第61話 海水浴5
キャラは崩壊させられる物(哲学)
「さー泳ぎますよー!」と水着······ではなく宇宙服を着た稜葵が登場。
「えっと、それは······」
「シュノーケリングです」
「ええっと、何をするって?」
「フリーダイブです」
「生活様式は?」
「モダンです」
「今着てるお洋服は?」
「宇宙服です」
「やっぱ宇宙服じゃん!どこから拾ってきたよ!1着数億じゃん!」
「種子島から······ですけど?」
「あ、盗んだ系?あーはいはい分かりました。私は何も関与しません。ちなみに、右手に持ってるのは?」
「銛です」
「三股槍ではなく?」
「銛ちゃんELⅢです。これでメガロドンを捕らえてきます」
稜葵は背中からロープの様な物を垂らしながら珊瑚の海へ歩み沈んでゆく。
「グッドラック!」
「アイルビーバック!」
「あっ死んだな」
楓夏は浮き輪でプカプカしながらマヨネーズを海に垂らし、レイは私から剥ぎ取った水着を被ってキャンプファイヤーやら何かしら怪しい儀式をしている。マッチョ集団は沖で浮いている。
では私は何をしようか。波際でネットサーフィンでもしていようか。
『エビの尻尾はゴキブリ』
うぇっ、知らない方が良かった。
『安いお店のエビには背腸が付いているが、これはエビの糞である』
······エビ嫌いになりそう。
『反動エネルギーは何故発生するか』
おお、これは面白そうだ。どれどれ?
『反動エネルギーとは、慣性世界における元の位置に留まろうとするエネルギーのようなものだ。譬えば、電車Aが西に走っているとする。その時、反動エネルギーは東に向かって伸びている、ということになる。目に見えないほどその影響は小さいが、全てのベクトルエネルギーには必ず反対のベクトルエネルギーが微小なりとも存在する。これは、空間固定────』
ふむふむ。方向エネルギーは常に反対のエネルギーを抱えていると······。
あ、閃いちゃった。その反動エネルギーやらなんやらを倍増させれば擬似ベクトル操作が出来るやもしれない。
それにここは太平洋だ。波エネルギーが山ほどある、練習にもってこいの場所だ。若しかするとこれは天啓的な何かかもしれない。
ザザー。ザザー。
波って······やはり練習には不向きかもしれない。電車がある一定の方向へ真っ直ぐ進むだけならばまだしも、波は不特定無数の方向へ進んでいる。一々全ての方向を計算するのは頭が痛い。
ん?全ての方向······?そうだ!大雑把に一定の方向のエネルギーだけが倍増できるようにすればいいんだ!
右ならば右だけのエネルギー。左だけなら左エネルギー。そもそも反動エネルギーだけでなくとも、電子や原子分子は元々不特定無数方向にエネルギーが存在する。
はいこれで解決解決ハヴソルヴド。
「そいやっ!」
一直線に海が割れる。そして、そこを歩く。
「一発芸、生けるモーセ」
光を倍増させて光る。楓夏とレイを見遣るが全く気付いていない。悲しい。
稜葵は今頃深海にいるだろうし見れる筈もない。
「おい若僧どもー!」
突如として背後から声が聞こえる。振り返ると、正蔵が伊織に肩車してもらいながら手を振ってくる。
「若僧若僧って、私の方がアンタより歳上だから」
「は?モルヒネ飲んでんじゃねお前?」
「すっこんでろジジィ!」
「べぶばっ!」
伊織が正蔵を砂浜に突き刺す。そして、上半身が砂浜に埋まった正蔵の股を伊織がグリグリと踏み躙る。
「おい小娘、稜葵は何か言ってたか?」
「たぶん深海に行くやらなんやら?宇宙服で。確か、ロープっぽいのが屋内に繋がって······あ」
ロープが途中でブッチンされて海側のロープが透明。
「あの、伊織さん。何か事件でも······?」
「稜葵から救難信号だ。ことは一刻を争う」




