!」
ボス虫の顔面を目掛けて飛び上がり、両手を前へ突き出す。
そして、最後の詠唱を口にする。
「アーリア・エンペラトーレ!!!」
四大元素魔法の一角、風の究極魔法が発動する。その性質は圧縮空気。
然し、オーディーンに放った簡易模倣版とは訳が違う。
主な本家バージョンとの違いは、反動の無さと威力の上昇にある。
魔法とは、世界の魔素に自己の魔素で干渉し、規程の法則を捻じ曲げるというものだ。
つまり、法則を捻じ曲げ、普通の模倣とは一線を画した破壊を生み出す。
それは、対となる科学に引けを取らない超破壊だ。
破壊の神風は、ボス虫諸共、大広場の半分を消し飛ばし尚止まない。
「うわっ嘘っ!魔力空っぽじゃん!どうなってんの!」
魔法陣から離れ、伊織の方へ逃げる途中にそれに気づく。
「当たり前だ!魔術とは桁が違うに決まってるだろ!」
と、伊織は青筋立てて怒る。
「お前のせいで遺跡が崩壊し始めちまった、とにかく走るぞ!」
天井や床からゴゴゴと効果音が飛び交ってくる。
「えぇ!ホントだヤバいヤバい!!」
走る伊織の背中を追いかける。
ついでなので、神道術で3人ともに加速をかける。
「ああ、助かる。······さて、生きて帰れるかどうか······」
「綾ちゃん、生きて帰ったら覚悟してくださいね?」
「ひっ!態とじゃないんです!違うんですー!!」
多少話す余裕が出来たのは私のお陰でもあるが。
横一列で通路を走る中、突然正面の足場が隆起し、揃ってズッコケる。
起き上がろうとするが、天井から降ってきたであろう岩石が後頭部にヒットし············気を失う。
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「まさかこんな世界があっただなんて······まったく、メタトロンは侮れません。それにしても、このスケール······もしや······アドナイ様の代わりにでも······?い、いやいや、ないない。それは流石に罰当たりにも程がある。」
コツン。
「······ん?これは、戸室綾?何故に生きて?それに、社長の娘とその執事ですか······はぁ、察しました。そうですね、この前はつい殺ってしまいましたし、つい助けてしまっても可笑しくはないですよね。」
空へ呟く。
「そうですよね、アドナイ様。························やはり、届きませんか」
空虚な声だけが、むなしく響いた。
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ザザーッ!ザザーッ!
「ううっ······海······?ここは······?」
目が覚めると、ビーチの波打ち際でうつ伏せになっていた。
辺りを見回してみると、大きな建物に、謎のキャンプファイヤー、同じくうつ伏せになっている伊織と稜葵の隣でうつ伏せになっている黒マッチョ、上半身が砂浜に突き刺さっている老人。
空は暗くなっており、イアゼウスパスを見遣ると、時刻は十九時半を示していた。
「あ、あれっ?相対性理論ってやつ······?」
────エンド
たぶん四月まで今度こそ本当に投稿率げきおちくんします、申し訳ございませぬ




