第54話 インビジブルオブデス15
突如として視界が複数に割れる。
「インビジブルオブデス······死というものは常に見えざる場所にあるものです。」
クソ天使が何やら呟いている。
「ほんと興醒めです。神級の力を手に入れたと聞いてましたが······この程度の剣速を認識さえ出来ないなんて。やはり人の子に其れは宝の持ち腐れってもんですね────」
それを聞き届け、私の意識は途絶える。
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「なるほど〜。それで旦那さんを殺したいと」
「まぁ、端的に言うとそんなものじゃな。尤も、アマテラスは望んでおらんようじゃが」
「分かりますよ〜。私も傑作を壊されたら流石に怒っちゃうもん」
「それは、ちょっと違わんか?」
だんだんと意識は覚醒してゆき、瞼を開ける。視界に広がったのは黒髪、金髪、青髪の女性陣。白い空間にデザインの凝ったテーブルとペアのイスが置かれてある。
「イザナミ様。綾、目が覚めた」と青髪の桃が私の前へ寄ってくる。
「わ〜、本当に生き返ったんだね〜。っていうか黒髪に戻したって聞いてたけど、やっぱりピンクの方が好きだった?」
アホ神が私の頭を見て、そう言う。
鏡で見てみると、髪がピンクに戻っていた。後で直しておこう。
「てか······あれ?私ってクソ天使と決闘してたんじゃ······?」
「アレが決闘?聞いて呆れるわ。一方的な虐殺じゃろうよアレは」と、イザナミ様が私の疑問に答える。
「虐殺?なら、つまり私はまた死んだってことになるけど」
「加護じゃ加護。お前さんは儂の加護のおかげで、死んでもここで自動蘇生できるのじゃよ」
「加護······ってなんですか」
「そこからか······。加護というのは、高レベルの力を持つ者1人につき1人にだけ付けられる付与能力のようなものじゃな。」
「やっぱり神様って凄いんですね······」
「何言っておるか。おヌシも誰かしらに加護付けられるぞ」
「え?基準って意外と低い的な?」
「そうでもない。準神級でようやく可能になるものじゃよ。ちなみに、メタトロンに至っては土地そのものに加護結界をかけている程じゃ」
「ああ、そうだよ!どうしてイザナミ様とアホ神が一緒にいんのさ!元住民を取り返しに来た的ななにか!?ならゴメンだね!アンタの思い通りになんてさせないから!何思ってんのか知らないけど」
「私は宇宙を思ってるよ〜」
「なら勝手に宇宙行っちゃってどうぞ」
「綾よ、そうカッカするでない。こやつは前から交流があるから安心せい。むしろ友好的じゃよ」
「友好的······?いつから?」
「おヌシが飛ばされた後。つまり七年前ってことじゃな。」
「つまりイザナミ様はコイツとグルだったと?」
「なんでもない普通の関係じゃぞ?土地神が人格を持っておったらコンタクトを取らずにはおれまい」
「はぁ。本当に土地神なんだねー、未だ信じらんない」
「ヌシも分かっておる筈じゃろうが、こやつは出雲全域に加護結界を張っておる。それで儂へ攻撃してくる愚か者諸共結界内の者の思考力を落としておるんじゃ。ここまでで既に土地神としての役割は大きく果たしておるじゃろう?」
「うんうん、私って凄いんだよ。えっへん!」
「うーん、えっへん!なんて言われたら凄味もなんも掻き消えてしまう気が。凍てつく波動ってやつ?」
「萌えつく波動の間違いでしょ〜?」
「あ、そうだ。アリスって今何してるか分かる?姉としてちょっと心配なんだけど。ってかオデンはどうなったの」
「オーディーンは逃げてったかな〜。世界に大きく干渉すると思うけど私には関係ないし別にいいよね〜。佳代アリスは今は新四天王や魔王と戦ってるね〜。もしかしたら綾氏を超えちゃうかもよ〜?あの子ってば思った以上に魔法の素質あるらしいからさ」
