第53話 インビジブルオブデス14
「片桐······さんで合ってるよね······?」
特殊能力者は基本的に後天性が多い。別に先天性が少ないという訳では無いが、こちらは産まれてから間もなくして大阪の研究施設へ送られる。よって、見かける事の出来る特殊能力者は後天性の者ばかりなのだ。
そして、後天性は強い願望によって発症する場合が殆ど。このクラスで可能性がある子は、まさに今虐めを受けていた片桐だ。
「近付かないで!!!」
ようやく返答がきた。
「大丈夫だよ。落ち着いて!」
ゆっくりと、片桐へ足を進める。近づくごとに斬撃の数は増してゆくので、下手に動けば私までトマトソテーになってしまう。グチャリグチャリとトマトケチャップ足場の快音が響く。
ようやくの事で片桐の目の前へ辿り着く。と、斬撃の嵐がやんだ。
片桐の肩に手をやり、
「もう、終わった。終わってしまったんだよ。だからもう、苦しまなくてもいいんだよ」
「ううっ······ううう············」
微かな呻き声と共に、片桐は気を失う。
握られていた拳の中には、真っ二つに破れた、私の身に付けているのと瓜二つの髪飾りが、血塗られていた。
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「戸室さん······事件を解決してくれたのは私としても皆としても嬉しいけど······思春期の子供たちの前へ全身モザイクで出てくるのはどうかと思うな······」
「モザイク?あー、トマトのこと?」
「服着ろってことよ!!!」
「えっ」と身体を見てみるとアハーン体験している。
慌てて瞬着するが、時既にお寿司。ガキの顔面真っ赤っかである。女子陣も両手で真っ赤を隠しつつチラチラ指の隙間から覗いていた。うちの学校は薔薇よりも百合の方が多いのだろうか。
まぁ、それらの点は気にすることもない。真っ裸はモザイク処理だし、薔薇百合は数が比例しているものなのだ。
「それで、犯人は何だったの?」
「常識的に考えて片桐さんに決まってるでしょ」
「いや、そんなの分かるわけないでしょ。生存者はどうなの?」
「片桐さんしか居ないに決まってるでしょ。2組もほぼ全滅。息がある奴はヒールかけといたから安心していいよ」
「はぁー、片桐さん生きてたのね。よかったー」
「姫路さんの倫理観も壊れててよかったー」
「ん?何か言った?」
「幻聴かと思います。それにしても、こんだけの殲滅系能力······これは軍送り確定かな」
今日私のモザイクを見た男共も軍送りにならないかな。
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「被害者は生徒68名、教員4名、計72名。内、13名生存。犯人は生徒の片桐永莉ただ一人。特殊能力の突発的発症による事故と思われます」
保安官は常駐警備員が駆け付けてから三十分後に到着した。なんとか道を間違えたのだとかなんとか。血腥い事が起きても安定のアホ化現象。イアゼウスパスがあれば方向音痴でも道間違えないっての。
「そして、重要参考人として姫路菊と戸室綾の2名です」
「え?重要参考人?」
「いや、なに、ただの事情聴取として署に同行してもらいたいってだけだよ。悪いようにはしない」
「ねぇ戸室さん。」
「なぁに姫路さん。」
「今回で保安局行くのって何回目?」
「色々含めると六回目くらいなんじゃないかな」
「そんなに行ってて楽しいの?」
「べっつに?退屈って感じかな」
そう言ってると、教室の端っこに残っているトマトの果肉を見つける。よく見てみると汚れが付いていない。
「ほいっと」と果肉を広い上げて一口。
「ふむ、美味なりや」
「ちょっ、戸室さん何食べてるの!」
「ん?姫路さんも食べてみる?」
「超遠慮するわ······」
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プァーンガッシャーン!
「ねぇ、今外でなんか事故音聴こえたんだけど」
「大丈夫だよ、そんな事よりこっちの方が大変なんだから」
「あー、そうなの」
ブヴァーン!!ドガラドギョーン!!!チュンッバギュオーン!!!!
「事情聴取ひてる暇じゃないよねコレ」
「そ、そうだな······。また明日来てくれると助かるよ······」
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保安局の玄関を出て目の前の超交通事故を眺めていると、ツインテが背後から現れる。
「あ、姫路さんも強制終了?」
「いやいや、私は戸室さんよりも言うことが少なかったから普通に終わっただけよ」
「暴走してる片桐さんを鎮めた以外は姫路さんと何も変わらないと思うんだけどなー」
「嘘おっしゃい。色々やらかしてるでしょ貴女」
「あー私記憶力弱いから忘れちゃったなー」
「ほんと駄目ね······。2週間後に体育祭、そこらから1週間後に中間テストよ?ちゃんと勉強してる?」
「ふふん、甘い読みだね!今既に赤点補充確定してるよ!」
「もっと駄目駄目じゃないの!······平井さんの成績って学年トップクラスなんだから教えて貰えばいいのに」
「端から学ぶ気の無い人には何をどのように学ばせても意味がないんだよー」
「ぐっ、地味な正論を······。だったら勉強会でも塾でも何でもすればいいわ。」
「ふーん、勉強会かー。こんど開こっかな」
グオーンドギャシャーン!!
「ひぇっ······また玉突いてる」
「は、早めに去った方が良さそうね······。私は右だけど戸室さんは?」
「私は左。そんじゃアディオス!」
「オルボワール!」
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学校の前へ立ち寄ってみると、路地裏にベルゼの影が見えた。
背後から近寄り、
「ベールゼ!」と肩を叩く。
「ひうっ!······って驚かすな戸室!」
「むむ?戸室綾ではないですか。如何してこの様な所へ?」と、聞き慣れた空っぽの声が路地の奥から聞こえる。
「え?クソ天使こそ如何してこんなところに?」
「如何してと問われましても、軽く談話しに来ただけですよ。そこのクソ蠅と」
「あんら?何か軽く怒ってらっしゃる?まぁいいか。丁度よく2人居ることだし、質問していい?」
「あ?あー、昨日のやつか。別にいいぞ。今すっっっっごく暇だし」
「それなら遠慮なくー。クソ天使とベルゼ、2人の関係性ってなんなの?」
「関係性と問われましても、元同僚って感じですかね?」
「まー、元同僚だな。今だと同僚ってより同類って感じだがな」
「同僚って、つまり日本破壊同僚ってこと?」
「まったく違いますね。ほんと色々違います。まず、あの頃このクソ蠅はソロモンリングの影響下にはいませんでした。次に、あの戦争は日本破壊が目的なのではなく、剣山の"契約の柩"を全力で持ち帰れとソロモンに命令されたが故の結果的戦争です。最後に、日本の半分を消失させたのは私達ではありません」
「そういえば、昔同じこと言ってたね」
「私達アクスム軍の敗因は何だと思ってますか?」
「主に富士山爆破による自滅······なんじゃないの?」
「有り得ません。あの時は参謀にラファエルがいました。今どこにいるかは分からない子ですが、叡智の熾天使が進軍を握っている限り、自滅なんて絶対に起こりうる筈がない。」
「なら、何が敗因だっていうのよ。」
「穹です」
「穹?」
「穹から、私やメタトロンの身体を殆ど消し飛ばす······光が降ってきました」
「ええっと······つまり宇宙人が攻撃してきたーって感じでOK?」
「まぁ、そう捉えてもらってもいいでしょう。オマケにもう一つ、その時奇妙な事がありましてね?北から攻め入った時なんですが、何故か住民の皆さん、やけに私たちに協力的だったんですよ」
「あー、東日本と西日本の対立でしょ?旧史だと首都が東京だったから、いつまでも大阪に首都を構えるのはナンセンスだぜーって習った習った」
「へぇー、ミカエルの姉貴にそんな過去があったなんてなー」
「過去ったって、まだ100年も経ってないからね?」
「おいおい戸室ってばそれじゃあミカエルがクソ歳いった奴みたいじゃんか、まぁ実際にクソババアなんだけどな」
「やっぱり、細切れにされたいの······?」
クソ天使が剣の柄に手をかける。
「落ち着け落ち着け!だから剣で揉める程の事でもないだろってマジで。どうせ斬るなら俺は戸室を推薦するぜ」
「ん?おー、いいよクソ天使。私が受けて立とうじゃない。」
ダイヤモンドの剣を作り出して両手で握る。
「前からアンタのこと、なーんかウザかったんだよねー」
「へー、同じ事を考えていただなんて意外ですね。お手柔らかに頼みますよ?」
「俺は逃げよっと······」
来年から本気出す理由→来年から開運期だから