「へぇー。それが私の妹なんだからちょっと鼻が高いってもんだね。双子だから尚更」
「そういえば綾氏、レイとはもう接触した?」
「ん?え?レイ?うん、あの子ね。接触もなにも転校生してきて私にベッタベタ······って、どうしてアンタがそれ知ってんの」
「さぁ〜どうしてだろうね?あ、そろそろ時間だよ!綾氏強制退出〜!」
「うむ、それが良かろう。強制退出じゃな」
「強制退出って、私何か悪いことした!?」
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カァー。カァー。
カラスの鳴き声が聴こえる。確かにそろそろ空も暗くなる頃だし早めに退出して良かったかもしれない。
そもそもイザナミ様の祠から私の家まで滅茶苦茶距離があるので帰るのはとても面倒臭い。
ではどうしようか。風魔法で飛んで帰るか、戸室家のデカい屋敷で一晩明かして学校を休むか。
やはり楽を選んで後者にしよう。埃とか積もってそうだが浄化魔法でも浄化魔術でも使えばいいだろう。風魔法よりも魔力消費は低燃費だろうし。
そうと決まれば、とりあえず神道術でイアゼウスパスを復元、データも復元。服は白装束からお気に入りの私服へ早着替え。髪は黒髪ポンパドールにし、黄色の髪飾りで留める。
そして、ついでに瀬戸内海でも見に行くことにする。ここから意外と近いのだ。
加速歩行で進んでゆくとあっという間に開けた場所に出る。
強い横風が服と髪を揺らす。目の前に広がるのは断崖絶壁と、地平線を赤く照らす太陽。
瀬戸内海というのは名ばかりで、今やただの湾みたいなものだ。つまり、四国の無い今となってはほぼほぼ太平洋と同じ。
四国も天使や悪魔といったアクスム軍によって東日本と共に滅ぼされた、と聞いているが、大天使長ミカエルの話を聞く限り彼女達は滅ぼした訳ではなく、むしろ滅ぼされた側らしい。まったく何がどうなっているのやら。
四国のみならず広島に岡山、神戸も消し飛び、山口等の他県も尋常でない被害を出している。これを、オカルト界ではベブンズフォールと呼ばれているらしいが、謎は常々大きい。
やれ龍脈の暴走やら、やれ極大魔法の暴走やら、やれ旧史の宇宙生物の攻撃やら。もし宇宙生物だったならば未だ真性科学に行き着いていないこの地球なんぞ直ぐに太陽系の塵にされているだろう。
ピロリン
ふと稜葵からメッセージが届く。
開封してみると、
『明日から1週間ほど休校らしいですよ。これを機に海水浴でも如何でしょう?』
とのこと。
あー、ベルゼってば1週間仕事が無くなるのか。可哀想に。
それにしても海水浴か。七年前にあった夏休みなどほぼほぼ覚えてなんていないが、なるほど確かに海水浴した記憶は無い。ならば行くしかあるまい。
『もちコース行く行くー!あ、でも明日は保安局行かないとダメだから明後日でいーい?』送信。
ついでだし、瀬戸内海を背景にした自撮りでも送っておこう。
パシャリ
うむ、我ながら美しい。っていうか顔を日本人に戻してなかったし。······うーん綺麗だから別にいっか。
それにしても本当絶景を背景にして自撮りするのってかなり流行ってるなー、と思い、サーフィンしていると。『皇帝イヴとエンカなう』というネタを見つける。写真には泥まみれの白人女性に、小綺麗な半分緑半分白髪の美人が写っていた。
うあー可愛らしい。この子と結婚したい······いや待て!生涯独身を貫くって心に決めてるのに、何が結婚だよ!あ、分かった。皇帝イヴは真性科学のチャーム能力が備わっているって聞いたことがある。だったらあの反応は正常なものなのだ。私はどこもおかしくは無い。
さーて、そろそろ古臭い屋敷に向かおう。御手洗のオバサンに見つかったら怠いし、抜き足差し足だけれども。




